杉山隆男のレビュー一覧
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抑制された筆致が余計に津波の凄絶さを物語る。あまりにも凄惨すぎて何度か本を閉じた。果敢に救助活動に立ち向かうも、そこに存在するのは遺体累々。過酷過ぎる現場で幾度も嗚咽しながらも、これ以上傷まぬよう、細心に遺体を運ぶ自衛隊員。
ひとりの自衛隊員が呟く。
◉「来るか来ないかわからない<いつか>のために備えている。その<いつか>が今日遭っても明日遭ってもいいように」
◉「自衛官は活躍しないまま退官することが一番いいんです」
震災から5年。あの衝撃や記憶が薄れていく中、今日も明日も「有事」に備え、激しい訓練に励む自衛隊員がいる。どうか、その訓練が徒労に終わることを祈るのみ。 -
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自衛隊員に地道な取材活動している著者ならではの、自衛隊員が新聞報道されていない個々の活躍を描いたノンフィクション作品。
安易な自衛隊批判の反証材料や大規模震災の描写資料としても価値がある作品。
圧巻なのは、通勤途上の自衛隊員達が津波に罹災しながら、生命の危機にある救助を要する人達へのリミットである72時間を意識し、出せうる限りの救助活動をする描写は、感動させる。
また、福島原発へ決死の冷却作業を冷静沈着な陸上自衛隊員の姿には、日頃の鍛錬や準備の重要性に気づかせてくれる。
この作品を読んで思ったのは、
将来、政治判断ミスで、国益がない国際紛争に巻き込まれ、自衛隊員を殉死させるのは、国家の重 -
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東日本大震災の際の自衛隊の働きは目覚しかったが、ニュースになったものばかりでなく、その陰にあった夥しい数の隊員の活躍やドラマが本書には汲み上げられている。家族の安否を気にしながら、その無事を確かめることもせず任務を遂行した隊員たちには頭が下がる。そういうことを本書は改めて思い起こさせてくれた。
本書のテーマとは関係ないのかもしれないが、震災時に世界中から賞賛された住民の秩序ある行動に裏で、火事場泥棒のような行為があったり、助け合いの精神を発揮した住民がいた一方で我が身第一の人もいたことが印象に残った。また、著者の大江健三郎に対する厳しい批判も印象的であった。 -
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登場する人間たちには全く共感できなかった。
多分ごく普通のありふれた人物像だったからかも。ウジウジした不倫関係とか、険悪な夫婦関係、ドラマのヒーローやヒロインのようにスパッとはいかないもんなんだろうな。
そんな中で、犬との関係、犬たちの描き方は、読んでるだけなのに手触りを感じることができそうなくらいだった。
猫派の私だが、犬もいいなと思った。
犬好きの人が読むと、「分かる!」と心踊る部分もあるだろうけど、犬にしろ猫にしろ、いずれ飼い主に待ち受ける試練はキツイな..。
で、結局、「妻の犬」は、「私と妻の犬」でありたかったのでは? 人間の場合と同じだと思った。 -
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じわじわ来る。
身勝手な中年男の退屈な話を延々と聞かされているような感覚だったのに、そのやるせない悲哀にいつの間にか同情すら覚える。
浮気というよりむしろ本気だった女性との関係が妻の知ることになり家を出た大学教授。
8年の時を経て経済的理由から妻の元に戻る男。
もちろん穏やかな日々が待ち受けるわけではなく、妻との関係も修復されないまま。
そんな夫婦の間の緩衝材の大きな役割を果たした二匹の犬。
犬を持ってくるのは反則だろう、とも思うが私小説と言うのだから仕方ない。
掛け値なしに愛おしい存在の犬達。
この描き方が抜群にうまい。
徹底して客観的に描くと恋人や妻と異なり、切ないまでの思いが犬に注が -
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小遣い稼ぎにカルチャー教室の講師をしている大学教授が、
そこの生徒と浮気をし、いい歳をして骨抜きになってしまう。
ほどなくして浮気がばれ、氷のような妻の態度に耐えきれず家を出るが、
その8年後経済的に立ち行かなくなり妻の元へ帰る。
