竹内康浩のレビュー一覧
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ポーの短編「犯人はお前だ」には隠された謎がある。
それは作者から読者への挑戦状。
詳細に作品の内容を検証し、未解決事件を解明してゆく。
・まえがき
序章――「犯人はお前だ」全文訳
第一章 挑発 第二章 矛盾 第三章 未解決殺人事件
第四章 鏡像 第五章 もう一つの完全犯罪
第六章 デュパンの誕生
第七章 アナリシスとアナロジー
第八章 謎のカギをひねり戻す
・あとがき ・註解
・解説――メタ物語の楽しみ 巽 孝之
貸出延長してまで読み深めてしまいました。
前半は「犯人はお前だ」を徹底的に検証し、解釈を提示。
これが推理小説の如くで、ワクワクしながら読んだ。
ふーむ鏡像関係か。オリジナルとコピ -
Posted by ブクログ
ポーの短編「犯人はお前だ」への新解釈を提示する本。
「犯人はお前だ」はラストの死体が突如動き出し犯人を名指しするという仕掛け以外あまり見るところのない作品という認識を覆すもの。著者の竹内康浩は冒頭に提示されるオイディプスの名をはじめとした些細な違和感と作中の矛盾を検証し、作中明示的に描かれることのない未解決のままにされた殺人事件の謎を解き明かしていくという文芸評論なのにほとんどミステリ小説のような内容。読んでいて子供の頃読んだ高木彬光の「成吉思汗の秘密」のようなエキサイティングかつ説得力のある検証とほんまかいなという胡散臭さがない交ぜになった感覚を思い出した。
後半は、前半の「犯人はお前だ」 -
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『しかし、たいていの人は、古池がどこかの古寺にでもあって、その周囲にうっそうとした木々が生えている景色などを思い浮かべてしまう。そして、その静謐な雰囲気のなかで蛙が生んだ水の音が聞こえてくる、と想像する。つまりは、蛙の音は古池の周囲に広がる静寂を際立たせる仕掛けのようなものだと見なしてしまう。だが、本当の主役は蛙の音であって、古池の静けさではない。人が主客を取り違えてしまうのは、推論による分析をするからだ。つまりは、「意識の尺度」でこの句を測ろうとするからだ。そう鈴木は断じる。むしろ、この句の本当の狙いは、そんな意識の尺度自体を破壊することにある。人を意識の外側へ、思考不能の領域へ、あるいは無
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小説を読むとはこんなにもスリリングな体験だったのか!、という思いを与えてくれる驚愕の書。ただでさえ謎が多い作家、サリンジャーの傑作「バナナフィッシュにうってつけの日」を主軸に、グラス家の謎、そしてサリンジャー自体の謎に迫る文学評論。
短編集『ナイン・ストーリーズ』の冒頭を飾る「バナナフィッシュにうってつけの日」では、グラス家の長男でシーモアが動機不明の拳銃自殺を遂げる。この長男の自殺は残る兄妹たちに大きな影を投げかけ、続く『フラニーとゾーイ』などの様々な作品を貫く1つのモチーフとなっている。
しかし、本当にシーモアは自殺だったのか?、という問から本書は始まる。この謎を解き明かすために本書で -
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エドガー・アラン・ポーの短編『犯人はお前だ』の構造を分析、隠された謎を解く。後半はデュパンシリーズや『アッシャー家の崩壊』、『黒猫』など他の有名作品にも応用していく。
『犯人はお前だ』は初めて読んだが、よくある短編集の中の一つとして読んでいたら、「うーん、推理やトリックは何だか粗くてよく分からないし、これはイマイチ刺さらなかったなあ……」で終わってたことだろう。
「オリジナル(実像)とコピー(虚像)という鏡像関係を見出し、一つの事象を深掘りするのではなく、水平方向に広がっている別の事象に目を向けることで、相互の二重構造、反転構造という関係性を明らかにする」という分析手法で著者が小説の構造を明 -
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ネタバレポーは子供向けの「黒猫」や「落とし穴と振り子」を読んだことがあったくらいで、「犯人はお前だ」は完全に未読だった。のだが、それでもいや明らかに描写が変っていうか死体だろ! 誰もテキストで指摘してこなかったってなんで!? と大いに困惑させられた。
この本はその「未解決殺人事件」の話を下敷きに、ポーの作品の対比構造をわかりやすく描き出してくれていて、大変おもしろかった。論文については査読で牽強付会ともいわれたようだが、素人目には十分な説得力があるように思える。いやそれにしたって、テーブルに倒れて自白しだすのも急に飛び上がって死ぬのも明らかにおかしいだろ。 -
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『ナイン・ストーリーズ』の巻頭を飾る短篇「バナナフィッシュにうってつけの日」は、『ライ麦畑でつかまえて』についで有名なサリンジャー作品だろう。そのラストシーンは主人公の謎めいた死で終わる。これは普通、自殺と解釈される。だが、もし自殺ではなかったとしたら?
たしかに注意深く読んでみると、途中から一人称が固有名詞ではなくなり、若い男(野崎訳では「青年」)となっている。もしサリンジャーが意図的にそのように書いたのだとすれば、死んだのは誰なのか。自殺ではなく他殺なのか。だとすれば、誰が誰を殺したのか。ここから著者の壮大な旅が始まる。
本書はあまり一般向けとは言いがたい。本というより論文である。主題その -
購入済み
読書の楽しみが増す
「“父殺し”という観点で読み直してみると、秘められたトウェインの驚きの過去が露わとなる―」・・・・・・逆じゃないでしょうか?トウェインが経験したことを踏まえた上で、『ハックルベリーフィンの冒険』や前後に書かれた作品を精読すると、”父殺し”という隠れ主題が見えてきます、っていう感じだと思います。よくこれだけ読み込むことができるものだと感心します。(たまに、え~って思うこともありますが)こういう読み方があったんだ、とか、スルーしてたなあ、って気づかされるのは楽しいものです。『サリンジャー』もいづれ購入します。