杉田俊介のレビュー一覧
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フェミニズムに関する本を読んだので、今回は男性の生きづらさに関する本を手に取った。「男性学」はわかったようでわからず、定義もひとつに確定できない。ただ、女性と比較したり、女性をないがしろにしたりするものではなく、男性の生きづらさや痛みにも目を向けるものだと学んだ。女性のSNSの投稿に攻撃する、または男性の辛さについて語気を強めて主張するものというイメージがあったので、そうではないとわかっただけでも読んでよかったと思う。
本書を読み、私自身も「男性は単純」などと無意識にジェンダーバイアスをかけていることに気づいた。ひとつだけラベリングし、一人の人間を捉えきれない危ういところが自分にもあると学んだ。
一方で、性別による傾向と個人差、生理的嫌悪感や育った環境など、生きやすさを考えるためには簡単には切り離せない問題もある。本書で挙げられた保育園や男性保育士の現状についてはなるほどと理解できる一方、男性保育士に娘のオムツを替えてもらうことを想像するとなぜかモヤモヤする。この感覚が偏見なのか生理的な感覚なのか、社会的なイメージによるものなのか自分でもわからない。考えれば考えるほど絡まっていく。男性学はひとつも単純ではない。
主語を大きくすると自分の立ち位置がわからなくなるので、私の場合はまず身近な男性の息苦しさに気づき、その解決を試みることを積み重ねていくことでしか、理解を深められないのかもしれない。 -
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この本は、名著の解説と対話形式を通して、現代の男性学を学ぶ入門書だ。1990年代に注目された男性学が近年再燃するなか、男性が抱える構造的な加害性と、実存的な生きづらさ(疎外・不安)のねじれに焦点を当てている。
批評家、研究者、実践者など4人の著者が、それぞれの視点から男性学の「名著」を紹介・解説し、そのテーマについて深く語り合うことで、「男」のこれからを考えるきっかけを提供してくれる1冊である。男性学といっても分野は様々で、それぞれで活躍する男性が名著を持ち寄っていたが、別のフィールドにいるからこそ、多方面から男性学についての語りが展開されていた。
私が特に興味深かったのは「戦争」に関する内容と、男性に向けられる「キモい」という言葉についてだ。「キモい」ということ自体が孕む差別的な視座があるという指摘である。”ある種の健常者主義(エイブリズム)と新自由主義(ネオリベラリズム)的な自己責任論が絡み合って、コミュニケーションが円滑な人間こそが「キモくない」んだ、そうでない人間は「キモい」んだ、という基準がたぶん強くある。”という指摘には唸った。たしかにそういう面があると感じるからだ。
男性学には距離を取っているリベラルや左派もいるだろうが、こういう指摘を受け、気まずくなることは必要ではないかと思う。男性を一絡げにしたくなる気持ちは多いにわかるが、かといってそれでいいわけがない。私は誰であろうがもっと生きやすくあってほしい。 -
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杉田さんの新著を読んだ。
けっこう難しく、歯ごたえがあった。全部理解できている気がしない…。
杉田さんの著作は何冊かすでに読んでいるけれど、それらをひとつに集め、タイトルにもあるように男性を解放する道を作りつつ、男性を批評していくにはどうしたらいいかという苦悩が見て取れた
きっとシスジェンダーヘテロセクシュアルの男性の立場から、批評をしていくことやフェミニズムやトランスジェンダーに連帯をしていくことはきっと容易ではない
それでも連帯し、男性たちを解放するということを諦めたくないという志が感じられる1冊だったように思う
もう少し時間が経ってから再読したい -
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また杉田俊介氏の本を読んだ。『男がつらい!――資本主義社会の「弱者男性」論』は、いわゆる「弱者男性」がこの社会でどう生きていけばいいのかを構造的に、丁寧に紐解く一冊だ。
女性が「こうあるべき」というジェンダーロールから解放されることがエンパワメントにつながってきたように、フィクションでもその外れ方が勇気を与えてきた。
一方で杉田氏が指摘するように、男性の生き方のモデルは案外限られている。企業戦士、家父長的な父親、リベラルなイクメンや起業家――そうしたモデルに馴染めない人は、旧来の「男らしさ」が居心地悪くても、孤立感や構造的な条件からリベラルになれないことが多い。では、そういう男性はどう生きるべきか。
女性や性的マイノリティへの加害をせず、冴えない自分の人生をこの資本主義社会の中でどう手の中に収めていくかを、本書は静かに示してくれる。私は誰もが呼吸しやすい社会になってほしいと思っている。
自分を「弱者男性」と自認する人にも読んでほしいし、彼らと対立したくない。どうか自分自身や他者を傷つける言動はせず、まず自分の人生を否定や過剰に褒め称えるのではなく、静かに受け止められればいいと思う -
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資本主義社会に置かれ、そのなかで生きていく男性について、「弱者男性」や「性差別」などをふまえながら、メンズリブを目指す方向で著書を発表している杉田俊介氏の『マジョリティ男性にとってまっとうさとは何か #MeTooに加われない男たち』を読んだ。
世界的な潮流となった #MeToo 運動や、男性社会への疑義を背景に、性別に伴う差別や不平等への意識は、今、かつてないほどに高まっている。
