徳善義和のレビュー一覧
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全180ページのマルティン・ルターに関する小振りの評伝。ルターといえば、世界史の授業で、95か条の論題を教会の扉に貼りつけて、ローマ・カトリックに真っ向から喧嘩を売った人と思われているだろう。しかし、貼りつけた事に関しては、ルター自身は何ら言及しておらず、同時代の人々の目撃証言に当たるものもないとのことである。
神の「義」の再解釈
ルターの業績は、当時のキリスト教的統一世界において何が画期的だったのか? それは神の「義」を再解釈したことである。ルター以前は、神の「義」とは、「努力を怠る人間に対して、怒りをもって裁きを下すもの」として捉えられていたが、ルターは、神の「義」を「神からの『恵み』で -
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【宗教改革とは、そのルターが、聖書のことばによってキリスト教を再形成した出来事であった】(文中より引用)
16世紀ヨーロッパにおける「宗教改革」を語る上で、決して欠かすことのできない人物であるマルティン・ルター。その半生を「ことば」というテーマで切り取りながら描いていく作品です。著者は、ルーテル神学校名誉教授を務める徳善義和。
マルティン・ルターの簡潔にしてわかりやすい伝記として評価できるだけでなく、現代を生きる我々にも通底するテーマである「ことば」を軸とすることにより、その半生が今日的意味を持って迫ってくる作品でした。難解な解説といった趣もなく、非常に手に取りやすい一冊だと思います。
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お父さんのハンスは「俺は息子を大学にやるぞジョジョーッ!」と言ったそうで。
ルターさんが雷にうたれそうになったところは石碑がたっているんだとか。「歴史の転換地」っていう名前で。
確かにルターさんが雷にうたれなかったとしたら宗教改革はなかったわけだから、なんだかそうすると神様の意思とかそういうものを信じそうになってしまう。
ルターのいいところは宗教者に厳しく民衆に優しいところだと思う。知識はあるのにそこから目をそむけている神学者や司教にはきつい口調で説き、無知の状態にある民衆へは優しく教えを説いてやるっていうスタンスがかっこいい。いつか神学者たちもわかってくれるはずだって信じてたんだろうなあ。
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ルターの教義や反ユダヤ主義?的な要素が、その後の全体主義につながった可能性があるかもしれないという関心事にもとづいて読んでみた。
が、あたりまえといえば、あたりまえだが、基本、神学系の人が書いていることもあって、基本、ルター側にたった評伝。
というわけで、あまりダークサイド?には立ち入らないが、それでも、ルターとユダヤの関係、そして、ナティスのルター利用の話しもページ数はすくないながら、記述がある。
なんと、ナティスは、ルターの作った讃美歌を行進曲的にアレンジして、民衆を鼓舞して、敵であるところのユダヤ人の戦いにむかわせたそうだ。おそろしいことだ。。。。
というのは、個人的なマイナーな -
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マルティン・ルターと言えば宗教改革の人。ということはもちろん知っているが、しかしじゃあ、具体的にどんなことを知っているのか、と問われたら殆ど何も知らないのだった。
で、取敢えず入門編っぽいものを読んでみたけど、ルターの伝記ではないので、分かったような分からんような…。
明らかに強迫神経症としか思えないルターがなぜ、民衆に届くように聖書の言葉を語りかけたいと思ったのか、がよく分からず、そこが分からないと、宗教改革の発端となった『95ヶ条の論題』をわざわざローマに問おうとしたのかが謎のままだ。
そういったこととは別に、当時の世相なども触れられているのでそれは新鮮だった。
例えばルターですら、修道 -
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帯には、「聖書を読み抜いた男」とある。聖書というテキストを徹底的に読み込むことで信仰の新たな姿への理解に達し、神学の哲学からの解放と、中世の教会一体に染まった西欧を新しい時代へのreformationに導いたルターの生涯を辿る。
聖職者が「支配者層」として民衆から遊離した神学・哲学の世界で閉鎖的に研磨していた中世のカトリック。しかし歴史は中世の終りを迎えるべく準備を進めていた。
中世から近代への展開点を、宗教改革の立役者の生涯という軸で眺めること、そしてルターの限界がナチスのユダヤ人迫害まで一つの糸でつながっていたことなど、ふつうの日本人としては縁遠い話なのだが、この本で知ることができる。