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Posted by ブクログ
全180ページのマルティン・ルターに関する小振りの評伝。ルターといえば、世界史の授業で、95か条の論題を教会の扉に貼りつけて、ローマ・カトリックに真っ向から喧嘩を売った人と思われているだろう。しかし、貼りつけた事に関しては、ルター自身は何ら言及しておらず、同時代の人々の目撃証言に当たるものもないとのことである。
神の「義」の再解釈
ルターの業績は、当時のキリスト教的統一世界において何が画期的だったのか? それは神の「義」を再解釈したことである。ルター以前は、神の「義」とは、「努力を怠る人間に対して、怒りをもって裁きを下すもの」として捉えられていたが、ルターは、神の「義」を「神からの『恵み』であって、イエス・キリストという『贈り物』として人間に与えられたもの」と解釈した。ルターによって、神は恐ろしい「裁きの神」から慈しみ深い「恵みの神」として再解釈されたと言える。
十字架の神学
ルターは「十字架のみが我々の神学である」と説いた。中世では、十字架とそこに磔にされたキリストの姿は、”忌むべき象徴”として捉えられていた。その像を180度逆転させて、むしろ無残に磔にされたキリストの姿こそ、神が人間に与えた「義」であり、人間の救いとは、キリストの受難と十字架の姿を、”神のあるがままの姿”として受け入れることで成就するとした。
聖書というテキストの再翻訳
ルターの大きな業績の一つとして、聖書をドイツ語に再翻訳したことも挙げられる。当時、聖書はラテン語に翻訳されていたが、民衆はラテン語を理解できず、単にローマ・カトリックから派遣された司祭の言葉を聴いているだけだった。ルターは民衆が日常で使っていたドイツ語に再翻訳したことで、聖書を大衆と共に「読む」行為が生また。それにより、ローマ・カトリックによる独占的な解釈が打ち破られ、民衆が各自で信仰と向き合うようになった。これが後の宗教改革へとつながったとする。宗教改革の元の語は、”Reformation(再構成)“である。本書では、Reformationにより、「キリスト教的統一世界であった西欧が、ルターの始めた運動をきっかけにして細分化し、キリスト教世界であることは変わらないものの、従来のあり方とは全く別の多様なキリスト教世界に再形成された」 (P.117) とまとめている。
他にも、ゲルマン世界においては、損害に対して等価の賠償を必要として、その賠償には代理を持って当てられるという慣行があった。これが「贖宥」の起源である話も面白い。ルターを通して、中世の歴史と当時の社会が熟練の筆致で書かれており、大変おすすめである。日本人には解りにくいルターの思想を初めて知るには最適な新書であろう。
評価 9点 / 10点
Posted by ブクログ
【宗教改革とは、そのルターが、聖書のことばによってキリスト教を再形成した出来事であった】(文中より引用)
16世紀ヨーロッパにおける「宗教改革」を語る上で、決して欠かすことのできない人物であるマルティン・ルター。その半生を「ことば」というテーマで切り取りながら描いていく作品です。著者は、ルーテル神学校名誉教授を務める徳善義和。
マルティン・ルターの簡潔にしてわかりやすい伝記として評価できるだけでなく、現代を生きる我々にも通底するテーマである「ことば」を軸とすることにより、その半生が今日的意味を持って迫ってくる作品でした。難解な解説といった趣もなく、非常に手に取りやすい一冊だと思います。
目からウロコがたくさん☆5つ
Posted by ブクログ
お父さんのハンスは「俺は息子を大学にやるぞジョジョーッ!」と言ったそうで。
ルターさんが雷にうたれそうになったところは石碑がたっているんだとか。「歴史の転換地」っていう名前で。
確かにルターさんが雷にうたれなかったとしたら宗教改革はなかったわけだから、なんだかそうすると神様の意思とかそういうものを信じそうになってしまう。
ルターのいいところは宗教者に厳しく民衆に優しいところだと思う。知識はあるのにそこから目をそむけている神学者や司教にはきつい口調で説き、無知の状態にある民衆へは優しく教えを説いてやるっていうスタンスがかっこいい。いつか神学者たちもわかってくれるはずだって信じてたんだろうなあ。
けどやっぱり苦しむ宗教っていうのは理解できない。
ルターは「翻訳の父」といってもいいと思うんだけどなあ。
Posted by ブクログ
ルターの教義や反ユダヤ主義?的な要素が、その後の全体主義につながった可能性があるかもしれないという関心事にもとづいて読んでみた。
が、あたりまえといえば、あたりまえだが、基本、神学系の人が書いていることもあって、基本、ルター側にたった評伝。
というわけで、あまりダークサイド?には立ち入らないが、それでも、ルターとユダヤの関係、そして、ナティスのルター利用の話しもページ数はすくないながら、記述がある。
なんと、ナティスは、ルターの作った讃美歌を行進曲的にアレンジして、民衆を鼓舞して、敵であるところのユダヤ人の戦いにむかわせたそうだ。おそろしいことだ。。。。
というのは、個人的なマイナーな関心事だが、本自体のテーマは、「ことば」。
なるほど、まさに「ことば」が世界を生み出すわけだ。そして、「宗教改革」であって、「革命」ではない。ゆっくりと民衆側から改革を進めていくプロセスは学ぶところ多し。
とはいえ、この宗教改革を起点、政治プロセスが起動して、ヨーロッパはしばし戦争がつづくことになるわけだが。。。。
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