このなんとも気まずい夫婦の間を取り持つように、尖った空気を和ませる妻の飼い犬。
どんよりとした不倫話の中、愛くるしい犬の存在がひときわ輝いている。
中途半端な態度を責められ、浮気相手に愛想を尽かされるがそれでも未練たっぷりで、
「メイの前の飼い主がもし彼女だったら…」なんて、
思春期の中学生のような妄想を膨らますオジサンに鼻白む。
それにひきかえ、妻に対しては罪悪 -
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三島由紀夫が市谷駐屯地で自決を遂げたのは、1970年11月25日。当時小学生だった私は、そのニュースを新聞やテレビで読んだり観たりしたと思うのだが、全くと言って良いほど記憶がない。その歳では、三島由紀夫の作品を読んだこともなかっただろうし、この事件の思想的な意味合い・背景に、興味を持ったり、あるいは、理解が出来る年齢ではなかったということである。ただ、それは自分の年齢だけが理由だったわけでもなさそうではある。この杉山隆男の本を読むにあたって、ウィキペディアで一応事件のことを調べてみたけれども、何だか全くよく分からない。ウィキペディアの簡単な説明だけで分かるはずがない、ということを置いておいても
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自衛隊、あるいは、自衛隊員を扱った「兵士」シリーズの第4作。杉山隆の興味も、マクロの自衛隊のあり方にも広がってきつつあるのかな、ということを感じた。日曜日の夕方に到着する便で日本に帰ってきました。木曜日までの予定での出張です。たまたま、ということなのかもしれませんが、夜、散歩していると天候の何と気持ちの良いこと。タイは雨期に入ったというのに、未だに時々40度近くまで気温があがり、更には湿度も高いという状態です。それに比べると、本当に、少なくとも今夜の東京の天候は最高でした。仕事で帰ってきているわけですが、東京の料理を堪能し(東京のレストランは、もちろんお店によりますが、本当においしい)、書店で
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「兵士に聞け」に続く、自衛隊を扱った杉山隆男の「兵士シリーズ」ノンフィクションの2冊目の本。この本では、航空自衛隊のパイロットを扱っている。かなり面白い。この本の内容とは直接の関係はないけれども、私の住んでいるバンコクで、昨日、非常事態宣言が発せられた。私の住んでいるあたりは特に何の危険も感じないのだけれども、それでも出かけるのは控えていて、アパートにいて本を読むとかDVDを見るくらいしかやることがなくて、けっこう退屈している。まぁ、日本で買ってきた本がかなり溜まっているので、それを読むにはちょうど良い機会かもしれない、と思っているけれども。
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ネタバレ壊れていた夫婦の関係にやってきたのは、ラブラドールのななだった。
おてんばで活発な性格のななの存在に、
冷え切った夫婦の関係に変化をもたらせしてくれたのも束の間
大学教授である私は、1人の女性と親密な関係になっているのを妻に知られ、家を出ることになったのは
ななが来てから2年余りのことだった。
8年後に経済的な理由で別居生活を解消して
久しぶりに戻った家で再会した10歳になったななは
すっかり老犬になり、わずか3ヶ月後に亡くなった。
ななの死後、保護犬だったメイを妻が引き取り
再び犬との日々を、過ごした時間。
耳が聴こえないメイが、どんな環境でどんな人に飼われていたのか追跡してよみが -
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ネタバレ昨今きな臭い状態が続いて、それが定常状態にもなりつつあるセンカクの問題ですが、実は今もまだ動いているんですよね。そのセンカクに、自衛隊の秘匿された特殊部隊が出動するという話。
いやぁ、本当に(ほぼ)“出動する”だけなんですよねぇ。途中までは、調子よく進んでいて、「初の戦闘が!」と言う雰囲気だったんですが、最後の最後で政府側が日和って・・・。
小説ならば、とことんまで突き詰めて、戦闘状態に陥ってしまう事を描いてしまえばよいのではないかと思うんですけどねぇ。でも、意外に、最後の最後で政府が日和ってしまうと言うのは、本当に起きそうな事なので、逆にリアリティがあり過ぎるかも。 -