川合伸幸のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
一言結論:とにかく人間はこんなにバイアスに囲まれているんだ、と突き付けてくれる本です。最後の章でバイアスへの対策が含まれているのが素晴らしい。
感想:はじめにで書かれている通りバイアスの種類は100種類以上もあり、私たちは本当の意味で合理的、論理的な判断を下している訳ではありません。むしろ、意識してそうしようとしても不可能です。ある意味人間らしさとも言えるそうした不合理な傾向を知りどう付き合うか、それがよく理解できる本だと思いました。
この本は意思決定や認知の過程を厳密に論じているわけではないので、それが気になる人にとっては「ただそれらしいものをライトに羅列しただけの眉唾もの」と映るかもしれません。しかし科学的考証は必要部分で引用されていますし、傾向として存在するのは間違いなさそうですから、大全というタイトルの通り辞書的に扱えるという点で大枠意義のある本ではないでしょうか。
特に最終章でバイアスの影響とどう向き合うかが書かれているのは良いですね。避けるべきバイアスをきちんと教えて提案もしてくれる。未来に繋がる良書だと思います。
こうして考えていくと、人間にとって最も合理的で論理的な結論は人間自身からは生まれないと言わざるを得ません。どんなに影響を排除したと思ってもアンコンシャスな傾向は排除しきれないからです。人間以上の源があるとすればそれが最も合理的です。
ベストセラー聖書にもその点が書かれています。
「聖書の預言はどれも個人的な解釈に基づいてはいません。どの預言も,人間の考えによって語られたのではありません。人が聖なる力に導かれて,神からの言葉を語ったのです。」-ペテロ第二1:20, 21
信じる信じないは別としても、私たちは真の意味で合理的な判断とはどういうものかを考える必要があると思います。 -
Posted by ブクログ
性善説か性悪説か、ヒトは他人を助けようとするのか、それとも生存・保存のために他人を蹴落とすのか、といった「ヒトの本性」を、赤ちゃんやサルなどの動物の行動の観察や実験、脳の仕組みから読み解こうとしたもの。著者は科学者的な大学の先生で、理系の本、といった感じ。
何か教育学的な話でもなければ、もっと胡散臭いセラピスト的な人の話でもなければ、誰かの経験論に基づく実はエッセイ、のようなものではなかった点、とても良かったし、面白かった。心理学の入門みたいな本でよく出てくる有名な実験の話(「ハーロウの代理母親」の実験、「スタンフォード監獄実験」、「ミルグラム実験」など)も載っているので、勉強になる。
気になった部分をいくつか挙げておくと、まず「怒鳴られるのは、叩かれることに匹敵する」(p.29)というのが衝撃だった。自分で言うのもおかしいが、おれは結構怒鳴ってしまう人なので…。「一三歳のときに親から叱責された子どもは、翌年には同世代の子どもとのケンカや学校でのトラブル、親へのうそ、抑うつなどの兆候が顕著に高まる」(p.30)らしく、ということは怒鳴ってしまったら必ずそのフォローを忘れないようにしよう、というかそもそも怒鳴らなくてもよい方法で何とかならないのか、とか考えた。「人は尊敬し賞賛している人にいわれるほうが、自分の行動により強く責任を感じる」(p.31)というのもその通りだと思う。男女の攻撃性の差異について、「男女ともに攻撃性は『資源を護る』気持ちから生じており、男性と女性ではそのアプローチが異なる」(p.94)というのが面白い。オスは資源を護るために集団外への攻撃性を発揮し、メスは集団内にある資源を取り合うために集団のメンバーを攻撃する、という違いらしい。
あと「わたしたちはだれかから仲間はずれにされると、身体に痛みを与えられたときに活性化するのと同じ脳の領域(島皮質と前帯状皮質)が活性化する」(p.144)というのが興味深い。そこから、「仲間はずし」の実験とも言うべき実験が紹介され、「ほんの二、三分の仲間はずれの経験が、その後の脳の活動に大きな影響を与えた」(p.148)とか、「いじめの悪影響はかなり長く持続し、おとなになるまでつづくこともありうる」(同)というのは、最近NHKで見た特集と重なることもあって、印象的だ。いじめられた経験というのは、ずっと傷になって残ってしまう、という話で、逆にそこまで傷となるように、ヒトの脳はできているんだと思った。
それから、よくおれは教師として、他人のために働くことが、他人を幸せにすることが、結局自分も幸せになるんだ、みたいなことを言うけど、それはもうすでにそういう実験がある、というのを知った。要するに「与えることによる喜び」(p.182)というのは、本当にあるんだと思った。
あとこの本には、印象的な名言がいくつか載っているが、p.50の「悪の最も効果的な誘惑手段の一つは闘争への誘いだ」というカフカの言葉、p.168の「我々は得ることで生計を立て、与えることで生きがいを作る」というチャーチルの言葉、p.202のガンジーの言葉「『目には目を』を貫いてたら、世界中の人の目が見えなくなってしまう」は特に心に残った。(17/03/19) -
Posted by ブクログ
