スポーツには、スポーツごとに、賞賛の対象となる王道のスタイルがある。
野球であれば直球勝負と言われるように速球で押してくる投球スタイル。前を走ると不利になる自転車競技で、とにかく先行する、逃げていく選手。先を取り真直ぐに面に飛んでいく剣士。愚直にもがむしゃらに前進し攻め続けるのが、本書で取り上げら
...続きを読むれるキックボクシングでの王道スタイルか。
共通するのは、自分の力を出し切りたいという思い。勝負は結果的につくもので、自分でコントロールできない事にはこだわらないという考え方だろうか。現在を情熱的に生きたいという純情が見える。これは誰かから教わったものだろうか、誰かを見て影響を受けたものだろうか。
プロローグで主人公が背負った十字架を、読者は悟ることができる。
その十字架から放たれる光が、ダンスパーティと呼ばれる勝負のリングに主人公を上げることになる。対戦の終盤、十字架が導いた対戦相手に主人公は一言謝る。
『誠司・・・ごめん、な』
対戦相手の呪縛を解く錠に鍵を差し入れた瞬間だった。
著者は1967年生まれで、同世代だ。どうりで、子供に対する眼差しに共感する部分が多いはずだ。僕は、子供に対して何を教えてやれるだろうか、何を残してやれるだろうか。僕は父親から多くを学び、多くを感じ取ったように思うけれど・・・。