吉野泉のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
みずみずしく整った文章だが、若干回りくどく、やや説明のテンポが悪い。読んだ印象としてはどうにも散漫で印象に残る描写は少なかった。ストーリーは青春ミステリではあるのだが、謎はいまいちどれも魅力に欠けており、謎を解くというよりは嘘を暴く物語である。登場人物は皆善意で行動し、その行動のために小さな嘘をつきルールを破るというのがおおまかな構成になっているわけだが、そのついた嘘を暴くというのはどうにも後味の悪さがある。たとえ善行でも、友人を騙している以上、水臭いという気持ちのほうが先に立ってしまった。青春ミステリに苦い結末はお約束だが、いい話なのに嘘をつかれていたという、違った意味での苦さを感じる作品で