防衛庁が1993年に作成した極秘資料『K半島事態対処計画』をベースに、周辺事態法や有事法制関連法などを加味して、北朝鮮が暴発して第2次朝鮮戦争が起こる場合の自衛隊や米軍・韓国軍などの動きや、開戦前の動き(経済制裁、難民支援など)をシミュレーションした本。
計画では、防衛庁と公安との省庁間の縦割りの弊害や、国際的に日本海沿岸で経済制裁を発動した場合に起こる禁輸措置問題、戦争開戦前/開戦時になだれ込む難民の対応、ミサイル防衛(MD)、物資調達など(特に日米での軍事関係←憲法9条からの集団的自衛権の行使の禁止による制限)、現在の防衛法制の欠陥・不備が顕わになり、自衛隊が機能不全に陥り、自衛隊が国民や国土など防衛できないと結論づける内容になっている。
著者は経済制裁や集団的自衛権行使のための改憲の前に、北朝鮮や中国など、脅威となっている国とどのように付き合うか<戦略の明確化>が先決だと言う。別に北朝鮮との戦争に関わらず、突然のテロリズムのように、有事が発生した際にどのように対処するかを、自衛隊を認める人も認めない人も考えるべきだろう。
特に自衛隊を認めない人々は、「有事が起こらないように平和的に話し合いをするべきだ」とする予防外交だけでなく、「起こったときにどうするか」という対処外交戦略が十分ではないと思われている。また、北朝鮮に対して経済制裁を行うべきだと考える人は、経済制裁を発動した場合、本著が示しているような中長期的な問題をいかにして解決するかの戦略・構想を具体的に示す必要があるだろう。さもないと、経済制裁が効果的に機能しなくなるからだ。
ともかく、本著では、「<平和>を希求したければ<軍事>を知れ」とはまさにこのことだと感じることができた。ただ、本著では作戦名や兵器名などの軍事用語が多く出るので、大まかな地図や図表が欲しかった。それが残念だ。