その一方で、「男性特権」への開き直りは論外としても、多くの男性たちは、時にむき出しの敵意にさらされながら、自分の立ち位置や向き合い方に戸惑っているのではないか。
自らの男性性や既得権、そして異性との向き合い方に迷い、怯えながらも、それでも何とか向き合おうとするすべての男性たちへ。
本書は、そうした彼らに応えると同時に、女性や性的マイノリティに向けても、性差を越えた運動の可能性を提示している一冊だ。
この本は決して「なんか最近いろいろ言われているけど、男もつらいんだよ〜」とのたまうような人たちの溜飲を下げるためのものではない。
むしろ、女性や性的マイノリティ、その他の社会的マイノリティの人たちを傷つけたくない。でも、不見識な発言をしてしまえば、そのこと自体が誰かを傷つけるし、苛烈な批判を受けることもある――それが怖い。
そんな、まっとうで善き人間でありたいと願いながらも、この社会でマジョリティ男性としてどう自覚的に生きるかに悩む人たちへ向けた、思考と行動のためのガイドラインになっている。
『ズートピア』や『ジョーカー』、『パラサイト』や『万引き家族』などの有名な映画を取り上げながら、そこに描かれた社会を掘り下げていく。
現代に蔓延する複合差別と、それにぶつかる資本主義の構造。その中で、マジョリティ男性でありながら社会からはじかれてしまう人々の苦しみを照射し、剥奪感や被害者意識に陥らないための手がかりを紐解いてくれている。
この著作で特徴的なのは、杉田氏が男性の抱える苦しみを否定していない点だ。
本書内でも明確に書かれているが、マジョリティ男性は被差別者とは言えない。しかし彼らもまた、ジェンダー秩序や家父長制的なシステムに順応することを課せられている“犠牲者”である。
差別はされていない、しかし抑圧は受けている。そう、はっきりと書かれている。
多数派である男性たちにも、痛みがある。傷があり、恐怖がある。まずはそれを認めることから始めよう――と、杉田氏は力強く主張している。
私はこの杉田氏の主張に同意する。
私は女性であり、ジェンダー秩序や家父長制的なシステムにおいて差別を被ってきた側だ。
けれど、このシステムがすべての男性にとって心地よいものではないことも理解している。
他者を差別したくない、誰かを加害したくない――そんなふうに思っている男性ほど、昨今のマジョリティ男性の特権性について、迷いや不安を抱えているように思う。
何かがわからないというのは、怖い。不安だ。
ましてや、その「わからなさ」が誰かの権利を侵害し、苦痛を与えていると知れば、その状況をどうにかしたいと願う男性ほど、恐怖や不安で身動きが取れなくなるはずだ。
そんな男性に「自分で学ぶべきものを見つけろ、どうにかしろ」と突き放すのは簡単だし、それを言う権利もあるとは思う。
でも、私はそう突き放したくないし、もうこんな社会の状態にうんざりしている。
だからこそ「さっさと良書を紹介するので、とっとと読んでくれ」というのが本音だ。
この一冊で終わりではなく、大事なのは考え続けることにある。
杉田氏は本書以外にもメンズリブを目指す書籍を執筆しているし、西井開氏や伊藤公雄氏の著作にあたるのもいい。
私は女性で、フェミニストだけど、マジョリティ男性が抱える苦しみを知りたいと思う。
男性の特権性を批判するにしても、その苦しみや状況をふまえたうえで批判したい。
現実味のないことを言うようだけど、私はあらゆる属性も属性に括られたくない人も「みんなで幸せになろうよ」と本気で思っている -
Posted by ブクログ
ネタバレ電子で安彦良和漫画を一気読みした直後の今、ぴったりの本。
これは志の高い一冊。
杉田俊介の切込みも、評論も、漫画のあらすじも、分析も、安彦良和自身の証言も。
富野由悠季、宮崎駿、押井守らへの屈折した思いの吐露も興味深いが、吉本隆明ら思想家への思いも語られて、その年代の思想史の一部分としても面白い。
何よりも見た目の好々爺ぶりと違って、貪欲で活力的で鋭い。
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記念碑的名作『機動戦士ガンダム』の神髄と
戦争・歴史マンガに込められたメッセージとは?
『機動戦士ガンダム』の生みの親の一人であり、マンガ家として歴史や神話を題材にした傑作を世に問うてきた安彦良和。
安彦さんが語る、『機動戦士ガンダム』に込めたメッセージや逸話、戦争・歴史マンガへの熱き思い――。
『宮崎駿論』などで注目される気鋭の批評家・杉田俊介さんが20時間に及ぶロングインタビューを敢行。
「ガンダム」の神髄、マンガの多彩で豊饒な作品世界、日本の歴史、あの戦争、いまの社会について。
そして、「人と人はなぜわかり合えないのか?」という安彦作品が粘り強く問い続けてきた核心的な問いにも踏みこんでいく――。
2019年に生誕40周年を迎えた『機動戦士ガンダム』。
40年を超える、過去から未来への白熱討論!
過剰な暴力と殺戮……
人びとはわかり合えない
でも…… わかり合えたら、どんなにいいだろう
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【目次】
はじめに
●I部 「ガンダム」をめぐって
序章 「ガンダム」前史とアニメとの別れ
1章 『機動戦士ガンダム』の方法
2章 『機動戦士ガンダム』『THE ORIGIN』という物語
●II部 マンガ家として
3章 初期作品、『アリオン』『ヴィナス戦記』
4章 日本近代史シリーズ、『虹色のトロツキー』『王道の狗』『天の血脈』『乾と巽』
5章 日本古代史シリーズ、『ナムジ』『神武』『蚤の王』『ヤマトタケル』
6章 西洋史シリーズ、『ジャンヌ』『イエス』『わが名はネロ』
おわりに――安彦良和にとって「歴史」とは何か