松村栄子のレビュー一覧
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再びこうしてまた会えるとは思ってもみなかった。
連載当初から同じ年を重ねて、新しい出会いもあれば、離れていってしまうひといれば、子育てに奔走しているひともいるし、働くようになったものもいる。そんな彼らを見るのはなんだかちょと照れくさいような、それでいて、変わらずにいてくれたことにどこか安心する。
何かあってもなくても、時間は流れ、ひとはその歩みを止めることはできない。自分以上の何者にもなれないし、自分以上のことは誰もできない。
躓く日もあるし、じっと動けないでとどまらないといけない日もある。そんなただ抗うことのできない流れに身を任せて歩んでいくより他ないこの日常の中で、また巡り合えたことは、ほ -
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気づひたら新刊が出ていた。
これまでの作品とは異なり、どちらかといふと、読み切り短編の詰め合はせといふ感じであつた。連載形態の都合といふものもあつたのだらう。
かうしてまた、遊馬の歩みを感じられるとは思はなかつた。先の事なんて誰にもわからない。けれどもあたかも確かなものとしてそれを決定しなければならない。どこかで「待つて」と言つてしまふ。
いつも彼女の作品を読んでゐると、過去も未来もどうにもならないけれど、今かうして在るこの自分を抱えて生きるより他ないことを感じる。だからこそ、まだ見ぬ未来に自分を委ねることができる。つらいこと苦しいこと、楽しいこともうれしいこともきつと起こるだらうが、それでも -
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短い作品だけどなかなか読み進まない。
平易で読みやすいストーリーなのに一語一語に込められた思いが濃厚で、自ずと時間が掛かってしまう。「僕はかぐや姫」はそんな作品。
残りわずかな17歳の物語は、高校時代の自分と激しく共鳴する。濃厚なのは作者の思いではなく、呼び覚まされた17歳の頃の自分の思いかもしれない。
至高聖所は主人公が高校生から大学生に成長したためか精神のカタチが幾分ハッキリした感じがする。それに合わせて登場人物(姉や真穂)も多面的な表情を見せるようになった。男性は概して薄っぺらな気はするが、、、
舞台はおそらく作者の出身校である筑波大学。一度だけ行ったことがある。確かにバカっ広くて人が -
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スカイツリーが見える、東京の下町。
古くからのお店と新しいお店が混じり合う、明日町こんぺいとう商店街の、七軒のお店の物語を7人の作家が描くアンソロジー。
既読の作家さんは、大島真寿美さん、彩瀬まるさん、千早茜さん、中島京子さん。
それぞれの持ち味が出ていて、どれも面白かった。
大山淳子さんの『あずかりやさん』が、盲目の店主が一日百円で大切なものをあずかるというお店を舞台にしていて、にぎやかな商店街の中、しんとしずかな店という感じが良かった。
アンソロジーを手に取ると、こうして新しく好みに合いそうな作家さんが見つかるのが楽しみ。
こんぺいとう商店街シリーズとして続刊もあるらしいので、続きも -
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これも大阪で買ってきた一冊。
以前から読みたいと思っていた本です。
スカイツリーを見上げる下町のかたすみに、
ひっそりと息づく商店街がありました。
それがー『明日町こんぺいとう商店街』。
明日町こんぺいとう商店街を舞台にした7つの物語。
七人の作家さんのアンソロジー。
大島真寿美 『カフェスルス』
大山敦子 『あずかりやさん』
彩瀬まる 『伊藤米店』
千早茜 『チンドン屋』
松村栄子 『三波呉服店ー2005-』
吉川トリコ 『キッチン田中』
中島京子 『砂糖屋綿貫』
読んだことのある作家さんは、彩瀬まるさん、中島京子さんの二人だけ。
どの物語も心がほんわかします。 -
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剣・弓・茶の三道を追求する武家茶道「坂東巴流」の若旦那の成長を描くシリーズ、3作目にして完結編。
このシリーズ、どの程度の人が追いかけているのか今ひとつわからないのだが、個人的にはとても好きで、2作目から7年、気長に待っていた。
1作目が京都新聞に連載された後、単行本はマガジンハウス、文庫版はジャイブ、のち、ポプラ社と版元が変わり、1作目・2作目に関しては、現在ではポプラ社・ピュアフル文庫が入手しやすい版となっている。柴田ゆうの装画は本作の雰囲気によくあっていると思う。
1作目・2作目の舞台は京都だったのだが、本作では東京が舞台となる。
主人公の友衛遊馬(ともえ・あすま)は坂東巴流家元の総 -
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スカイツリーを見上げる下町の片隅にある、架空の商店街。
大山淳子氏の「あずかりやさん」がとても良かったので、"出身地"である、こんぺいとう商店街のことをもっと知りたくなりました。
個人商店が立ち並ぶ商店街は、現代では衰退の傾向にあるけれど、こんぺいとう商店街は、たたむ店あり、新しくできる店ありで細々と続いている。
家業を継いだ若者や、出て行ってまた戻ってきた者、新しい商売の形、幼なじみと小さな恋の話など、懐かしい雰囲気の中で語られる。
後に行くにしたがって、他の商店の名前が登場するようになって、箱庭世界が充実していくのが面白い。
一軒目『カフェ スルス』 大島真寿美
ほ -
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