廣末保のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
広末保 「芭蕉」 深川移住後の芭蕉の「非定住生活(旅と草庵生活)」と「専門俳人への自覚」に目付けした芭蕉論。それらが「俗」とコンタクトして、蕉風俳諧の風雅が完成したとする論調
前回読んだ伝記とつなげると、日本橋の定住時代(職業俳人、談林俳諧)においても有していた「俗」な側面が、深川移住後に 非定住生活や専門俳人の自覚と結びつき、風雅に転化したということになる
この本の印象的な指摘は「芭蕉の旅は 歌枕世界との同化ではなく、未知の自然や人事にふれることを重視していた」ということ。未知の自然や人事には 禅や「荘子」の影響も含まれ、それらが「俗」を風雅に転化させたと捉えた
蕉風俳諧の風雅が、秩序内の世界では 無用であるが故に 俳諧が自立性を持ち、不易流行につながるということだと思う
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Posted by ブクログ
西鶴は太宰治が惚れ込んで、『新釈諸国噺』を書いたことは知っていて、太宰治がそこまで言うんなら読んでみたいという気持ちもあったが、さんざん映画にもなった好色ものや、教科書には代表作と書かれている『世間胸算用』や『日本永代蔵』のイメージもあり、なんとはなしに積極的に読もうと思わずにきたのだが、この本は子ども向けにリライトされてるし、入門にちょうどいいかと読んでみた。
江戸時代に人気のあった作家だからもっとスッキリ面白いのかと思いきや、結構後味は悪い。
子ども向けとはいえ、「中学以上」とあるのも納得というか、中学生でも、この苦さはわかるまいという気もする。
特に引き込まれたのは表題作。兄の判兵衛が口論の末殺されたと義姉(兄の妻)から知らされた大川判右衛門は、息子と共に仇討ちに向かう。仇討ちは当時合法であり、武士たるものしたくなくてもせざるを得ないという面もあった。(このことをネタに筒井康隆が短編「ワイド仇討ち」を書いていて面白かったな。)判右衛門は若くない上健康にも不安があり、さらに殺した弥平次が殿のお気に入りであることは周知の事実であるため気が進まないのだが、義姉から頼まれたのだし断るわけにはいかない。息子は血気盛んな若者なので張り切っている。弥平次は殿の助けを得て、殺されないよう周到に準備している。判右衛門は、様々な策を練って、弥平次が隠れている屋敷の外壁にギリギリ通れる位の穴を開け、そこから息子と侵入するが、弥平次の雇った浪人たちに気づかれてしまう。盗人のふりをしながら必死で逃げて、もと来た穴から、まず息子が出るが、判右衛門が穴から頭を出したところで浪人たちに追いつかれ、足を掴まれてしまう。そこで判右衛門は自分の首を切るよう息子に仕草で合図する。捕まれば親子共々殺されるのだから、息子だけでも逃がし、頭がなければ誰であるか分からないからただの泥棒であったと思わせることもできる。息子は父の頭を切り落とし、それを抱えて逃げる。
この後、江戸時代らしい因縁話があるのだが、西鶴の力なのか、廣末保の力なのかは原文を読まないとわからないが、ラストシーンの鮮やかさとスピード感と余韻は、絶句するに十分。
大人でも、というか大人の方が、そのキレ味をよく味わえると思う。
「帰って来た男の話」も良かった。
原文は四百字詰め原稿用紙に四枚から七枚程度、それを三倍から九倍にしたとあとがきにあるので、解説的な文や、登場人物の心情などをかなり書き足してはあるのだろう。それを考えると、廣末保という人(西鶴の研究者。故人)の文章が上手いのだろうと思う。
どの物語も人間の浅ましさや愚かさが描かれており、こういうのがベストセラーになる江戸時代って面白いなと感じ入った。