プルーストのレビュー一覧

  • 失われた時を求めて 6~第三篇「ゲルマントのほうII」~

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    ドレフュス事件によって分断されてゆくヴィルパリジ夫人のサロンの様子と、死にゆく祖母の様子が描かれる。/

    祖母の最期を描くこの巻は、老いた母を抱える身には、この物語の胸突き八丁かも知れない。
    どうしてもプルーストが描く祖母の末期の様子が、母の姿と重なって見えてしまうのだ。
    こんなことは四年前に吉川一義訳を読んだ時は思いもしなかった。
    プルーストのこの物語は、流れる雲の位置によってその陰影を変化させてゆく山の端の木々の葉叢のように、読み手のその時々の心のありようによって七色に色彩を変えてゆくのだ。/


    ヴィルパリジ夫人のサロンにおけるスノビズムにみちた会話の相克を読んでいると、ナタリー・サロー

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    2022年10月20日
  • 失われた時を求めて 3~第二篇「花咲く乙女たちのかげにI」~

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    ネタバレ

    語り手の初恋、スワンの娘・ジルベルトとの恋についてあれこれと語り手が考えを巡らせるが、ジルベルト自身の印象は薄く、スワン一家、特に第一部のタイトル「スワン夫人のまわりで」が最初から最後まで通底している印象の第3巻。

    ジルベルトは語り手の中のこうあってほしいと思う理想のジルベルトが描かれ、スワン夫人(オデット)については、服装、趣味、会話が事細かに描かれている。

    話の筋としては単純なのに、その情景も空気も心情も丸ごと作品に閉じ込められている。

    流麗な文体の中に語り手の若さが出ていて(憧れの作家に会いその風貌に落胆したり、相続した壺を売って「毎日ジルベルトに花を贈ることができる」とウキウキす

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    2022年05月18日
  • 失われた時を求めて 2~第一篇「スワン家のほうへII」~

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    ネタバレ

    ~P475「スワンの恋」、P476~「土地の名・名」という475頁まで語り手の私ではなくスワン(と高級娼婦オデット)の恋が綴られている。

    スワンの恋情のすべてが綴られている、恋に落ち、夢中になり、嫉妬し、そして唐突に心が変わる。人の気持ちだけで475頁!普段読んでいる小説だと考えられないボリューム。スワンがあるグループから冷遇されるぐらいで(少し「浮気してる?」っぽい描写はあるものの)大きな出来事は起こらないのにこれだけ書けるってプルーストすごいなぁ。恋情すべてを書くとこの頁数になるのか…。

    次のパートは語り手(私)の恋。スワンが大人の恋、こちらは青年の恋で躍動感に溢れている。自分からじゃ

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    2021年11月16日
  • 失われた時を求めて 1~第一篇「スワン家のほうへI」~

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    ネタバレ

    私(語り手)の幼少期から物語が始まり、美しい風景描写、当時の貴族社会の人間模様、それらが語り手の世界のあちこちに漂っていてそれが順序関係なく語られていきます。

    形式に慣れるのに時間がかかりました(´∀`)文章一つ一つは長いものの訳文は読みやすいです。訳者さんが粉骨砕身されたことがうかがえます。

    内容を追っていくのではなく、内容に揺蕩うように読む、が正解なのかな。優雅な読書。

    1つの出来事が起こると語り手はそこからどんどん自分の中の想い出を語っていきますが、私たちが読書中に「ああ、こんなこと私にもあったな。」と想起することに似ている気がします。

    有名なマドレーヌのくだりはP116~P12

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    2021年10月24日
  • 失われた時を求めて 2~第一篇「スワン家のほうへII」~

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    小説の中の恋愛というと、ロマンティックでドラマティックで…という先入観にも似たイメージがあり、実際そうした小説も多い。フランス小説となればなおさら。けれど、この『失われた時を求めて』第二部「スワンの恋」で描写されるスワン氏の恋愛は、とことんリアルである。恋の始まり、思いが通じて盛り上がる蜜月期間、相手の心が遠ざかるにつれ深まる苦悩。それらの経過すべてが、幻想を相手にした思い込み、独り相撲のような空回りとして淡々と描かれ、容赦のないその筆致は可笑しくも残酷なほど。
    特別な思いを持っていなかった時にふと感じた、好んでいた絵画の人物像に似た一瞬の印象。そして当然会えると思っていた時に会えなかったこと

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    2021年10月22日
  • 失われた時を求めて 3~第二篇「花咲く乙女たちのかげにI」~

