サイモン・ベケットのレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ネタバレ法人類学者デイヴィッド・ハンターと同じ作者だったので。
秘密を抱えて逃げてきた男と、
秘密を抱えて逃げることのできない女。
読んだことはないはずなのに、
映画化もされていないのに、
こんな映画を見たことがあるような気がした。
いや、映画ではなく、アメリカのドラマ、
異常心理の犯罪を追うFBI行動分析班「クリミナル・マインド」で
似たような話を見たのかもしれない。
パリで英語教師をしていたイギリス陣の男性は、田舎に逃げてきて足に怪我をしたため、
とある農場に留まることになってしまった。
助けてくれた女性は、息子、父、妹とともに暮らしているが、
町の人々とは付き合いをしていないらしい。
女性 -
Posted by ブクログ
イギリス人著者によるフランスの農場を舞台にしたミステリ。しかも、主人公は、ロンドンからやってきたいわくありげな青年。シートベルトは血だらけで、トランクには死体という、極めて不穏な状況での登場。物語の出だしとしては極度に不安で緊張を強いられるが、その緊張は留まることを知らない。
獣用のトラップに脚を噛まれ重傷を負ってしまった主人公は、得体の知れない農場に運び込まれ、敵意むき出しの農場主と、彼を介護する二人の娘たちと出会い、逃避行の唐突な展開を、利用すべきと思いつつもその農場の不可解な緊張状態に疑惑を抱き始める。
フランスの実存主義作家の第一人者ジャン・ポール・サルトルの状況劇『出口なし -
Posted by ブクログ
ネタバレ評価もジャンル分けすらも難しい。確かにハヤカワミステリという括りで出版されてはいるが…。
そもそも怪我を負った主人公が農場から出れない、という掴みがある意味違う。いつでも出れるし、街に買い物に行ったりする。出れないのではなく出ない、でありこの農場で暮らすことによって曲がりなりにも”家族”を体感するひと夏の出来事が、この家族に隠された忌まわしい過去によってついに崩壊するまでを描く。
そのため、ストーリーにはさほど起伏は無いので、そういう意味でサスペンスを期待すると大外れとなる。しかし、緻密な人物描写と濃厚な背景描写で読んでいて主人公の心情に共感できるので全く退屈しない。
同時進行で主人公の逃亡? -
Posted by ブクログ
ルース・レンデルを皮切りに英国ミステリづいている。これはタイトルから脱出サスペンスものかと思ったら、まったく違っていた。謎めいた雰囲気たっぷりのページターナーで、ヨーロッパでベストセラーだというのに納得。
正体不明の逃亡中の男が、森で罠に捕らわれて怪我をする。目が覚めると農場の納屋に運び込まれていて、娘が介抱してくれていたのだが、この農場の様子はどうもおかしい…。
この男がなぜ逃げているのか、また、農場が隠している秘密がなんなのか、並行して語られていく。先へ先へと引き込まれていく書き方で、どっぷり読みふけってしまった。不穏でダークな味わいではあるけれど、英国ミステリらしく、あくまで上品。最 -
Posted by ブクログ
星3.5
閉塞感漂うミステリー。舞台設定のみならず、登場人物すべてに暗い影が付き纏っているので重苦しいことこの上ないが、いい意味で雰囲気が出ている(フランスドラマの『不感地帯』的)。
主人公は監禁されている訳ではないのに何故か本気で逃げ出そうとしない。その背景は途中途中に挟まれる『ロンドン』エピソードで小出しにされ、メインストーリーでは事件どころか淡々と日常が過ぎて行くだけだ。過去のエピソードは、あくまで主人公を逃げられない状況に置く為であり、あの農場で、あの家族を側から観察する役目を主人公に課している。傍観者以外の役目を持たない主人公は、農場の秘密を暴くでもなく、真実が明らかになってもな -
Posted by ブクログ
先が気になってしまい、ゆっくり読むつもりが
一晩で一気読み。
この真っ赤な表紙と、
でかでかと書かれたタイトルが
チェーンソーでも持って殺戮を繰り返す犯人が居る
悲劇の農場から逃げられないー!
って感じがしますが、全くそういう話じゃないな…。
たぶん(笑)
風景描写が秀逸。
白い埃だらけの真夏の砂利道、
静かな月夜の湖と水の冷たさ、
瑞々しい森の中の物言わぬ彫像の数々。
静謐の廃屋のような家庭内で繰り広げられる
秘密の家族劇、と言った処。
主人公ショーンが何故フランスの農場に辿りついたか、
経過と共に進められていく。
しつこすぎない、
丁度良い丁寧な描写が最後まで印象的でした。
ルルかわ