大山定一のレビュー一覧

  • マルテの手記
    断片的感想、備忘ノート、散文詩の一節、過去の追憶、目にした風景の描写、日記、手紙などを一冊にまとめあげた手記体の小説。風景描写、あらゆる想念、思考、追憶など、とても緻密で密度が高く、一寸の隙もない。だけれども文章はもたつくことなく、迸るような勢い、速さがある。そして時にはゆっくりと、緩慢になる瞬間も...続きを読む
  • マルテの手記
    久々に主だった筋のない、断片を繋ぎ合わせたタイプの小説を読んだ。そうして思うのは、私はこういったタイプの小説に非常に安堵感を覚えるということだ。人生は物語ではない。断片を継ぎはぎしたものである。そう言った方が私の実感と合っているし、結局のところなまの人生をより広く肯定しているように感じられる。

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  • マルテの手記
    果たしてこれを物語としてよいものか。
    なんて孤独で乾いているのか。まるでランボーが書きえないものを書こうとして時空から立ち上がり、筆を折ったみたい。きっとこれを書き上げたリルケも筆を持てなかったに違いない。
    ゲーテは理解されないのを知ってことばを選んで紡いだ。だが、彼は理解されないのを知りつつも、あ...続きを読む
  • マルテの手記
    事件は起きない。あらすじも伏線もない。パリに来たデンマーク人というフィクショナルな設定があるだけ(リルケはドイツ人)。
    そのマルテが、自由な形式で、パリで見る景色を語ったり、かと思うと過去を語る。詩や音楽を語り、そんな連関性のない話を重ねていくが、読者はそれにつれて自分の心の奥底を覗き込むように誘わ...続きを読む
  • マルテの手記
    中学生の頃のピアノの楽譜入れだった母の手作りのお洒落な鞄がひょっこり出てきて、中を開けるとこの本がひっそりと息づいていました。

    『マルテ・ラウリス・ブリッゲの手記』の作者は、134年前の1875年12月4日にオーストリアのプラハに生まれた詩人で小説家のライナー・マリア・リルケ、スイスに移り住み薔薇...続きを読む
  • マルテの手記
    リルケ自身がこの小説について語った言葉の一部を掲載させていただきます。

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    ぼくは『マルテの手記』という小説を
    凹型の鋳型か写真のネガティブだと考えている。
    悲しみや絶望や痛ましい想念などがここでは一つ一つ
    深い窪みや条線をなしているのだ。しかし、もしこの鋳型から
    ほんとうの作品...続きを読む
  • マルテの手記
     ” 彼らはいずれも自分だけの「死」を待っていた。(中略)子供たちも、いとけない幼な子すら、ありあわせの「子供の死」を死んだのではなかった。心を必死に張りつめて────すでに成長してきた自分とこれから成長するはずだった自分を合わせたような幽邃な死をとげたのだ。”(p23)

     私はふと、東日本大震...続きを読む
  • マルテの手記
    孤独・死についての青年詩人の独白のような小説。
    哀しくて陰気だけど何故だかとても優しい。
    孤独に生きる人間達への愛に満ちている。
    ベン・シャーンの描いた挿絵も併せてお勧めです。
  • マルテの手記
    マルテの手記が好きって人は、ちょっとヤバい。
    何故なら、孤独者の視点が身に浸みてしまうから。
    悲しみや苦しみ、そして孤独や不安、影や暗闇、そういったものたちに美しさや豊かさを見出してしまうから。
    だけどもリルケが好きって人はそれでいいんです。
    少しずつ読んで、隣にマルテがいるような感覚を覚えるまで、...続きを読む
  • マルテの手記
    パリで詩人を目指す青年の日記体で描かれた話。リルケ自身、パリで孤独な時間をおくっている時期があったとのこと。
  • マルテの手記
    マルテ・ラウリツ・ブリッゲの手記。マルテという若い詩人の様々な種類の断片を集めた「手記」、という形式を取った、リルケ唯一の長編小説。「詩人リルケの沈痛なる魂の告白の書」(カヴァーより)であることに、疑問の余地はありません。だけど、ここに記された絶望や敗北を作者自身と重ね合わせるだけではなく、その底に...続きを読む
  • マルテの手記
    第一部の退廃的な死のイメージを主観的な口調で記されているのに、第二部は物語的な物語的な俯瞰した視点で記す箇所が多く、通して読むと強い違和感を感じるかもしれない。文体は秀逸。表現は精微で鮮烈。一部、二部が一環した物語として表現されれば素晴らしいものとなると個人的に思うのですが、これが手記の手記たる所以...続きを読む
  • マルテの手記
    リルケが7年の歳月をかけて完成させた小説。ページをひらくとマルテが歩いたパリの町の空気がどっと押し寄せてくる感じがする。彼の目にするものは盲の新聞売りや、舞踏病のじいさんや、もとは家だったのに今は瓦礫の山になっている光景といったすさまじい退廃、惨めさ、貧困……ではあるけれど、マルテの瞳はそこで止まら...続きを読む
  • マルテの手記
    本棚にあるのは昭和44年8月10日第22刷。正確に言えば、筑摩書房の世界文学体系第53巻収録の生野幸吉訳で読み返し、ところどころ大山定一訳を参照しながら再読した。大学に入ったはいいが、授業も始まらずぶらぶらしていたときに読んだ本。改めて再読してみると、この何とも表現しにくい不安感は、ひょっとすると若...続きを読む
  • マルテの手記
    あるグループの歌にリルケという詩人の名が出てきて頭の隅にしばらく残っていた。
    その矢先、ふと観に行った貴婦人と一角獣のタペストリーの紹介でこの本の引用がなされていた。

    こういう同時性で作家に引き寄せられるのもありだと思う。

    マルテという作家(実在のモデルあり)を主人公に描かれている話であるが、
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  • マルテの手記
    断片的に甦る、過去の記憶。
    着飾ったまま舞踏会を抜けて、急病の自分を抱き締めてくれた母。
    あるとき母は精密なレースを何枚も広げて見せてくれた。
    その中に神秘的な風景が見える。

    今、窓から見える舞踏病の老人。
    人間は押し流されて、どこへ行ってしまうのか。
    美しい過去の思い出は、全てを失ってからも人生...続きを読む
  • マルテの手記
     本作は小説に分類されるが、実際に読んでみると通常の小説のように、物語としてまとまりがなく、淡々と主人公が見た風景や回想が一方的に描写される。主人公マルテの心情に関しても、特別変化はなく、ただひたすら孤独に苛まれる様を読者に見せつける。そのため、本作は予想外の展開や刺激的な話を求める人にはおすすめし...続きを読む
  • マルテの手記
    難しかった。正直意味は理解できていない。
    リルケが力の限り産み出した作品なんだろうということは分かった。
    なかなか理解できるものではないと思います。
  • マルテの手記
    こういう作品は、若く感受性が鋭敏なときでないとだめなのだろう。
    半年前に読んだ本だが、なにも印象に残ってない。
    30年前に読んだ時には、もっと心に残るものがあったはずなのに。

    たぶん20代、遅くとも30代までに読むべき本なのだろう。
    逆に、歳を取らないと味わえない本もあるから、それはそれでいいか。
  • マルテの手記
    数年に及ぶ苦しい読書だった。本を開けど開けど進まない。言いたいことがわからない。そんな苦しさがあった。終盤は少し面白い話が出てくるが、それまではどうでもいい話に溢れていて、リズムも掴めず、わからない文章をただガリガリと引きずりながら我慢して読み進めるという感覚で大変辛かった。しかしこれでひと通り読み...続きを読む