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    恋についてプルーストの触れ方は私にとって異質で興味深い。ジルベルト、アルベルチーヌの2人への思いが違ってみえる。恋をなくしても、悲愴ではない。プルーストの紡ぎだす連綿とした、章立てしてない文は読みにくくもあるが、「私」の語りは慣れてくると心地いい。 私も若いころ「乙女たち」とひとときを会話したり、散歩して過ごしたかった。 また絵画、訳者撮影の建築物、ネットへの参照など、とても親切で多くの注は読書をより深く楽しめた。

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    2019年03月20日
  • 失われた時を求めて 1~第一篇「スワン家のほうへI」~

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    恋人というのは、信じているさなかでも疑ってしまうものであり、その心を我がものにすることなど決してできない。

    心理学の教科書には必ず、マドレーヌの香りで記憶がよみがえる箇所について言及される本書。一度は読んでみたく気軽に手に取ってしまったのだが、14巻まであるということで長い旅路になりそうだ。それにしても語りが長い。カラマーゾフもお喋りだと感じたが、こちらの方が勝ちかもしれない。そしていつの間にか違う話題になっている。普通なら結論のない話にイライラしてしまうところだが、そこは20世紀を代表する小説。いつの間にか引き込まれていってしまう。そして気づいたら同性愛の話になっていた!訳はすらすら読むこ

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    2015年07月17日
  • 失われた時を求めて 1~第一篇「スワン家のほうへI」~

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    初のプルースト体験。色々な出版社から、色々な訳で出てるので、さてどの訳で読もうかなー、って思ったのですが、この光文社古典新訳文庫の訳が評判良さげやったので、この訳に決めて読んでみました。
    かなり読むのに苦労するって話しでしたが、意外とスラスラ読めました。物語らしい物語はないんだけど、情景の浮かぶ文章が美しかったです。
    まだまだ、先は長いのでぼちぼちゆっくり読みたいです。

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    2012年09月02日
  • 失われた時を求めて 1~第一篇「スワン家のほうへI」~

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    教科書とか問題集みたいな実用本ならともかく、一般小説で「挑戦」もないとは、思いますが…

    いわゆる「読みやすい」作品ばかりがもてはやされて、小説は、効率よくあらすじを把握して消化するものという感が強い昨今、こういう作品に「挑戦」してみるのもいいかと。

    訳者が、あらすじを追おうとするな、と繰り返し説くのも、肯けるところ。

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    2014年08月10日
  • 失われた時を求めて 1~第一篇「スワン家のほうへI」~

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    この豊饒な表現力を持った文章を存分に感じとるにはまだまだ力不足でした;;それでも空気の匂いが感じられるのが凄い。圧倒されました。

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    2011年02月01日
  • 失われた時を求めて 1~第一篇「スワン家のほうへI」~

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    訳者の考えも、訳も気に入りました。中には写真とその説明もあり、楽しい。注で読むときに 本来必要でないものをそぎおとし、初めて同時代人が読むように 読んでほしいとは、利に敵っている。一般読者は研究者ではないのだから。注が、そのページにあるのも私は好きだ。 新訳 の意味がよくわかる久しぶりの本だった。

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    2010年12月20日
  • 失われた時を求めて 1~第一篇「スワン家のほうへI」~

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    二度目の挑戦。他社の文庫で、一揃え持っていますが、それは最初で挫折しました。訳文が良いのかな。すんなり話が入ってきます。いわゆるまったりした感じで、話が進んでいきます。本編の語り手の私の子供時代の出来事がつづられて行きます。登場人物も少ないのですが、伯父の家でであったさる女性との出会いが、女性を意識した少年の姿がリアルに描かれている。失われた時を求めてを、こんなに楽しく読めるとは思っていませんでした。続巻の発売が楽しみです。

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    2010年12月09日
  • 失われた時を求めて 5~第三篇「ゲルマントのほうI」~

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    しばらく休んでいたけど、また『失われた時を求めて』を読み始めました。
    「ゲルマントのほう」の第1巻は光文社の翻訳で。
    久しぶりに読んだということもあると思うけど、この「ゲルマントのほうへ」は、今まで読んだ、「スワン家のほうへ」「花咲く乙女たちのかげに」より数段難しい気がしました。
    『1Q84』で、青豆がこの巻で読むのを挫折したというのもなんとなく頷けます。それでもやっぱり、『失われた時を求めて』を読んでいる時間って、他の本を読んでいるときの時間の流れかたと全然違う気がして、個人的にはすごく好きです。なんというか、今この時が止まって、主人公と一緒に色々な時間を思い出しているような。一瞬でもあるし

