室井尚のレビュー一覧

  • 文系学部解体

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    文科省による国立大学への文系学部(特に人文学系)再編要請に対して、国立大学改革の実情や歴史、そして大学の役割等の観点から、その要請がいかに不合理なものであるかが、横浜国立大学教授の著者によって喝破されている。

    社会で「役に立つ」学問の教育に力を注ぐべきと政府は煽るが、国が定めた「あるべき」像に隷従した果てに社会の進歩が見えてこないのは私だけではないはず。
    本文でも言及されている通り、進歩とは前に進むことであり、「前」がどちらなのかが分かっていなければ逆走だってあり得る。人・コミュニティ・組織・地域・社会によって「前」は多様であるはずだから、一人ひとりが考え、対話し、うっすら見えた「前」に向け

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    2018年02月18日
  • 文系学部解体

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    学んで得られる“知”というようなモノの中には「(役立つ)情報」も在れば、「役に立つか、立たないか不明なモノ」も多々在る。それらを色々と取り込んで「文脈的思考」をするのが「生きる」ということである筈なのだが…「手続き型合理性」というモノが必要以上に幅を利かせ、「目的を得るために何かをやる」というよりも「何かをやること自体が目的」という事態が社会を覆い尽すかのような感…本書はそこに“警告”を発しているように思えた。或いは、近年読んだ多くの本の中で、「最も深刻に近年の我が国社会を憂う」という内容だ…

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    2016年01月12日
  • 文系学部解体

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    某国立大学で客員教授をやったことがあるので,大学の教官と話す機会があり,「手続き型合理性も基づく余分な仕事」が山のようにある実態を垣間見た経験がある.諸悪の根源は文科省の官僚たちだが,大学としてお金を絞られることは嫌なので,しぶしぶ対応している.無駄なことだ.文科系学問に存在する「隙間」や「ノイズ」の重要性を,少なくとも一定数の大学教官が認識していることに安堵しているが,それらを無視するような政策を押し付ける行政の力を打破する手段の構築が必要だと痛感した.

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    2016年07月31日
  • 文系学部解体

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    前半は「現代大学システム」の説明と批判、後半は「反知性主義」の喚起と「大学の意義」の再確認であった。
    個人としては問題意識から学問をしているし楽しんでいるが、言われてみれば「反知性主義」はただ進行するのみとなってきている。自分も著者の言うように「反抗する」側として学問を修めたいと思う。

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    2016年02月15日
  • 文系学部解体

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    「第二次安倍内閣における教育再生実行会議の構成員は、
    安倍晋三、菅義偉、加藤勝信、世耕弘成、杉田和博、下村博文、丹羽秀樹、義家弘介」(44頁)

    これでもかと言うほどに碌でも無い面子である。
    大学潰しは安倍内閣から始まったわけでもない、というのは本文中でも説明はされているが、しかし碌でも無い面子である。


    この本はしかし、大学生の学力低下を扱ったものと併読すると興味深さが増すと思う。
    たとえば河本敏浩『名ばかり大学生』(光文社新書)の、次の文章など、考えさせられるものがある。

    「日本の教育制度の歩みを概観したとき、そもそも小学校であれ、中学校であれ、高校であれ、勉強のできない子供に対して、

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    2025年08月24日
  • 文系学部解体

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    国立大学に限った話。タイトルにある件の是非はわからないが、日本に余裕がなくなっていることと大学が抱える課題はわかった。
    文系科目は世界最先端を目指すとか性能やコストを競うとか、そういう価値観に合わないマッタリ感があるので、理系と同じよう枠組みでの評価はキビシイね。

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    2023年02月05日
  • 文系学部解体

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    今年の6月に文科省から出された通達がきっかけとなり、大学関係者ではない人びとのあいだでも大きく議論されるようになった国立大学の文系学部廃止について、そこに至るまでの経緯、背景にある事情、および筆者の考える問題点が綴られている。

    一般の読者に主眼を置きながらも、幅広い読者層を想定しているのではないかと思う。その点、第5章と終章では一般の読者にはなかなか伝わりにくい(理解されんくい)だろうなと思われるようなことも書かれている。室井先生も自覚的にそうしているのだろうから、それはそれでいいと思うけど。

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    2019年01月22日
  • 文系学部解体

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    横浜国大の先生が近年の国立大学への文科省の方針を容赦なく斬る。痛快であるものの、実際にこの方向へ国が進んでいるということは憂慮すべき状態なんだ!「国家や企業に奉仕する人材を育てるのではなく、人間を育てる」とは全くその通りで、分かり易い文科省批判の言葉だろう。「人類が長い時間をかけて蓄えてきた文化や藝術、思想や哲学、自国や他国の歴史に愛着も興味ももたず、ひたすら株式会社化した大学や社会に自分を最適化させ、ただ自分の人生をグローバル資本主義におけるさまざまな課題解決だけに捧げる学生しか育てない」とはその通りである。大学における理系重視はその方向を助長させているに違いない。国立大学の学長に理系が増え

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    2017年11月13日
  • 文系学部解体

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    地方国立大学の内部にいる筆者による陳情・意見の本なので、極端な例やかなり怒りに満ちた言も見受けられる(評価アンケートや手続き合理性など)。

    が、それをさしひいても、国の政権・行政方針が変わるたびに振り回されてしまう国公立大学の不憫さ(人手不足なのに学部新設させられたと思いきや早々に廃止だの、形式的事務作業圧迫だの、民間の経営手法に倣えだの・・)がうかがえる。

    人文系学問は短期的に役に立たないからと軽視すべきでないし、知の多様性をいかに守るべきかは大きな問題だ。
    まさに、哲学や文学に潜む文脈や歴史から、現世の常識を疑い、新しい問いを立てるための知なのだ。

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    2016年04月17日