富山和子のレビュー一覧
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日本人は川とどう生きてきたか
1980年に発売された本。
主に中世から昭和の終わりまでの人々がどのように川と向き合って、時に生きる糧として利用しながら、時に生活を奪われ闘いながら生きてきたかを知ることができる。
川とうまく付き合ってきた山や農村の文化や産業、生活がいかに都市の論理だけで破壊されてきたか。
この本の発売から約40年。その間、都市に奪われるばかりだった川は一体どうなったんだろう。今でも山の民は奪われる一方なのだろうか。
土壌で水の汚染を浄化する方法。今はどうなっているのか。
その後の40年の「水の文化史」を知りたくなった。
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Posted by ブクログ
淀川、利根川、木曽川、筑後川の流域の文化を通じて、日本古来からの水と緑と土によるなりわいを考察する。日本文化に関する名著の一冊と言っても過言ではないだろう。
日本人の文化について水というしてんを通じて紹介し、環境問題について警鐘を鳴らした一冊。昭和55年の作品。
文化史と名乗るだけあって奥行きが非常に深い。淀川については上流の琵琶湖、そして日本海文化の京都への影響まで。今は死語と化した裏日本という言葉とは逆の豊かな日本海側の土地。
利根川では治水、木曽川では林業、筑後川では上流から下流まで無駄なく水を使い続ける文化について。
それらの水文化が、都市化や効率化などによりなくなりつつある姿 -
Posted by ブクログ
自然界の「分業化」に警鐘を鳴らした日本環境論の古典。本書は1990年の時点で28版を重ね(初版は1974年)、2010年には新版が出るなど、長年にわたって読み継がれてきた本である。
著者の主張を要約すると、本来は水(河川)と緑(森林)と土(土壌)は一体のものであり、長い年月をかけて相互補完的な関係を築き上げてきたという。しかし、高度成長期の都市開発が、自然界を「分業化」させてしまい、その結果、より多くの環境問題を引き起こすことになった。例えば、治水事業として各地に築かれた「堤防」は、水と緑・土の繋がりを断ち切ってしまったため、これまで森林や土壌が吸収していた水や土砂が全て河川に閉じ込められ