佐々木隆治のレビュー一覧
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「「資本主義」と闘った社会思想家」という副題をもつ本書は青年期マルクスから晩年のマルクスまで、その格闘の足跡を最新のマルクス研究の成果を取り入れながら、簡潔に解説している。とくに晩年のマルクスの「抜粋ノート」にもとづく研究は今後益々進められていくとのこと。確かに我々世代がその昔に大学で学んだマルクスの印象とはだいぶ異なった像が本書では示されている。
第1章は、まずマルクスが「新しい唯物論」に辿り着くまでの思想的格闘を叙述する。フォイエルバッハやヘーゲルの哲学を批判し、新しい唯物論を確立したマルクスは、唯物史観と呼ばれる変革のヴィジョンを示す。それが『共産党宣言』であった。
第2章は資本主義 -
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『資本論』第三巻で論じられている内容を、マルクス自身が書きのこした草稿にもとづいて、その真意を解説している本です。
マルクスの死後、『資本論』第二部および第三部にかんする草稿はエンゲルスの手によってまとめられ刊行されることになりましたが、現代のマルクス草稿研究はマルクス自身の考えていた内容をくわしく解き明かしつつあります。本書では、そうした研究成果をもとにして、マルクスの考えていたことにせまろうとしています。
そのさいに著者が注目するのは、「形態化」とマルクス独自の「均衡」の概念です。すでに『資本論』第一部でマルクスは、資本主義の本質がわれわれの目からかくされてしまう物象化のメカニズムを明 -
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『資本論』のうち、マルクス自身が執筆した第一巻について解説している本です。
本書は、『資本論』のテクストから数多くの引用をおこない、著者自身のコメントを差し挟むというかたちで構成されており、読者自身がマルクスの文章を読む体験ができるようになっています。
『資本論』の注釈的解説書としては、平田清明の『コンメンタール『資本』』全4巻(日本評論社)や佐藤金三郎ほか編『資本論を学ぶ』(有斐閣)などがありますが、著者自身の研究も含め、最新のマルクス研究の成果についても触れられているところに特徴があります。
第一篇「商品と貨幣」では、著者の中心的な研究課題である「物象化」の概念についてとくにくわしく -
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カールマルクス
本書は社会思想に授業の理解のために買ったが、面白いのは後半のマルクス晩年の思想であった。物質代謝という概念をとりいれ、社会システムにおいても利益至上主義を戒め、資本主義がその特性によって自死する可能性を指摘している。マルクスは後期において化学などに造詣が深く、自然科学的なアプローチから資本主義批判をするようになった。人と人の関係がものとものの関係にとってかわられるという物象化や、モノのために人が働くという物神崇拝などという倒錯した関係を、人間本位のアソシエーションに戻そうと考えるマルクスの発想は、トクヴィルの中間共同体への評価と同様に、現代に対して強いアクチュアリティを持つ。