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    2024年05月20日
  • 失われた時を求めて 3~第二篇「花咲く乙女たちのかげにI」~

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    第二篇の上巻は光文社で。
    今まで自分にぴったりの訳を追い求めてちくま文庫、岩波文庫、集英社文庫…と色々読んできたけれどやっぱり古典新訳に関してはさすが安心と信頼の光文社、読みやすかった。
    個人的な読みやすさ指標としては、
    集英社>光文社>岩波>>>>ちくまという感じかな。(左に行くほど読みやすい)
    そんなことは置いといて、相変わらず主人公のジルベルト愛が溢れてたなあ。
    と同時にちょいちょい挟まれる芸術への批評も読んでいて面白かった。

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    2023年05月20日
  • 失われた時を求めて 1~第一篇「スワン家のほうへI」~

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    ドストエフスキー五大長篇を読み終えた今、「世界一長い小説」に挑戦して見るのは今ではないか?と思って読み始めたものの、読み難い。。

    そして、光文社古典新訳文庫は6巻で中断したまま、完訳するのかよく分からないと知って、このまま読み進めたものか、悩み始めた。

    マドレーヌを紅茶に浸して一口食べた瞬間から、幼少期のフラッシュバックが始まり、430頁後に、回想終了、という驚きの展開。

    回想中は、場面は飛びまくり、壮大なまだら模様の上、ひとつひとつの描写はとても細かく、比喩の巧みさは世評の通り。ストーリーは特にない、といって良いのだろうか。

    義妹曰く、2巻が一番ストーリー性はある、とのことなので、ま

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    2023年05月13日
  • 失われた時を求めて 3~第二篇「花咲く乙女たちのかげにI」~

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    スワンも語り手である私もすごく一方的な自分勝手な片思いしてる印象を受けたけど、スワンのがまだなんとなく読んでて楽しかった。どっちもなよなよしてたけど。それに語り手はジルベルトのことを好きなはずなのにオデットに魅了されすぎじゃない。

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    2022年11月14日
  • 失われた時を求めて 2~第一篇「スワン家のほうへII」~

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    スワンがもうドン引きするくらい必死なのが痛ましくてでも気持ち悪くてぞぞっとするし周りの人たちの会話とか性格もトンチンカンというかアホらしいのが呆れる内容なんだけどたぶん皮肉なんだろうなって思ったら余計面白くなっちゃったフランスの漱石じゃん
    1巻よりだいぶ読み慣れてきた感じがする
    1巻は読むのに必死で内容が右から左だったから今巻巻の場面索引読んでてそういえばこんなこともあったなってなった(特に、語り手の「私」がパリの叔父さんのとこでオデットに会ったシーン)
    高遠さんの注釈がめちゃくちゃ細かくて凄いなって思う

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    2022年10月30日
  • 失われた時を求めて 1~第一篇「スワン家のほうへI」~

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    高遠さんの訳と読書感のおかげで読めた
    田舎(コンブレー)の風景がコロコロと頭の中で描かれたような気がする(特に植物)
    お母さんのおやすみへの主人公の執着がいじらしくもあり恐くもあった

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    2022年10月12日
  • 失われた時を求めて 3~第二篇「花咲く乙女たちのかげにI」~

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    読み始めは、「かなり読みやすくなってきたかも♪」と思ったのに結局すごい時間かかってしまった…社交界のなんちゃらとか当時の文化とかこの本を楽しむポイントはたくさんあるんだろうけど、スワンの恋からの流れで、やっぱり恋って病気なんだなぁ(´・_・`)と思う一冊でした…

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    2017年04月11日
  • 失われた時を求めて 1~第一篇「スワン家のほうへI」~

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    『スワン家のほうへ』のまとめての感想を記す。集英社抄訳版読んだことがあるが、そのせいか難しい言葉も少なく、読みにくいとは感じなかった。訳者の言葉通りで、話の筋をたどるのが目的だとつまらなく感じるだろう。1日200ページのペースで読んだ。美術、音楽についての造詣が深く、小説とは思えなかったりする。伏線はもうどうでもいい。訳者が敢えて旧字体にこだわった漢字の選別基準が良くわからない。注といい、訳者のこだわりは相当なものである。なにはともあれ、4巻の刊行が待たれる。

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    2014年12月19日