中村明一のレビュー一覧
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ネタバレ虚無僧尺八の海童道祖の呼吸法「密息」。それは座禅の呼吸法でもあり、床に座る日本人が古来から行っていた呼吸法だとの気づき。
腰を落とし骨盤を後ろに倒すことで、お腹に息を入れやすくする。
息を吸うときも吐くときも腹をやや張り出したまま。それは和服の帯に腹を張るのと同じ動作。
この密息の呼吸法で、腰が据わり、身体が安定することによって、視点のフォーカスイン/アウトや倍音による音楽の従構造の音量と音質の重みなど、日本人独特の感性が説明できるとする。
腹式呼吸ではなく、腹を張ったまま息を吐きだす呼吸法は、馴染みがあるというよりは、やはり新鮮だが、個人的には水泳に使えそうだと感じた。
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ネタバレ筆者は尺八奏者
■密息
尺八に伝わる呼吸方法
日本の身体意識・身体文化に密接に結びついている
尺八の音に魅せられて海外の音楽大学、大学院へ進学
胸式呼吸、腹式呼吸、逆腹式呼吸、循環呼吸とマスターするも、
尺八の演奏にはどの呼吸法もそぐわない
尺八は菅内の容量が非常に大きく、
世界的にも稀なほど大量の息が必要な楽器
虚無僧寺にて教わった奏法が密息
秘密の技法という意味ではなく、
「息をひそめる」、息を自他にわからせないようにするという意味
■密息の特徴
・大量に息が吸える
骨盤を後ろに倒すほど、吸える量が増える
・一瞬で吸える
鼻から吸うのが楽で、しかも音もなくできる
・強い安定感 -
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虚無僧尺八奏者がその研究で見付け出した、日本古来からの「呼吸法」を公開している。
中村さんはなかなかの博学者で、その知識が難しい言葉や名前と共にちりばめられている。内容は「密息」の紹介から始まって、日本の文化の特異性を密息と言う呼吸法から紐解いていく。
少しこじつけっぽくて無理を感じる所もなくはないけれど、なかなかユニークは発想があって面白い。
腹式呼吸と胸式呼吸があることは誰でも知っているけれど、少し不自然にすら思える密息なる呼吸法があって、それが日本独自の物だということだ。
読んでいる内に、密息を練習してどれだけ自分が変わるものか見届けたいという好奇心が沸いてきた。 -
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ちょっと啓発本的な軽めのタイトルだけど、中身はバークレーも出た日本の伝統的尺八奏者である著者による、呼吸法から導かれる日本人の身体論であり文化論。骨盤の倒し方に長年伝えられてきた日本人の姿勢があり、呼吸法があり、それは床座の生活文化から培われてきたという至極あたりまえの指摘が、すうーっと腑に落ちる。
明治以後100数十年を経て生活様式は洋式化したとしても、身体はそう簡単に変わるものではなく(でもやはり室内で靴は脱ぐのだし、床に座るのだし)、常に「過渡期」なんだなと。文句なく面白い。吹きもの楽器をやっている人は、是非読んでみると面白いと思う。
でも、そういう呼吸法をトレーニングしようなんて思 -
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「密息」・・・初めて聞く言葉です。
尺八の演奏をするときの呼吸法が、この「密息」です。
腰を落として骨盤を後ろに倒して、腹をやや張り出したままどこにも力を入れず、横隔膜だけを上下させて深く呼吸をする。
これが「密息」という呼吸法です。
かつて畳に座り、帯を腰に締めていた日本人は、ごく自然にこの呼吸法を身につけていたそうですが、近代の生活様式の中で、いつの間にか忘れ去られてしまいました。
尺八奏者の筆者は、虚無僧尺八の伝承者を訪ねる中で、この「密息」に気づき、さらに様々な日本文化とのつながりにも言及していきます。
忘れられた「息の文化」を回復する過程で、日本人の身体や日本文化を見る新しい視点を発 -
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もともとこの本を読むきっかけになったのは、内田樹氏の「武道的思考」で紹介されていたからでした。
内田氏の本のなかでは「呼吸していることが外形的にはわからない呼吸法」という説明がついていました。套路をやっているときでも、動きに先立って肩がひょこっと上に動いてしまうことが良くあります。特に師匠に個人レッスンをつけていただいているとき、指摘されたところに集中をしていて、身体が緊張してくるとよく起こります。すかさず師匠から肩が動いた、と注意されます。なのでほかの人から見ていていつ息を吸ったのかわからない呼吸というのはできたらいいな、と単純に思いました。
「密息」は、吸うときも吐くときも腹を張り出し -
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著者は尺八奏者。「密息」とは「秘密の息」ではなくて「密やかな息」のことらしい。要は尺八の演奏に際して、より多くの息を使えるようになるためにはどうしたらいいか、それを追求する過程で辿り着いたひとつの答えだそうである。
しかし、それはむしろ日本伝統の呼吸法であるという。そもそも立ち居振る舞い(ナンバ)を始め、建築、絵画(マンガも含む)、舞台(能・映画)、料理(和食)、禅、俳句、茶道など、古今日本の文化は密息あってのものだという。
どういうことか。
方法論としては、身体の上下動が生じない呼吸である。すなわち視点の水平が定まる。それにより全体(従構造、ディテール)に意識が向き始め、主構造が隠れる -
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日本の身体技法に興味があって、手に取った。
いわく、伝統的な日本の姿勢は骨盤が傾いていた。
いわく、腰を落とし、すり足で歩いていた。
いわく、からだにひねりやねじりがなく、反動を使って動作しない…。
本書では、特に呼吸法のことがメイン。
それは、密息という。
腹式呼吸とも、胸式呼吸とも違うらしい。
吸うときは腹が膨らむが、吐く時は横隔膜を落とすだけ。腹は膨らんだままだという。
呼気も吸気も量が多く、吐く量も安定させられるそうだ。
そうして、密息で声を出すと、倍音を含んだ音になると。
倍音が多いと、子音や雑音が多くなる、というのはちょっとよく理解できなかったが、以前読んだ『日本人の声』という本