須田桃子のレビュー一覧
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第二部のクリスパーが人類に及ぼす影響、特に生殖細胞への干渉における社会的意義についての解説はは読み応えあった。
一部の専門家だけの象牙の塔であってはならず、一般人も含め断続的、建設的な議論が必要となるというメッセージ。つまりは、自分も傍観者でないのだと痛感させられた。
正直具体的な仕組みは理解できないが、クリスパーがとてつもない技術的ブレイクスルーであることは伝わってくし、数十年前のSF小説の世界が目前に迫ってるというある種の焦燥感を受け取った。メリットデメリットがある技術を扱うにあたり、慎重に進めて姿勢の大切さを、それがさまざまな観点から見極めていくのだ。
今日での到達点はいかほどなのだ -
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わずか数カ月で新型コロナウイルスのワクチンが開発されてしまったことには驚きを禁じ得ないが、その背景には、合成生物学があったことが本書でよくわかる。
振り返ってみれば、数年前、中国の研究者がゲノム編集を施した双子を誕生させ、世界中に衝撃を与え、そして非難されたことは記憶に新しい。その背景には、好むと好まざると、発展を続ける合成生物学があった。
そして、冒頭の新型コロナウイルスワクチンである。これは間違いなく、合成生物学の成果である。しかし、合成生物学にはゲノム編集ベイビーを生み出してしまう可能性や、著者も懸念していることであるが、生物兵器への転用の可能性が常に付きまとう。
世の中を便利にし -
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合成生物学と呼ばれる学問を知らなかった。
もっと難しい内容なのかと思ったら、とてもわかりやすく
最先端の技術を知ることができた。
昨今の肺炎ウィルスが、人工的に作られたものではないかとの噂をネットで目にしたため、興味が沸いたので読んでみたというわけです。
「デュアルユースジレンマ」は生物学だけに限らず、原子力にも言えることだ。他にもたくさんあるのだろう。
遺伝子組み換え技術については、食品関連の情報で知ってはいたが、細菌やウィルス、人間のDNAまでも作り出すことが可能であるという事実、巨額を投じて研究されたものが、私たちの知らないところで、私たちが知らないうちに使われているのかもしれないと -
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結局この事件は何だったんだろう、とずっと思っていたので読みました。毎日新聞の須田記者が、最初はみんなと同じようにSTAP細胞に興奮して報道したジャーナリストの1人として責任を取るかのように丁寧に経緯が書かれていました。
私はやっぱり個人の問題(研究の作法を知らなかった、データの扱いがあまりにずさん)がメインであって、理研の責任論はいまいちピンとこないのですが、周りの若山さんや笹井さんら有名な研究者たちが共著になっていたからみんな簡単に信じてしまった。なぜそのようなしっかりした研究者たちや、ネイチャーがコロッと信じてしまったのかはやはりよく分かりませんでした。あとからきちんと調べたら、ツッコミど -
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ゲノム編集技術であるCRISPR。エマニエル・シャルパンティ氏とともに、2020年にノーベル化学賞を受賞したジェニファー・ダウドナ氏による著書。その技術はCas9酵素を用いてガイドRNAで標的DNAを切断する。塩基配列を思いのままに操れるまさに夢の技術。一方、優生思想に基づくデザイナーベイビーや人体増強や細菌兵器といった軍事転用の懸念も否めない。
本書では前半では著者の細菌基礎研究者としてのキャリアをなぞりながらCRISPER発見に至るまでの道のりを振り返り、中盤ではCRISPERを活用した遺伝子性疾患などへの応用医療の事例、後半ではCRISPERという「神の技術」に対する道徳的問題や倫理的課 -
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小保方氏から「殺意を感じた」と名指しで批判された筆者による本事件の全容とも言える手記。事件における不可解な点をズバズバと論理的に切り捨てていく文章から感じる筆者像は、ひと度矛盾を感じたら徹底的に追求する記者としての矜持と正義感を兼ね備えた情熱的な人柄である。ただ、本書を読み進めるにつれて敵に回すとこれほど恐ろしい人もいないだろうなという印象がどんどん強くなり、最終的には小保方氏を初めこの騒動の登場人物達に同情まで感じてしまい、冒頭の小保方氏の発言が出てきても不思議では無いかもと思うまでになった。本事件を時系列で細部にわたり詳らかにしたその執念には敬意を払い評価もしたいが、上記のような印象を読者
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須田桃子(1975年~)氏は、早大大学院理工学研究科修士課程修了、毎日新聞科学環境部記者等を経て、NewsPicks副編集長。『捏造の科学者 STAP細胞事件』(2014年)で大宅壮一ノンフィクション賞、科学ジャーナリスト大賞受賞。
本書は2冊目の単著で、2018年に出版、2021年に文庫化された。
合成生物学(synthetic biology)とは生物学と工学の学際的な分野で、構成(的)生物学とも訳される。その対象領域は、バイオテクノロジー、遺伝子工学、分子生物学、化学工学、生物工学、電気工学等に及び、もともとは様々な領域を統合して生命の仕組みを理解しようとするものであったが、その進歩とと