ジャン=パトリック・マンシェットのレビュー一覧
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凄腕の殺し屋マルタン・テリエが引退を考える。引退して、「10年経ったら迎えに行く」と告げた恋人アンナと静かに暮らすのだ。組織は察して引き留めようとする。なぜなら彼はこれまで裏仕事を着実にこなしてきて、捕まったらやばい事をいっぱい知っている。残るなら安心。しかし去るなら。考えることはどの組織も同じである。また、今まで殺してきた相手の関わり合いからも、恨みを持たれ、つけ狙われる。組織を抜けるのだから、組織も助けちゃくれない。どこにでも狙撃者はいる。だからこそのタイトルである。
そして途中で皮肉な事に、再び稼業に戻らなければならなくなる。殺しに関してはプロでも、人を見る目がない。人間として致命 -
Posted by ブクログ
ロマン・ノワールの神髄に触れることができるマンシェット1981年発表の遺作。最後の仕事を終え、引退を決意した殺し屋を阻む闇の組織との無情なる闘い。徹底した客観描写で情景を描き切る真にハードボイルドな文体を、フランス文学者・中条省平の気合いの入った翻訳が生き生きと甦らせる。無駄の無いスピーディな展開の中に、孤独な殺し屋の生い立ちとトラウマを表出させ、裏切りと罠によってタフな男が脆くも崩れ去っていく様を、極めてドライに活写していく。終盤、愛人の不貞によるショックで失語症となるというエピソードは余りにも感傷的過ぎるが、言葉を発することなく黙々と復讐劇を繰り広げる暗殺者は異様な迫力に満ちている。