松村栄子のレビュー一覧
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再びこうしてまた会えるとは思ってもみなかった。
連載当初から同じ年を重ねて、新しい出会いもあれば、離れていってしまうひといれば、子育てに奔走しているひともいるし、働くようになったものもいる。そんな彼らを見るのはなんだかちょと照れくさいような、それでいて、変わらずにいてくれたことにどこか安心する。
何かあってもなくても、時間は流れ、ひとはその歩みを止めることはできない。自分以上の何者にもなれないし、自分以上のことは誰もできない。
躓く日もあるし、じっと動けないでとどまらないといけない日もある。そんなただ抗うことのできない流れに身を任せて歩んでいくより他ないこの日常の中で、また巡り合えたことは、ほんとうに、有難いことなんだと思う。
時間を隔ててめぐり合っても、出会った当初のことがまざまざ思い出される。振り返るときはあっという間で、自分がこんなところまで歩いてきてしまったことを想わずにはいられない。この次出会うことはもうないかもしれない。それでもまた会ってみたい、そんな風に思わずにはいられない -
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気づひたら新刊が出ていた。
これまでの作品とは異なり、どちらかといふと、読み切り短編の詰め合はせといふ感じであつた。連載形態の都合といふものもあつたのだらう。
かうしてまた、遊馬の歩みを感じられるとは思はなかつた。先の事なんて誰にもわからない。けれどもあたかも確かなものとしてそれを決定しなければならない。どこかで「待つて」と言つてしまふ。
いつも彼女の作品を読んでゐると、過去も未来もどうにもならないけれど、今かうして在るこの自分を抱えて生きるより他ないことを感じる。だからこそ、まだ見ぬ未来に自分を委ねることができる。つらいこと苦しいこと、楽しいこともうれしいこともきつと起こるだらうが、それでもこの自分が自分であるといふことは生きてゐる以上変らない。
今までは時間や場所、立場の違ふひとがそれぞれにそれぞれの道を歩いてゐた。この一連の粗茶シリーズのやうに、同じ物語世界の中で描きつづけたといふことは、それだけ彼女にとつて茶道や武道、それらを通して出会つたひとびとが今もなお息づいてゐるからだらう。それに加えて、やはりどの人物をとつても変らぬ彼女の姿が今もちりばめられてゐる。
今後またこのシリーズで書くことがあるかは知らない。もしかしたら、遊馬の子ども世代の話とか出てくるかもわからない。もしかしたら、別の何かに影響を受けて別の違つた物語が生まれるかもしれない。だが、どのやうな形にしろ、きつと彼女の書くものに変りはないと思ふ。変りはないが、茶道や武道の形を見せてくれた様に、また別の新しい世界の形を見せてくれると信じてゐる。 -
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短い作品だけどなかなか読み進まない。
平易で読みやすいストーリーなのに一語一語に込められた思いが濃厚で、自ずと時間が掛かってしまう。「僕はかぐや姫」はそんな作品。
残りわずかな17歳の物語は、高校時代の自分と激しく共鳴する。濃厚なのは作者の思いではなく、呼び覚まされた17歳の頃の自分の思いかもしれない。
至高聖所は主人公が高校生から大学生に成長したためか精神のカタチが幾分ハッキリした感じがする。それに合わせて登場人物(姉や真穂)も多面的な表情を見せるようになった。男性は概して薄っぺらな気はするが、、、
舞台はおそらく作者の出身校である筑波大学。一度だけ行ったことがある。確かにバカっ広くて人が少なかったです。 -
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スカイツリーが見える、東京の下町。
古くからのお店と新しいお店が混じり合う、明日町こんぺいとう商店街の、七軒のお店の物語を7人の作家が描くアンソロジー。
既読の作家さんは、大島真寿美さん、彩瀬まるさん、千早茜さん、中島京子さん。
それぞれの持ち味が出ていて、どれも面白かった。
大山淳子さんの『あずかりやさん』が、盲目の店主が一日百円で大切なものをあずかるというお店を舞台にしていて、にぎやかな商店街の中、しんとしずかな店という感じが良かった。
アンソロジーを手に取ると、こうして新しく好みに合いそうな作家さんが見つかるのが楽しみ。
こんぺいとう商店街シリーズとして続刊もあるらしいので、続きものんびり読みたい。
また違う作家さん、違うお店が登場するのか、それともまた同じお店も登場するのかな?
