中村保男のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
◼️ ギルバート・キース・チェスタトン
「ブラウン神父の童心」
対極のヒーロー?やっぱりブラウン神父はめっちゃ独特。すっとぼけた鋭さ。
若い頃にはイメージだけでやめるものがある。いまは鼻歌で出るショパンのピアノ協奏曲1番も、昔は弦だけの出だしを聴いただけで、なんて暗い曲なんだ、とストップボタンを押し、その後何年も聴かなかった。小説の「オペラ座の怪人」も芝居めいた、西洋風のセリフの羅列がどうにもいい感じがせず途中で投げ出した。
ブラウン神父も、ミステリ好きとお互い分かってすぐの先輩に昔借りた。楽しみに読み始めたものの、構成やストーリーの流れについていけない面があって途中で読むのをやめた。以来、多くの作家が影響を受けた作品、と挙げられてるたびになんか古傷がうずく感じがしたものだ。大人になった今は、どうか?たまたま手にしたのでウン十年ぶりに読んでみた。
ブラウン神父。同じイギリスを舞台にした、発表年代がホームズ後期とかぶっている探偵もの。長身痩躯、鷲鼻、鋭い目、精力にあふれるホームズに比してブラウン神父は小さくて丸顔に丸い鼻、眼鏡をかけ、みすぼらしい身なりに蝙蝠傘、動作もゆっくりなイメージ。ヒーローのイメージとはまさに対極。物語の作りもホームズものとはまったく違う。
奇妙な事件が起きて、捜索して手がかりを集め、それを元に人が予想できていなかった明瞭な解決を見せる、のがホームズもの。ブラウン神父は犯罪界の大立て物フランボウを、パリ警察主任のヴァランタンが追いかけている最中になぜかフランボウと行動をともにして、行く先々でおかしな手がかりを残す、という初出演の仕方でフランボウを出し抜く。しかも2人の間で交わされている会話が、理性と宗教について、といった具合。(青い十字架)
フランボウはやがてこの短編集中でブラウン神父のよき相棒になっていく。
上の会話のように、事件が起きた時のブラウン神父の語りは抽象的で幻想譚のような雰囲気を醸し出す。手がかりの中から必要なものを選り分け、真相を組み立てる。ホームズのように調査結果から分かりやすく意外な結論を導き出すのではなく、想像性が強く演繹的な、ズバッとした結論。「イズレイル・ガウの誉れ」など、最後の見開きページで全解決。また「飛ぶ星」も同じような感じで、年老いたフランボウの回想であり劇中劇、という味のある変化球をかましている。
なるほど、意外性といい、改めて読むとその特徴はよく分かる。確かにおもしろい。しかし「見えない男」のようなトリックはちょっと手垢がついていて、あまり感心しなかった。中には、いきなり何人も関係者が出てきて、どうも状況がつかみにくく、集中できない、という話もあった。たぶん前回はこの辺で挫折している。
いまの目で改めて読むと、謎そのものの魅力、漂う幻想性、だからこそ鮮明に浮かびあがる真相の意外性のほか、そしてできるだけ短いタームで一気に解決を図る手法などはかなり特徴的で計算されている。論理だけではなく、証拠にある程度基づいている。外面と英知のギャップを持つ探偵のカリスマ、また仲の良いわけではなく、ずっと緊張感がありながら噛み合わせの良い、のっぽの元大泥棒フランボウと短躯の神職のコンビはユーモラスで、ちょっぴりアンチテーゼを含んだ設定のような気がする。
確かにおもしろい、かも知れない。多くの作家さんが影響されたという探偵もの。さてしかし、若い時分と同じく、やはり途中躓いて時間がかかってしまったのもたしか。良い折りがあれば続きを読むかも、というところ。ただ、結局未完読の「オペラ座の怪人」はいつか最後まで読もうかな。 -
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シリーズ第5短編集にして最終作。風采の上がらなかった神父も世に知られる人物になったしフラウボーも前作で分かるよう過去の人物になった。
実は本書収録の『村の吸血鬼』は本短編集の後に発表されたものだが作者の死去に伴いここに掲載されるようになった模様。たぶんフラウボーが出てきた話が本当のラストで次作は新シリーズの構想があったのだろう。
今まで動揺に神父の逆説と文章で幻惑させてくる様な構成。映像化したら早々にバレそうなトリックもあるがそれ故に文章で楽しむ作品なのかもしれない(時代を変えてドラマ化され、そちらもシリーズ化はされている)。
これまでの探偵小説とは異なり相棒が記述するスタイルでないのもあるがその為かレギュラーキャラは僅少で事件そのものが主役で神父は狂言回しのような印象もある。 -
Posted by ブクログ
冴えない風采ながらも鮮やかな知性を光らせる名探偵ブラウン神父シリーズ3作目。前作とはだいぶ期間が空いているためかシャーロック・ホームズを意識した『復活』が冒頭に収録。解説によると第4作目とは時期的に重なっており意図的に振り分けた模様。そのためか本作では不可能犯罪系というかトリッキーなのが多い。個人的にブラウン神父モノはトリックの宝庫と言われているけど『ムーンクレサントの奇跡』みたいに冒頭の美談めいた話が真相に繋がるみたいな人生の妙味を説いたところに味わいがある気もする。
読んでいて気になるのはブラウン神父は飄々としているのでやはりフラウボーのような相棒をレギュラーで固定して欲しかった。 -
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ネタバレ古典、往年の名作を知ると読みの視野が広がる。
純文学系の古典、名作にも手を伸ばしたいところだが、主なテリトリーであるミステリで手一杯である事情はさておき。
ということで、ブラウン神父シリーズ第一作目、『ブラウン神父の童心』。
ぼんやりとした丸顔で小男のブラウン神父と、犯罪界に名を馳せていたがブラウン神父との幾度かの邂逅を経て改心し相棒となったフランボウのコンビが各地で巡り合う事件を解決していく。
チェスタトンは初読。なるほどこういう作風ね。
う~ん、何か入り込めない。
あくまでも個人的な感覚だが、文化的地理的違いによりあまり思い浮かべられない細かな情景描写が多いなと思うのと、3人称語りということもあるのだろうが、一話一話の入りが毎回違う雰囲気がして一話毎につんのめる感じ。
連作感が薄いというか、ぶつ切りにされているというか。
それでも、一冊読み終える頃にはブラウン神父の全てを見透かす目、罪人の心に宿る微かな光に情を寄せるはからいがしっかり印象付きました。
フランボウはもっと活きてもいいと思うのだけどな。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ円顔の小柄な老神父、ブラウン神父。
亡くなった人に寄り添うため、教会関係者に呼ばれて、事件現場の端に居ると思ったら、あっという間に事実を暴く13篇。
なんて書くと、殺伐とした印象だけれど、ブラウン神父はどこまでも穏やかに真実を指摘する。
稀代の怪盗、フランボウをいつの間にか改心させて相棒にしてるし。
何事も力押しなフランボウとそれを諌めつつ淡々と謎を解くブラウン神父のコンビも楽しい。
それにブラウン神父が赴く館、屋敷が素敵だった。
精美を誇る古庭を見晴らすベランダ、怪奇とさえいえる美しさの熱帯植物がところせましと繁茂しているガラスの温室、竹か強い熱帯産の籐で出来た河面の細長い家、陽ざしをいっぱいに受けた田園の上に豪雨を降らす暗雲となって腰を据えているかに見える教会。
ドラマなら映像でみられるのかな。
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