人は型にはめたり、原因と結果をつけたりして、決めつけてしまう生き物なんだなと思った。不確実なことは、不安を作るからかもしれない。
知らず知らずのうちにたくさんのバイアスに囚われているものだなと思った。
重要な決断をするときなど、バイアスがかかってるかも、と少し一呼吸置いたほうがいいかもと思った。マインドフルネス瞑想を取り入れて感情と思考から一旦距離を置く。本当に正しい?ほかの考え方は?と認知の修正をする。
なるほどとおもった内容
サンクコスト効果
時間と費用をかけたものからは無駄にしたくない心理からうまくいかないとわかっていてもやめられない。
現状維持バイアス
不合理で不利益な選択でも、人は現状に固執してしまう。
ダニング=クルーガー効果
能力の低い人ほど自分の能力を過信する
無知の知の欠如=多くのことを知ると自分の無知にきがつく
オプトアウト方式 選ばせ方の工夫
初期設定された選択肢を選びがち
臓器提供をするという選択肢をデフォルトにしている国は98%以上同意する結果に。
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Posted by ブクログ
ネタバレ人間のように同じ種で殺し合う動物は他にいない。しかし一方で、人間が殺人した記録として残っているのはたった40万年前。人類の歴史からすると最近。それまでは仲間を殺さずに生きていた。人間には共感し、他者を援助する性質がある。チンパンジーらも援助することはあるが、自分を犠牲にしてまで他者を助けるのは人間特有の性質だといえる。著者は、人間は本来善悪の両側面をもつが、進化と理性によって悪を抑制し善に価値を見出すよう発展し続けるとした。実験や学説の紹介も豊富で、希望がもてるような内容だった。ただ、紹介が多い分、著者の主張を主軸においているわけでは(おそらく)ないので、ところどころに数行登場する著者の説は結論のみに絞られており、やや飛躍している印象を受けた(自分がうまく理解できなかっただけかもしれないが)。
・他者の暴力の影響
実験によると、攻撃的な行為が正の結果を生むのを学習した人は攻撃的になる。逆に、攻撃的な行為を否定的に扱うシーンを見れば、攻撃的にはならない。関連して、家庭内暴力(怒鳴りも含む)があった子供は、大人になったときに暴力的になりやすい。これは暴力により他人をコントロールできることを学習したから。何か罰を与えないといけないときには、暴力や暴言で子供をコントロールするのではなく、子供が好んでいるものに制限をかける等、負の罰を与えるといいらしい。
暴力的なゲーム(シューティングゲーム等)の影響は正直よく分からない。個別の実験だと、脳が暴力的行為に慣れてしまい感受性が低下、さらに難しいゲームをすることでフラストレーションが溜まり、結果的に攻撃的になってしまう説もあるが、全体的な傾向としては暴力的ゲームが売れた直後は犯罪件数が低くなる。この矛盾がなぜ生まれるのかは分からない。結局、ゲームはいい面でも悪い面でも人間に影響を与える。ゲームに限らずだと思うけど。
仲間外れにより辛くなるのは、実際に脳の痛みに関する部分が反応しているから。予想以上に深刻。
スタンフォード監獄実験の概要は知っていたが、悪名高いということや詳細な状況は知らなかったので、新しい知識を得られて良かった。もともとは囚人の心理を知るための実験だったのに、予想に反して看守役のサディスティックな行為が目立ち実験中止になった。悪の汎用を想起した。著者が賛同する説によると、集団の代表として正義を執行した、という。著者はその解釈をもう少し進めて先述の仲間外れと関連付け、集団からの排斥を避けようとする心理が根本にあったのではないかと考察する。自分は、それもあると思うけど、人間には学者が言うような性質の種が多かれ少なかれちょっとはあるのかなと思った。画家ゴッホの、弱者を助けられるのは自分しかいないと思い込みすぎるという気質と、目的は真逆だけど根幹にある性質は似ているのかなぁと何となく思った。
・協力、他者援助
人間もチンパンジーも、他者と協力する。しかし、異なるのは自分に利益がない時でも他者を援助するということ。人間は赤ちゃんでも他人が困っているときに助けてあげる。しかも、ほうびを与えればむしろ他者援助の傾向が低下する。お金を自分のために使うか他人のために使うかという実験では、他人のために使った人のほうが幸福度が高くなった。また、ほかの動物と変わらず、人間においても、社会を維持するための 「互恵性」 は 重視される。そういった集団(他の人)の利益を高めて自分も高い利益を得ようとする傾向、そして同時にそうしなかった人(もっというとズルをする人)を排斥しようとする傾向の両側面が進化し、人間は超協力的性質を備える生き物となった。ながらく生物学の分野では人間は攻撃的で争いを好むとされていたが、近年それは誤りであると考えられている。人間には本来善悪の両側面があるが、上記が原動力となって、悪を抑制し善に価値を見出すということを学び、進化してきたのではないかと著者はいう。希望はもてるが、人類全体としてはそうであっても、必ずそこから漏れる人はこの先も現れると思う。そこをどうするか。