『カフェ スルス』がどんなお店になっていくのか、続きが読みたい。 -
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これも大阪で買ってきた一冊。
以前から読みたいと思っていた本です。
スカイツリーを見上げる下町のかたすみに、
ひっそりと息づく商店街がありました。
それがー『明日町こんぺいとう商店街』。
明日町こんぺいとう商店街を舞台にした7つの物語。
七人の作家さんのアンソロジー。
大島真寿美 『カフェスルス』
大山敦子 『あずかりやさん』
彩瀬まる 『伊藤米店』
千早茜 『チンドン屋』
松村栄子 『三波呉服店ー2005-』
吉川トリコ 『キッチン田中』
中島京子 『砂糖屋綿貫』
読んだことのある作家さんは、彩瀬まるさん、中島京子さんの二人だけ。
どの物語も心がほんわかします。 -
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剣・弓・茶の三道を追求する武家茶道「坂東巴流」の若旦那の成長を描くシリーズ、3作目にして完結編。
このシリーズ、どの程度の人が追いかけているのか今ひとつわからないのだが、個人的にはとても好きで、2作目から7年、気長に待っていた。
1作目が京都新聞に連載された後、単行本はマガジンハウス、文庫版はジャイブ、のち、ポプラ社と版元が変わり、1作目・2作目に関しては、現在ではポプラ社・ピュアフル文庫が入手しやすい版となっている。柴田ゆうの装画は本作の雰囲気によくあっていると思う。
1作目・2作目の舞台は京都だったのだが、本作では東京が舞台となる。
主人公の友衛遊馬(ともえ・あすま)は坂東巴流家元の総領息子でこのままいけば次期家元ということになるのだが、敷かれたレールに乗って走るのが気に入らず、出奔して京都に来たのだ。前髪を青く染め、反抗心むき出しで、音楽の道を志そうとする遊馬。だが、あいにくとそちら方面の才能はからきしなく、何だかんだで茶道とのつながりは切れない。京都にある巴流総本山の宗家巴流や、公家流茶道を嗜む麿言葉の予備校講師、比叡山の老師との交流を絡め、茶道とは、坂東巴流の目指す剣・弓・茶の三道の交わるところとは、そして何より自分の目指すものとは、と答えを探し求めていく。
で、本作では、坂東巴流の本拠地である東京に戻ってくるわけである。答えが出たわけではない。けれども向き合ってみなければ答えも出ない。
「柳緑花紅」は禅語である。柳は緑、花は紅。見たそのままの言葉だが、あるがまま、そのままの姿で、それぞれが尊い。当たり前のようだが、しかしそれを全うするのは、思う以上に有り難いことなのかもしれない。
温かなユーモアがベースにありつつ、禅や茶の道、季節のうつろいを鮮やかに描いているところが本シリーズの魅力である。登場する茶道流派はすべて架空のものというが、流派を越え、茶道というものを活写しているのも特質の1つだ。
主人公の遊馬はもちろん、かなりの数の登場人物たちも背景がきちんと描きこまれている。
特に、と言われれば、和文化に興味を持つ中高生に薦めたいが、そうでなくても幅広く読めるシリーズであると思う。
3作目の本作は2015年から雑誌に連載されている。
遊馬は実家の道場で稽古に励みながら、スカイツリーで警備員のアルバイトを始める。初めは土台だけで、スカイツリーは影も形もない。つまり、冒頭の舞台は、東日本大震災よりも前である。
終盤、ストーリーには震災が絡む。構想時にはおそらく、この形を考えていたということだろう。
物語の最後に、遊馬は1つの決断をする。
奔馬はどこを目指すのか。あるいは疾走しながらどこへ行くか考えているのか。
シリーズは一応、完結ということのようだが、また時を経て、遊馬や未来のその子どもたちに会ってみたいような気もしている。
*個人的には、このシリーズを読んで自分もお茶を習い始めたので、何だか感慨深いですw -
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スカイツリーを見上げる下町の片隅にある、架空の商店街。
大山淳子氏の「あずかりやさん」がとても良かったので、"出身地"である、こんぺいとう商店街のことをもっと知りたくなりました。
個人商店が立ち並ぶ商店街は、現代では衰退の傾向にあるけれど、こんぺいとう商店街は、たたむ店あり、新しくできる店ありで細々と続いている。
家業を継いだ若者や、出て行ってまた戻ってきた者、新しい商売の形、幼なじみと小さな恋の話など、懐かしい雰囲気の中で語られる。
後に行くにしたがって、他の商店の名前が登場するようになって、箱庭世界が充実していくのが面白い。
一軒目『カフェ スルス』 大島真寿美
ほぼ還暦世代の演劇仲間が集まって、カフェを開くことになる。
バイトで食いつないで来た者ばかりなので、即戦力!
「スルス」はフランス語で「泉」
ちょっとお洒落なカフェができたと、なかなか繁盛。
二軒目『あずかりやさん』 大山淳子
一日100円で何でもあずかる、あずかりやさん。
開店のきっかけになった男が桐島透にあずけた物と、盲目の店主に本を点訳してくれる女性、少年に託された茶色いかばんの中身。
三件目『伊藤米店』 彩瀬まる
「米屋の息子がいい男になって戻ってきた!」と、桐子の周りで話題になる。
なんと、かつての同級生、「野球部の伊藤くん」だった!
おいしいおにぎりと、ひと時の幻想。
四軒目『チンドン屋』 千早茜
テレビが普及してCMがかかるようになるまでは、「チンドン屋」は貴重な宣伝手段だった。
今毘羅屋清治郎が語る、チンドン屋、今昔。
五軒目『三波呉服店――2005――』 松村栄子
着物を着る人が少なくなって、由緒ある呉服店も、卒中で後遺症が残る店主が帳場を守るばかり。
そこへ吹く新しい風と、人間国宝が染めた辻が花の着物の由来。
六軒目『キッチン田中』 吉川トリコ
「ヒナギク生花店」の娘・ひな菊が胸に秘める、「キッチン田中」のシェフ・修(おさむ)への思いのゆくえ。
七軒目『砂糖屋綿貫』 中島京子
砂糖屋の二階に下宿した、浅木耕太が見る、大家・綿貫徳次郎のシルバー・ライフと、耕太の後輩・キズナの謎の行動(耕太にとって)