ウィリアム ゴールディングのレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ネタバレ子供の情念と性悪説
楽園のように食料に困らず外敵もいない無人島に子供だけが不時着する。最初は集会を定期的に開き家を作り火を炊き豚をかっていた。しかし小さな子から中くらいの子へと伝わり話が肥大化している"獣"の存在がみんなの恐怖心を煽る。ジャックとラルフはどちらが隊長になれるか競争している。その一環で、獣の正体を突き止めて群衆に勇気を見せつけようとする。
夜闇の中冒険に出たせいで、人間の死体が正体であるのに気が付かず、化け物だと思い込んでしまう。
そこでラルフが「獣の前では狩猟隊は槍を持った子供だ」というと、ジャックが決定的に腹を立てて決別してしまう。
ここから狩猟隊VS文明人の構図が出来上がる。
皆、踊りや狩りや上下関係による権威の乱用など情念的な楽しさにノコノコつられていき、文明人側はサイモンピギーエリックサティちびっ子だけになってしまった。それでも各々別の生活をしていたが、ある日宴会に文明人がつられていき、肉の施しを受け、踊りに参加してしまう。その興奮状態の時サイモンが暗闇の中飛び出してくる。獣と勘違いされて殴り殺されてしまった。次にピギーのメガネが盗まれる。取り返しに行くも、顔に野蛮人の化粧をして集団という記号の中に自我を沈めている皆は群衆と成り果ててしまい、ピギーの奪ったことの不当性を訴える声は届かない。あまつの果てにはピギーは明確に殺される。
ラルフが対話を試みようとその晩野蛮人サイドについたエリックサティに話しかけると、次の日ラルフ狩りが始まることがわかった。それでも草の中に隠れて眠る。あとは焼け払われた森から死に物狂いで逃げ続け、隠れ続け、刺し続けた結果海に出ると海軍の大人が助けてくれておしまい。
最初は自由に浮かれて無邪気に逆立ちをしていたラルフが後半になるにつれてに文化人としての責任を感じ相対的に大人になっていくのが不気味だった。
サイモンについてはよく分からない使われ方をしたな、と思ったら、あとがきの解説によると聖書関連なのか。
自分だったらもっと上手くやれるのにと思いながら見ていたが、それは大人の視点でだった。小学六年生の頃だったら絶対に自分はジャック側に操作されていただろうな。
群集心理や匿名性が引き出す人間の暴力的な面、人間に備わったタナトスやパトスを含んだエロス。考える余地が多くて世界に無理やり没入させられた。数日間は頭を悩まされそう。 -
Posted by ブクログ
「『蝿の王』のようだった」というレビューを何度か見たことがあって、『蝿の王』のような感じってどんなの?とわからず(@_@;)
気になって小説を読んでみたくなった。
少年たちを乗せた飛行機が無人島に不時着した。少年たちはリーダーを決め、大人のいない島での暮らしは、当初は気ままで楽しく感じられたが…。
作者のゴールディングのコメント。
「大事なことはただひとつ、まずは物事の中に入って、そこで動きまわるという体験をすることだ。そのあとで、自分の好きな解釈、正しいと思う解釈をすればいい。」
私も物語に入り込んで少年たちと一緒になってすごい体験をしてしまった…。
服も髪も顔もボロボロになり、森や山を走り回り、どっちのリーダーについていくか考えたり、どうしたらこの辛い状況を解決できるか悩んだし、悲しんだり…。
こういう生々しい体験ができるから読書ってやっぱり大切だし素晴らしい、と思わせてくれる本だった。
ゴールディングの言うように、それぞれ読む人によって解釈は違うと思う。
私は純粋でわかりやすい「子ども」で例えた、ユートピアからディストピアへの寓話として読んだ。
『動物農場』と違うのは、理性を失った時の人間の本質が描かれているところ。
はじめは選挙でリーダーを選び、ラルフがそれぞれの役割を決めてうまくいっていた。
次第に力の強いジャックが権力を握っていき、独裁者へと変わっていく。
