究極のペペロンチーノのために。
麺の太さ、長さ、麺を押し出すダイスの種類。
茹で時間、水の硬度、水の量、水から茹でるか、沸騰してからか、最近では水につけておくと言う技も有る。そして圧力鍋も。茹でる時の塩の種類、濃度も問題だ。
これらを解決する方法は実験と食べ比べだ。しかも二重盲検試験と言う方法で予め答えが分からない様にして家族4人で食べている。あまり美味しく無い時は如何なものかと思わぬでもないがそれで本が1冊かけるならやって見ても面白い。
第1章では小麦粉をたんぱく質とデンプンにわけ、それぞれを別々に茹でることでアルデンテとコシの違いをはっきりさせる。うどんの場合アルデンテにはならないがコシは有る。違いは使う小麦粉に含まれるたんぱく質の量。そして吸水率や表面から芯までの吸水率の勾配が歯ごたえに違いを生む。乾麵を使って生麺の様な歯ごたえを作る方法が見つかったのが楽しい。
第2章では塩の量、水1Lに対し塩の量が30gを超えると茹で上がりに明らかな差がではじめる。茹で上がりの含水率が減り、明らかに水を吸わなくなって行く。しかし25gも入れると味付けとしては塩辛すぎる、ではどうするか?お湯で洗う。基本的に茹で汁の塩味が勝負のペペロンチーノでは美味しい塩を使うのがいい。特ににがりを多く含む海塩は茹で上がりにも差が出る、お勧めは粟国の塩だ。
第3章ではパスタの種類、太さだけでなく表面の滑らかさも影響が大きい。テフロンダイスと高温乾燥のパスタは表面が均質であまり茹で時間に気を使わなくてもいいが、ブロンズダイスで低音乾燥のパスタは表面がザラザラしていて気を抜くと茹ですぎになる。そして第4章で究極の茹で方。
第5章が一番びっくりさせられるのだが、オリーブオイルは加熱すると酸化し味が落ちる。エクストラ・バージン・オリーブオイルは生の場合フルーツの様な複雑な香りと甘みがあるのに加熱するとこれが壊れてしまう。さてこれは難問だ。第6章ではニンニクと唐辛子の使い方。唐辛子も焦がしちゃいけない、苦くなるだけだ。そして残念なことにニンニクの香りは油にはほとんど移らない。揮発性が高いためキッチンに移っているのだった。こうして最終章で究極のペペロンチーノと時短ペペロンチーノの二つのレシピが完成した。
元々のパスタはおかゆの様になるまで煮込んでいて、今のアルデンテが生まれたのは19世紀のナポリだ。ナポリの露天で茹でたてのパスタにトマトソースとチーズで和え客は手づかみで食べていた。茹で時間を少し短くすれば回転が上がり、新しい食感も受け入れられた。と言うのはあながち妄想ではないかもしれない。カップ麺にお湯を注いで1分半で食べる様なものだ。ナポリ以上にせっかちなローマではピザは薄く、パスタの茹で上がりも更に硬めだそうだ。硬めのアルデンテ、ペペロンチーノは刺激的な都会の味。その割りにはせっかちな大阪のうどんはやわやわだが。やわやわを好む田舎だったのか?
土屋氏の新たなレシピはブログ「キッチン仮説」に更新されると言うことなので詳しいレシピを知りたい方はそちらを見てください。