石田勇治のレビュー一覧
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ネタバレヒトラーが政権を取りやがて戦争とホロコーストへと進む、ドイツで起こったことの全体の流れを知ることができ、読みやすかった。
どうして国民の支持を得ることができたのか、どんな政策を掲げてどう独裁者となったのか、本書を読むことで疑問点はある程度解消された。入門書のような感じだろうか。ここで生まれた問いは、また別の書籍で詳細を読みたいと思う。
ヒトラーが排除すると決めた人々が連行されたあと、「治安が良くなった」と国民からは好評だったという話がグロテスクだった。
ヒトラーの暴走を止められるポイントが歴史上にいくつかあったのだろうか。ヒトラーの政治思想にはオリジナリティが見出せないと書かれていたが、同様の -
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怠惰で自堕落だったヒトラーがどのように世に出てきたのか、そしてどうやって総統(それまでの大統領職と首相職を統合した地位)という独裁者の地位を手に入れたのか。本書は、ヒトラーとナチ党を中心に追っていくドイツ近代史です。学校の勉強だけでは隙間だらけだったその知識の空隙を埋めてくれる内容でした。
前半、ヒトラーが徐々に実力や名声を得ていくところ。ヒトラーやナチスのようなとんでもない悪行をやった人たちであっても、その躍進していくさまには面白みを感じてしまうのでした。へこたれず、ときに無鉄砲で、暴力に訴えて、なのだけど、活きたエネルギーが渦巻いているんですよ。ただやっぱり、そこにある危険な香りとして、 -
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ヒトラーについての研究書。上下巻で1500頁にもなる大作で、出典も明確である。ヒトラーに対する批判的コメントも多いが分析は精緻で参考となる。時間の経過に沿って書かれているため、ヒトラーがどのように感じ行動してきたのかを実感できる。勉強になった。
「疑念を抱いていた者の多くも、予想をはるかに超える規模で国内が再建され、対外的にもドイツの強さが再び主張されたことで、ナチ体制の支持に転じた。めざましい国内の再建や対外的な威信回復は想像を超えるもので、失われた国民的誇りの多くを取り戻し、第一次大戦後に残された屈辱感を癒したのである。大多数の国民は、権威主義を天の恵みととらえ、政治的な逸脱者、好まれな -
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世界的なナチズム研究者である英国人教授による、ヒトラーの伝記。近年になって公開された新たな資料を含め、膨大な資料に基づく客観的な研究成果となっている。ただし、ヒトラーの能力や功績を過小評価しているようにみえる。また、反ユダヤ施策について、ヒトラーは明確に推し進めていないにもかかわらず、過度にヒトラーの責任に結びつけようとしているように感じる。経済政策の適否についての考察も薄い。下巻に期待したい。
「いかにしてヒトラーが権力を絶対的なものとし、かつて一兵卒でしかなかった者の下す命令に陸軍元帥を含む将官たちが何の疑問も持たずに従うようになったのか、高い技術を持つ「専門家」やあらゆる領域の優れた人々 -
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★★★2021年10月★★★
なんの特色もない人だったヒトラーが、何故あのような災禍を人類にもたらすことになったのか。そういうことが知りたくてこの本を手に取った。
第一次世界大戦の敗戦から丁寧に描かれている。
印象に残ったフレーズを以下に記す。
P51 宣伝は永久に大衆だけに向けられるべきである!
P130 ヒトラーを首相にするといってもナチ党の独裁を認めるわけではない。
P153 ヒトラーがすべてを賭けて手に入れたかったもの、それは授権法だった。(全権委任法)
よく言われるようにヒトラーは民主主義から誕生した。ワイマール憲法は運用によっては独裁を認める内容だったとか。第一次世界大 -
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第一次大戦後の混乱期のドイツで、ヒトラーが権力を握るに至るまでの過程が詳細に書かれている。かつての暴力革命路線を変更し、選挙政治で政権獲得を目指す方向へ舵を切ったナチスが、様々な偶然の要素が重なって政権を取るに至る。ひとたび実権を握ると、全権委任法を成立させて立法機能を自らの手中に収め、反対勢力に対しては突撃隊・親衛隊による物理的な実力行使を徹底する。長引く不況と失業問題を解決し国民からの支持を確実なものにすると(ヒトラーの手腕というわけではなく、政権を握った時点ではすでに景気回復期に入っていた点、徴兵制の復活により失業者を兵隊として吸収できた点、女性の就業を制限することで労働供給を減少させた
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ナチ党・ヒトラーが政権を奪取し、ユダヤ人迫害、ヨーロッパ大戦に至るまでの経緯を説明している。
ヒトラーは合法的に政権を獲得したと言われることがあるが、その背景には姑息な手段を用いて他党を弾圧や大統領令の発令が大きく左右していることから、学問的な帰結としては「合法的」という表現は正確な解釈ではない。
また失業率を下げたり、アウトバーン建設に一役買ったとも言われるが、結局はナチズムを推進していくための手段に過ぎず、国民のための施策という解釈もミスリーディング。
先日、ナチスを肯定した趣旨のツイートが炎上していたが、この本を読めば肯定できる要素は何一つないことが分かる。 -
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ヒトラー、ナチスに関して勉強できる映画あったら誰か教えてください。
・善悪二項対立の危険さ
・利益を享受しているが故に上記の危険さを見て見ぬ振りをすること
ヒトラーのやったこととは程度は違えど、現代にも通ずるものがあると思った。
・善悪二項対立の危険さ
ヒトラーは様々な地域、階層に向けて、すべての悪の根源はユダヤ人と語ることですべての社会階層に支持された。
現代で例えると「諸悪の根源は安倍政権」のような意見、トランプの諸主張、IT関連だとオンプレが悪でクラウドが善、みたいな。
そんな世の中簡単じゃないよね?
