ジョン・ヴァーリイのレビュー一覧
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全部よかった。テクノロジーの進化に対し適応していく人間の意識や社会の変容を、感傷的にロマンチックに綴る、ハズレなしのSF短編集。翻訳もよいのでしょうが文章が柔らかく軽やかで読みやすい。生々しさと熱を感じさせながらも、冷徹な視点が貫かれています。
「逆行の夏」水星で暮らすぼくの元に、月からクローンの姉がやってくる。新しい家族の形と性のありかた。鮮やかな舞台描写がイメージを刺激する、さわやかな短編。
「さようなら、ロビンソン・クルーソー」今回一番好きです。二度目の子供時代を、冥王星の地下にあるリゾート海浜で送る少年。謎の女性の訪れを契機に、子供でいられる時間の終わりが見えてくる。少しずつ見えてくる -
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ジョン・ヴァーリイはどうしているんだろう、と思っていた矢先の日本オリジナル短編集の登場。1970年代から80年代に独特な未来世界でSFファンの魂をつかんだ作家だ。代表作の〈八世界〉シリーズは地球が異星人に侵略され、月や火星など八つの世界で人類が生き延びているという設定。身体改変技術が発展し、衣服を替えるように性別を替え、身体を環境に適合させ、身体を脱ぎ替える世界。
1990年代以降、ヴァーリイはハリウッドの脚本執筆で成果が上がらず(映画化されたのは『ミレニアム/1000年紀』くらい)、翻訳も先細りして現在に至っているようだ。
本書も既訳作品とその新訳で、1975〜84年のものであり、新し -
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ネタバレ円城塔に煽られて。ヴァーリイ初読。
1作目『逆行の夏』を読んだところではあまりピンと来ていなかったのだが、3作目『バービーはなぜ殺される』あたりからじわじわとハマっていった。SFではあるが文学であり、今こことは異なる地平の世界において、人々は何を感じ、どうやって生き、何を愛するのかという愚直な筆致に心を惹かれる。それは『残像』や『PRESS ENTER ■』での地続きな地平もあれば、こことは全く別の地平もあり、短編間で飛躍する視野が楽しくもあった。
後半3作が特に白眉だった。『残像』で、再び訪れたときのコミュニティの変化、彼らはどこに行ってしまったのだろうという寂寥感。『PRESS~』のな -
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「まさかヴァーリイをご存知ない。なにも失くしたことがないならそれでいいけど。」
すみません、読んだことありませんでした。ということで、円城塔氏の帯文に煽られ購入した本書は、ジョン・ヴァーリイの短篇集「逆行の夏」。ヴァーリイといえば、1970~1980年代に活躍し、サイバーパンクの先駆け的存在として名高い作家…ということは知っていたのですが、読むのはこれが初めて。どんな作風なのかとワクワクしながら読み進めましたが、これがもうおもしろい。特に「残像」と「PRESS ENTER■」にやられました。前者のラストには、思わず「うぉぉい、まじか…」と言葉が漏れてしまう一方、後者は、極めて良質なSFスリラ -
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表題作はボーイ・ミーツ・ガールものというか家族ものというかで、まあ普通かな?という感想だったのだけど、収録作「残像」と「ブルー・シャンペン」がすごく良かった。特に女性にお勧めしたいSF小説。
「残像」。視聴覚障害者だけが暮らすのコミューンに辿り着いた作家志望の中年男の異文化コミュニケーション体験談という感じなんだけど、触覚に特化したそれはとても官能的で感動的。そしてラストで感じる恐怖、安堵、喪失感。なんで泣いてるのか自分でもよくわからなかった。
「ブルー・シャンペン」は脊髄損傷で肢体不自由となり、黄金で出来た外骨格のおかげで自由を取り戻しメディアスターとなった女性と愛を交わすお話。これも -
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特異な世界観と、どことなくセンチな余情が残るSF短編集。物語の雰囲気をつかむまでに苦戦した短編もあるにはあったのですが、その世界観や人間関係であったり、あるいは「ここでない世界」に対しての、切ない思いが印象的です。
収録作品は6編。
表題作『逆行の夏』はストーリーはもちろん、SFならではの描写が印象的。水銀の湖と洞窟が、太陽の光を照らし返す情景なんかは、美しさを感じるとともに、SFの想像力の豊かさも感じます。
ストーリーとしては、クローンの姉との再会であったり、身体の改造や性別の転換ですら、簡単に行える、という技術背景が描かれ、なかなかのハードSFらしい雰囲気。
そのため、ややとっつきに