メリメのレビュー一覧
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Posted by ブクログ
途中の注釈で、メリメが10代後半から魔術関係の本を読み漁ったと言われていることが捕捉されていて、なぜ「タマンゴ」ではアフリカの民俗的な話や魔術的な話が挿入され、「カルメン」では悪魔祓いにもハマったことがある考古学者を主人公にしているのかが分かる。ボヘミア人が占いをやるという話が出てくるのも、メリメの趣味嗜好が出ている気がした。
また、考古学者目線で、最初は物語の全貌が見えないものの、だんだん役者が揃い、昔何があったのかが明らかになっていくのは、まさしく「椿姫」にそっくりだ。
他にも類似のフィクションはあるものの、ここでヴェルディの「椿姫」を引き合いに出したのかと言えば、「カルメン」も「椿姫」もオペラの題材になっている作品だからである。
私が普段思い浮かべる「一般的な恋愛」では、暴力を振るわないし、浮気女だと分かれば普通別れたくなるし、嘘でも好きな相手を「殺したくなった」とは言わない。なぜ上手くいかないと頭で分かっていながらも離れられないのか。それこそが魔性の女の特徴である。
来月にオペラのカルメンを観に行く予定のため、原作も見ておこうという動機だったが、メリメの作品である「タマンゴ」は私の好みど真ん中であり、不意な嬉しい出会いがあった。 -
Posted by ブクログ
カルメンといえば魅惑的な女性の代名詞だが、実は原作もオペラも映画も見たことがなく、正しいあらすじを知らなかったのでこちらを読んだ。色々ある訳本の中から新訳を選んだのだが、とても読みやすくて、非常におすすめだった。
話はメリメと思われるフランス人考古学者が、コルドバ辺りのアンダルシアで、たまたまホセ・ナバーロという怪しい素性の男と知り合うことから始まる。ナバーロに貸を作る形になった作者は、罪を告白して死刑になろうという彼から最後に身の上話を聞くのだ。
話の筋は周知の通り、ロマ人のカルメンに惚れてしまったナバーロが、彼女と一緒にいたいばかりに軍の出世は愚か、罪を犯して、今で言うところの、密輸や強盗といった犯罪組織の仕事に手を染めて堕ちていく、というところ。だが、主眼は、靴下が穴だらけだったり、決して清潔ではないはずの描写のカルメンの、自由人たる魅力、彼女の周りに現れる男性の影に嫉妬を抑えられないナバーロの心情描写が巧みで、読み進める手が止まらなかった。
またメリメはロマ人の言語研究に後年ハマったそうなのだが、フランス語で書かれているであろう原文に、ロマ語のみならず、バスク語やスペイン語、ラテン語の知識も散りばめられている。フランスもバスクとロマという文化を共有している国であるだけに、スペイン内におけるロマ人やバスク人の立ち位置までも描かれていて面白い。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ
カルメン
白人考古学者である紳士が湖のほとりで指名手配犯と出会う
同行しているものがこの男を通報しようとするも、紳士は逃し「願いを聞いてくれるというのならだれのことも恨んではいけない」と、通報者の身を案じていた
その後紳士がジプシーの女に美人局をされそうになった時、指名手配犯と再会した
その時に時計を無くしたのだが、数日後牧師からの知らせで、指名手配犯が捕まったと同時に時計が戻ってきたことを知る
指名手配犯は牢にいながら紳士に向けて滔滔と事の顛末を語り出した
紳士に美人局をしたカルメンという女との物語だ
指名手配犯は元は貴族だが、勉強に親しめず、軍人として働いていた
近隣の女工房で働くものたちは、軍人相手に売春をしようと、仕事終わりにアピールをしていた
その中で一際目立っていたのがカルメンだ
しかし真面目であった指名手配犯は有象無象の男性とは異なり、カルメンに欲情して見せなかった
興味を持ったカルメンは指名手配犯に花を渡して色仕掛けする
そんなある日、カルメンは同僚と言い合いになった末、顔を切られたカウンターに刺殺してしまった
偶然にも指名手配犯がカルメンを連行することになる
互いに心を惹かれていた2人は、カルメンが指名手配犯を倒したフリをするという具合に、カルメンの逃亡を実行した
しかし巨漢が小娘に拳ひとつで倒される訳もなく、指名手配犯は1ヶ月牢での謹慎処分を受ける
そんなある日、カルメンからと思われるヤスリと銀貨がパンの中に隠し届けられた
指名手配犯はこれを使わずに、逃亡もせずに、次偶然カルメンに出会った時に返した
カルメンは指名手配犯を知り合いの老婆の家にまねき、その銀貨で2人きりの祝祭を催した
カルメンとはこれきりだと思われたものの、また偶然にふたりは出会う
次にカルメンは、密輸入するために見逃してくれと懇願する