暴力的な支配者に洗脳され、集団は怖ろしい方向へ流されていく。
当たり前のことが伝わらない恐怖、集団心理の恐ろしさ、人間が誰でも持っている暴力性。
「この少年たちは人間であるという怖ろしい病気にかかっている」ともゴールディングはコメントしている。
誰もが持っている人間の本質って。。。
読んだ後もずっと考えてしまう。
こういう考えさせられる本が大好きだ。
★10 -
Posted by ブクログ
ネタバレ無人島という環境におけるサヴァイヴァル譚ではあるが、衣食住の確保や健康の維持といったテクニカルな部分は気持ち良いぐらい無視され、そこで暮らす少年たちが織り成す人間模様、関係性の移ろいに焦点のすべてを当てた物語となっている。
何かが起こりそうな不穏な予感を常にはらみつつ、辛うじて均衡を保ちながら日々は過ぎて往くが、徐々に高まる緊迫感がついに決壊の時に差し掛かる…古典の名作たるにふさわしい、かくも見事な悲劇的シークエンスが展開される。
“寓話性が高い”という訳者による解説が巻末にあったが、何某かの構造を見立ててそのように読むこともできるし、字義通り人間の原罪的な残酷さを子供たちを演者にして語らせていると解釈する向きもあるだろう。
結末の受け止め方すら一様でなく、この締め括りはポジティヴなのかネガティヴなのか? いずれにせよ、壊れたものはもう元通りには戻らない、ということだけは恐ろしいほどに理解できる、そんなラストシーン。 -
Posted by ブクログ
アメリカ教科書において『ごんぎつね』的定番教材ポジションと聞いて読み始めました。子供が凄惨な目にあうので、苦手な人は注意!
・これで…何を学べと!?
・海外文学故か、よく理解できない描写が頻出した
・年下の子達の存在がぞんざいになっていくのが驚き
・子ども特有の楽観性や考えのブレが良い
・後半の息つく暇もないスピード感、緊迫感が凄まじい
主人公は喜んだり昂ぶったりすると逆立ちしたり前転したり殴る真似したりする変な癖があるんだけど、後半は特にやらなくなった。子どもらしさを失ったというコトなのかな…?
最初は幼い子達の人数や名前を把握しようとするも、中盤は「おチビたち」とひとまとめに、後半はほぼ気にもしてない様子が衝撃だった。大体、こういうのって物語に絡まなくとも庇護対象としてそれなりに優遇されると思っていたので…。
お話としては…陰鬱な気持ちになるものの、サスペンス的な強烈な楽しさがあると思います!
【よく理解できなかった表現の引用】
“いちばん高いところに発育の悪い椰子の木が何本かしがみついている珊瑚礁が、空中に浮きあがり、震え、ひき裂かれ、電線をつたう雨粒のようになり、並んだふぞろいな鏡の破片に映った像のようになった。”
無人島の海の描写。波が高くてサンゴ礁が見えたり沈んだりする様を表現しているのだろうか…?海外の南国をよく知らないから分からないだけの可能性もある。
【感動した表現の引用】
“ピンク色の唇がひらいている部分”
ほら貝の音が出る部分の描写。簡潔で細かい造形が伝わる、確かに!と思う表現。子どもらしさも伝わって良いっ
“午後の太陽が目に見えない矢をびゅんびゅん射おろしてきた。”
陽射しの描写。容赦無い熱と光が襲ってくる感覚をこうも分かりやすく書けるのか…と感嘆しました -
Posted by ブクログ
無人島に不時着した少年たちが、始めはそこでの開放的かつ楽園的な生活を楽しむが、次第に理性を失っていき、平和な暮らしが崩壊していくという物語。本書の最も興味深い点はやはり、子供の内なる悪が徐々に現れてくる中でのリアルな人間描写にある。少年たちは最初こそ文明的な生活を営もうとするが、与えられた仕事の不履行や、のろしグループと狩りグループの間の意見の相違により、島内に分断と対立が生まれる。未熟な子供たちによる無人島での社会運営の、残酷ながらも現実味のある表現に加え、ガキ大将的なジャックやいじめられっ子的なピギーをはじめとした、現実世界にいそうな登場人物の造形は、読者に深い納得と共感を与えるように思われた。