村岡晋一のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
最初に言っておくが決して平易な・わかりやすい書ではない。哲学にあまり馴染みがない者にとっては、中身を読み砕くのに少々時間と知識を要するかと思う。しかし、それだけ苦労しても読み解く価値がある。
この書を通して得られる知識は、主に「ドイツ観念論」が出現した意味と、時代背景についてである。ドイツ観念論と呼ばれるものたち―カント、フィヒテ、シェリング、ヘーゲルの論―の中身についての解釈も得られるが、それ以上に大きいのはこれらを突き通す流れを得られることだと私は思う。他の哲学書では割と味気なく出現するように感じられるドイツ観念論に対し、ある種の熱狂や迸りを感じられるようになった。 -
Posted by ブクログ
ベンヤミン『パサージュ論』とのそもそもの出会いは、笠井潔の『群衆の悪魔―デュパン第四の事件』だ。
それは、パリの街を舞台に探偵オーギュスト・デュパン、ボードレール、バルザック、ブランキなどのビッグネームが活躍するミステリーで、その中でベンヤミンと『パサージュ論』について触れられていたのだ。
この巻は、先日、『悪の花』、『ボードレール パリの憂鬱』の二冊の詩集を読んでもあまりピンと来なかったボードレールがテーマの巻ということで、案の定取り付く島もない感じではあったが、かろうじて心に残った断章を引用しておきたい。
《一八四〇年ころのユゴーについて。「同じころ、彼は、人間が孤独を好む動物だとすれ -
Posted by ブクログ
ベンヤミン『パサージュ論』の最終巻だが、そもそも未完の書物なので完結編という訳ではない。
だが、この書物は、未完の断章形式であるということそのものによって、永く生き延びるのではないだろうか。
一つのストーリーによって、全ての断章が論理的に並べられ、不要なものは刈り込まれ、首尾一貫した一冊の書物としての完成をみていたとしたら、あるいはこの書物は、とっくに古びて打ち棄てられていたかも知れない。
断章であるが故に、その一つ一つが、様々な角度からの光線に、いつまでも七色に煌めいているのではないだろうか?/
ここでも、想起されるのはタイムラプス撮影で撮影した雲の映像だ。
丘の上に固定されたカメラから -
Posted by ブクログ
ベンヤミン(1892年〜1940年)は、ドイツの文芸批評家、哲学者、思想家、翻訳家、社会批評家。
代表作:『複製技術時代の芸術』、『写真小史』、『パサージュ論』。/
《1940年、ナチス・ドイツ軍はパリに侵攻した。亡命中のベンヤミンは膨大な未完草稿をジョルジュ・バタイユに託して、パリを脱出する。》
だが、アメリカへの脱出に失敗し、スペインの国境の町で服毒自殺を遂げた。/
『パサージュ論』の構成:
Ⅰ パリの原風景
Ⅱ ボードレールのパリ
Ⅲ 都市の遊歩者
Ⅳ 方法としてのユートピア
Ⅴ ブルジョワジーの夢
断章形式なので、驚くほど読みやすい。
僕でも読めると -