森戸幸次のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
[その長き、深き苦悩]数々のイニシアティブや交渉が重ねられながらも、未だに解決に至っていないパレスチナ・イスラエル間のいわゆる中東和平問題。故アラファト議長を記者として間近で観察した著者が、その問題の根を探るとともに、今現在、何がパレスチナの地で起きているのかをつぶさに追った作品です。著者は、時事通信社ベイルート支局などで勤務された経験を持つ森戸幸次。
特にパレスチナ側からの視点で近年の情勢がコンパクトにまとめられており、非常に勉強になる一冊です。イスラエル・パレスチナ間の問題だけではなく、パレスチナ側の内部事情まで踏み込みながら、動向の移り変わりをまとめている点が特に有意義に感じられました。著者としてもこの問題について言及したいことはあると思うのですが、客観的な事実と主張の間に明確な一線を引いて筆が運ばれている点にも好感が持てます。
知れば知るほど解決が難しくなってしまう気がするというのが中東和平問題の特徴だと思うのですが、本書で紹介される内容を見るにつけ、改めてその印象を残念ながら強く持ってしまいました。なお、執筆時点から若干の情勢の変化がありますので、その点を考慮しながら読み進めていくのが良いのではないかと思います。
〜アラファトがどうしても一線を越えることができなかったのは、彼自身の指導者としての資質や思惑などに帰すべきものではなく、これらをはるかに越えた中東紛争の歴史的、宗教的、文化的な核心に触れる、「パレスチナのタブー」に呪縛されたためではないのだろうか。〜
中東全般についての情報もあわせてまとめられていて☆5つ