▼あらすじ
財界を牛耳る一族の跡取りを父に、花街の女を母に持つ邦彦は、一族の広大なお屋敷の片隅でひっそりと生きてきた。
だが、両親が急逝し、それまで写真でしか知らなかった義理の兄、康晴に保護されることに。
ところが、康晴に会った瞬間、邦彦の体には異変が…熱くて太い男のそれで後孔を突かれたい、激しくぐ
...続きを読むちゃぐちゃにされたい…!
交わった経験などないのに、心を無視して体が男を―康晴を狂おしいほどに求めはじめ…!?
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タイトル通り、オメガバースを取り扱った作品です。
オメガバースを題材にしたBLコミックはちらほら見かけるようになりましたが、小説となるとかなり珍しく、初めてこの作品を見た瞬間「おっ!」となりました。
時代背景も絵柄も好みだった事から迷わず購入し、密かに期待していたのですが…。
以下、辛口評価になります。好きな人がいたら申し訳ないです。
正直、オメガバースの良さを全然活かしきれていないと思いました。
あとがきに“自分なりの設定や解釈をたくさん入れてしまっているので一般的な「オメガバース」とは違っているかもしれません”と書かれてありましたが、まさにその通りで、これはオメガバースの設定をちょっとだけ借りた、オメガバースとは全く別物の作品だと思いました。時代背景を意識してαを「優勢種」βを「普通種」Ωを「無明」としているのはまぁ良いんですよ。
オメガバースの設定は基本的な設定こそあれど明確な決まりがある訳ではないので、解釈や設定は人それぞれ、それこそ書き手の自由です。…自由ですが、仮にもオメガバースを題材にした作品なのに、最終的にオメガバースでなくても通用する話になってしまっているのは如何なものか。
オメガバースの事を全く知らない、予備知識0の方が読んだらまた違った印象になるかもしれませんが、少なくともオメガバースが好きな私からしたらこの作品は、攻めと受けが行き着くラストも含めて「最後まで読んで損した」レベルの非常にガッカリする内容でした。
αとΩの間にしか発生しない、オメガバースの良さの一つでもある運命的な繋がりも作中からは全く感じられなかったですし、つがいについてもうなじを噛むとかそういう絶対的なシステムを取り入れてる訳じゃないから、つがいだと言われても何だか説得力が無い。
その上、更にガッカリしたのが攻めが最後に結婚した事です。
これできちんとしたハッピーエンドだったなら、オメガバースの部分が残念でもBL的には多少は読んで良かったと思えたのですが、こんな読者を裏切るようなラストでは読んで良かったとは思えません。
攻めも受けも二股の末に出来た子ですが、攻めも最終的には両親と同じように二股をかけ、受けも自分の母親と同じようにこれから先、日陰の道を歩んで行く訳で…。
いやいや、何それ?っていう。つがいだ何だ言ってるけど、客観的に見たら受けの立ち位置は紛れもなく“愛人”ですからね…。あー、すっきりしない。
挿絵が綺麗だっただけに本当に残念です。