二項対立は物事を簡単に捉えた気になれる。
簡単だからこそ、誰もが共通認識として持 -
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やっと読み終わった。時間掛かった。しかしこの本分厚すぎる。自立して立ってびくともしない。でもその分内容が充実している。今どこにいるのか分からなくなるが。ヒトラーだけが悪いのか、何でヒトラーはああなったのか、周りは止められなかったのか、って自問しながら書いているんだろう。何回も止まる可能性がある出来事はあったが止まらなかった。それもまた運命なのかな。日本もそうだけど、この時代を理解するには共産主義がどのくらい社会の雰囲気として重要性を持ったか、当時の空気を理解しないと駄目だなと再確認。後はユダヤ人の迫害。これもその時の空気もあるんだろうが、ヒトラー的には分かり易いスケープゴートであり、そこまで理
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第一次大戦でドイツは敗れ、多大な賠償金を課せられるに至った。ソ連との対立、共産主義勢力に対する恐れもあった。
その中にあって、最初は極右政党として、疎んじられ、ナチスは軽く見られていた。
その小さな一政党、ヒトラーという小柄だが、言うことだけは荒唐無稽な大ボラという男が、権力の階段を少しずつ登っていく。
そこに見えてくるのは、ドイツがヒトラーの独裁を歓迎してナチス・ドイツが生まれたわけではないという事。
彼は表向きの主義主張は時流に合わせて微調整をし、党内部の粛清さえも行なった。
強引に政権を奪取するのではなく、そうならざるを得ない状況を作り出し、そこに乗っかるのもうまかった。
大統領制では、 -
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原著は1998年出版で、2016年に日本語訳が出版されたヒトラーについての研究書。膨大な資料をもとに、ヒトラーの生涯を時系列で追っていく伝記的な資料になっています。伝記というと個人にフォーカスを当て基本的には偉業をたたえるようなイメージりますが、本書はもちろん「偉業」はたたえないし、著者も序文で記載しているように「本書を執筆するあいだ私をとらえて離さなかったのは、1933年から45年にかけてドイツの命運をその手に握ったヒトラーという人物の特異な性格ではなく、むしろヒトラーなるものがいかに可能になったかという問い」をベースに、全編にわたって記述されています。
ヒトラーが導いた最悪の事態は、ヒトラ -
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小政党の一つに過ぎなかったナチスがいかに権限を拡大して独裁国家を作り上げたかを解説し、日本で審議されている緊急事態条項のナチスの手口との類似点、危険性に言及。この分野は門外漢なのでとにかく難しかった。憲法学者は言葉のチョイスに厳格だなあ。一応理解した中で印象深かったことをメモ。
・ユダヤ人に職を奪われたと感じている貧困アーリアがナチスを支持した構図はトランプ政権に通じるものがあるなあ。
・ドイツでは大統領が緊急事態を規定できる仕組みになっていたことが濫用を招き、いつのまにか主権独裁になっていたと。
・日本の緊急事態条項に関して。緊急事態の判断は内閣総理大臣に委ねられていて緩い。
・そもそも大き -
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ネタバレ「わからない」ことがわかった。
『暗幕のゲルニカ』を読んで、なんでこんな悲惨な状況になってしまったんだ?ナチス、ヒトラーって何だ?と、その歴史や背景に興味を持ったことがきっかけでこの本を読んでみた。
どのようにしてヒトラーが独裁政権を取ったのか、どのようにしてユダヤ人迫害が行われたのか、順を追って細かく書かれていた。
実際に起こったことが羅列されていると、なんだか自然の流れでそうなってしまったのかなと思ってしまう。
反ナチス側の人たちの動きなどは書ききれなかったと著者が“おわりに”に書いていたように、反対側の人たちの動きも知りたくなった。
映画でよく観るのは反対側の人たちだからそういう