田中優子のレビュー一覧
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江戸文化に深い興味があったわけではありませんが、ボランティアについて知りたいと思い読みました。(中島隆信著「障害者の経済学」で取り上げられていたため)
何でも経済的なサービスに落とし込んで金銭をやり取りする現代とは異なり、江戸時代は公共サービスもボランティアによって成り立っている部分が大きかった。どちらが優れているという結論を求めるものではないが、現代社会の行き詰まりや人間孤独に示唆を与える内容です。
しかしながら、江戸文化について、”連”の話を深めてと細かく記載している箇所などもありますが、そこはボランティアの話題との関連が薄く、江戸文化に深い興味が無ければ退屈です。
ほか、文が感情的になり -
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事例としてあげられている春画と、その解説は面白かったものの、タイトルとはなんかズレている気がしないでもない。
広く浅くという感じで、春画というものの変遷が語られている。
直接に表現せず、周辺を子細に描き込むことで対象をかきあらわすというのが日本のスタイルで、文学でも絵でもこの手法が使われているという論には、なるほどなあと思い当たるものを感じた。
また隠すこと=見せることという感覚は、昔からあるんだなとか思う。絶対領域的な発想やね。
覗きに対する論もちょっと面白い。覗くという行為は、そもそも笑われてしかるべき行為であるという。身も蓋もない言い方には笑ってしまった。
表紙の絵がすごく良い。春画だと -
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遊郭と言えば最近では人気アニメの舞台にもなる様な、江戸時代や明治時代の異質な雰囲気漂う場所に感じられる。遊郭は江戸時代にできたものではあるが、それ以前から遊女と呼ばれ、世の男性達と交わる事を生業とする女性は存在した。遊郭の起源は豊臣秀吉が各地に点在するその様な女性達の働く店と遊女達を一箇所に集めた事であるが、最初にできたのは天下の台所大阪。時代が徳川政権になると現在の東京である江戸、日本橋人形町辺りに大規模な遊郭が形成されていく。遊女・遊郭と言えば夜の床を共にするイメージが強く出るが、実際には当時の女性達の中でも高い教養と知識、三味線や唄など芸能、当然ながら筆をとり文章も書ける存在として、現代
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鬼滅の刃の放送でも「子供に説明できない」と、疎まれる遊郭。炭治郎のいる大正時代ならそうかもしれない。でも江戸時代には、文化人がこぞって足を運ぶ、格式高い社交場があったという。光と闇が混ざり合う、白黒つけられない存在で、いいじゃないか。
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■ Before(本の選定理由)
遊郭が江戸の文化発展に寄与したって?
何故そんなことを言えるのか、気になった。
■ 気づき
遊郭は、歌の文化、もてなしの文化、文芸にも影響を及ぼした。トップ層だけの話だが、そんな時代もあった。食事が芸術を言えるのと同様、欲求を昇華した匣が、遊郭という存在だったと思う。
■ Todo
印象だけで毛嫌いしない。でも -
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<目次>
はじめに
第1章 吉原遊郭の誕生
第2章 遊郭とはどのような場所か?
第3章 遊女はどんな人たちか?
第4章 男女の「色道」と吉原文化
第5章 吉原遊郭の三六五日
第6章 近代以降の吉原遊郭
終章 遊郭をどう語り継ぐべきか
<内容>
この時期に田中優子がなぜ?だったのだが、中世から江戸初期は、「遊女」は売春よりも芸能に重きがあり、様々な日本の芸能のルーツになっている(歌・楽器・踊り・工芸品・服・化粧など)ことだ。むろん、ジェンダー論から見ても必要な所はあるのだろう。ただこの本は興味本位ではなく、微に入り細に入りではなく、本筋をサーっと流す感じ。歴史上の -
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日本で本格的に春画研究が始まった90年代後半〜2001年にかけて書かれた春画論。
本論に入る前の「江戸はトランス・ジェンダー」という若衆論が、日本の男性アイドル観のようで面白かった。「男にとっても女にとっても、若衆は自分と同じ性をもっていて、しかも非現実的な存在だった。男にとっては女の生々しさがなく、女にとっては男のむさくるしさがない。この世の者ではないかのような浮遊した存在なのである」。肝心の春画紹介では若衆は一、二枚しか出てこず残念。
日本のポルノである春画は(というか浮世絵全体だと思うが)、服飾芸術と強く結びついてハイコンテクストな世界を作っていた。それは文学においても同じで、のちの鏡 -
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日曜朝のTV番組「サンデーモーニング」に準レギュラーとして登場している田中優子先生、の著作。
田中先生は法政大学の教授で、「江戸学」の権威。この4月からは、なんと総長になられるらしい。
めっぽう、和服がお似合いになる。
江戸学の人だものそりゃあね、と言ってしまえばそれまでだが、そもそも和服が似合う体型(超なで肩)だからこそ江戸を目指したのかも、なんてTVで拝見するたびに下世話な想像をしてしまう。
で、この本。春画考である。
あの方がこのような本を…と思うと下世話がさらに下ぶれしそうな雲行きになるが、いたって真面目な本である。
大英博物館で春画のワークショップが開催されたところから話は