指名手配犯はまた2人の祭りを開いてくれるのならという条件で承諾しようとするも、無償で承諾してくれないことにカルメンは腹を立てる
ふたりは決別したと思ったのもつかの間、泣いて街を歩く指名手配犯をカルメンは慰め、結局祝祭をひらいたのだ
しかしある日、カルメンが指名手配犯の上司と寝ようとしている現場に遭遇し、指名手配犯は激昂して男を殺してしまった
ここからカルメンと指名手配犯のジプシー生活が始まるのだ
最初の方は順調に、仲間と共に密輸入をするだけだった
けれど状況が悪くなるに従って、殺人や強奪というように罪も加速していった
ある日カルメンが元恋人を牢屋から脱獄させて、主人公は明確に恋人ではなく愛人になってしまったのだった
更にその元恋人は主人公にとっては残忍で、追っ手に追い詰められた時に、負傷した仲間のことを見捨てるのみならず、顔に銃弾を浴びせて囮にまでした
うまくやっていけるわけもなく、カルメンがスペインで白人の愛人役をしている間に、主人公は元恋人に対して決闘を挑み勝利する
カルメンはそのことを知り呆れる
カルメンが呆れるのに応じて主人公は執着する
そのうちカルメンは過去に主人公に浮気したように、みずみずしい闘牛士の青年と浮気し始めた
最終的に主人公は嘆願しても二度と自分のことを愛してくれないカルメンのことを殺害してしまった
そして紳士に、自分と彼女のために死後ミサを上げてくれと頼むのだった
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敬虔なこの紳士はキリスト教徒の鑑で聖典に描かれる罪人と晩餐を共に食べるイエスのように描かれている
タマンゴ
奴隷商人のフランス人は、現地で奴隷を調達する黒人と交渉をする
19世紀前半、奴隷売買はもはや規制され、大陸も狩り尽くされて来た頃
タマンゴの売ろうとしている奴隷はどれも不健康で病的で売り物にならないような人達だった
フランス人は拗ねて帰ろうとするが、タマンゴは酒を持参して懇願する
酒を飲むにつれて徐々に頑なになるフランス人と、徐々に値下げをするタマンゴ
ほとんど潰れたタマンゴからフランス人は最安値で奴隷を買い付け、タマンゴの美しい嫁をも持って行った
フランス人の船が出向してから我に返ったタマンゴは、乗船して妻を返してくれと懇願する
フランス人は了承した振りをして虚を着き、タマンゴをも捕縛した
美しい妻はフランス人に気に入られていたので、ドレイではなく妾として扱われていた
隙を見て、タマンゴにヤスリを渡す
そしてタマンゴは他の黒人共を説得して、インティファーダを企図する
最終的に成功するが、船を動かすことの出来ない黒人共は、大破させ、タマンゴと妻以外は死亡した
妻もタマンゴに最後のパンを譲ったきり死んでしまい、2人の死人しか乗船していない漂流船はその後白人に発見された
マテオ・ファルコ
同胞に対する裏切りという最も恥ずべき罪を犯した息子を、怒った父親が殺す話
オーパン神父
書簡方式で、破産の末田舎に越してきた元社交界の常連である貴婦人が、謙虚な若い神父にダル絡みする話
エトリュクスの壺
物静かで誠実で不器用な資産家が社交界に出入りする女性に恋をするも、噂と思い込みに踊らされて想い人を疑い、同胞を侮辱し、その罪と言わんばかりに決闘で後攻を申し出て打たれ死ぬ話
アルセーヌ・ギヨ
敬虔なキリスト教徒である貴婦人が、幼馴染の男と自殺を測った貧困なギヨを改悛させようとする
ギヨと男は過去に恋愛関係にあり、母を無くし、婚約者に見捨てられ、病気で、もう死にゆくしかないギヨは、最期に男と愛し合うことを夢見た
しかしギヨを禁欲的なキリスト教徒にしたい貴婦人は、男との仲を制限し、男を管理の上でギヨを慰める道具に使う
ギヨはそんな時をへるにつれて、男の真の想い人が貴婦人であることに気づく
貴婦人も、トルコに戦争にいこうとする男に感じた重いから、自分の内心に気づき始める
ギヨは「私、愛しましたわ!」と数回叫び、死に絶えた
どの話も歴史的背景とキリスト教的価値観と豊かな感情とを驚くべき筆致で描き出している
可哀想な奴隷商人の話、ジプシーの熱烈な恋愛の話、元悪党の矜持の話、女性の気紛れと思い込みの話、疑心暗鬼と誠実差の話、傲慢なお節介と運命に翻弄されるギヨの話
悪人とされるものを、情熱的で、矜恃を持った誇り高き存在として描き
キリスト教離反者であり貧民とされるものを、絶望しつつも唯一愛を追い求めるものとして
描き
資本家の白人を傲慢なものとして描いているように感じた
つまり受動的であり弱者とされる側の人間とその人間の独特の感情をより鮮やかに描きだす試み
物凄く繊細で何よりもそれぞれの矜持や情熱に心洗われる
変な古本屋で安く売られてたから買ったけど、大当たりだったな
隣にあったメリメの別の本も購入しておけばよかったと後悔