村瀬秀信のレビュー一覧
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1955(昭和30)年、オーナーへの手紙で阪神タイガース再建策を書いてきた「謎の老人」が監督に起用された!
…というような煽り文句が流れていたが、そこまで面白おかしい話ではなかった。
確かに、それまでプロ野球とかかわりのない人物がいきなり監督になったのだから唐突な話ではある。
しかし、野球界と無縁の人物ということではなく、早稲田大学のエースであり、満鉄俱楽部(満鉄の野球部)のエースとして活躍した人物であった。
1927年に始まった都市対抗野球の最初期の優勝チームが満州俱楽部や大連実業団であったことからもわかるように、大正期の実業団・社会人において満州のレベルは高かった中にあってのエースであった。
そうはいっても30年以上前の大正時代の話ではないか、という見方が支配的だったので謎の人選とされたのだろう。
しかし、その時点で日本プロ野球の歴史は20年に満たないのだし、間に戦争を挟んでいたことを踏まえれば、在野の人物がいてもそれほど不思議ではないと思うのだが。
ともあれ、そのような唐突な人選が行われたのはなぜか。
晩年を迎えた大スター藤村富美男への禅譲が当然視された中で、反藤村派へも配慮し、かつ高齢化が進んでいたチームの若返りを果たすために「第三の選択肢」としてプロ野球との縁が薄い人物(岸一郎)が選ばれたというのが真相に近そうだという。
そして、この監督起用をきっかけに阪神タイガースの内紛体質が生まれたという記述が続いていく。
このあたりの、組織の切り盛り、アクの強い選手たちをどう扱うか、という観点での話は一般化できそうな内容でなかなか興味深い。
2か月で監督を解任された後の岸一郎について野球界は関心を持っていないようだが、著者はその後の岸の人生を追跡している。そこが本書でよいなあと思ったところ。
その話題を読んでいく中で、小山正明さんはやっぱり人格者だったんだなあと思った。 -
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阪神はなぜ勝てないのか。その答えは『虎の血』!?
伝説となった山本由伸の熱投で締めくくられたワールドシリーズ。 大胆不敵な小久保采配を見せつけられた日本シリーズ。 この熱狂のロスを埋めてくれる一冊に出会った。村瀬秀信さんの『虎の血』だ。
この本は、二つの物語として読むことができる。 一つは「組織論」としての物語。もう一つは「謎のキャラクター・岸一郎」の物語である。
アライン不在の組織には勝利はない
「監督やコーチのためやない。ファンのために必死になる。これが虎の血や。」
コレコレ、これが怖いんです。 「お客様のために」と声高に叫び、上層部批判を繰り返していたあなた!――はい、私でした(過去形です!)
会社という組織も、球団という組織も本質は同じだと思う。 その組織の目的・存在理由・ミッションがアライン(共有・整合)されていなければ、勝利は得られない。 宗教組織や軍隊組織はその点が明確で、組織としてはとても優秀だ(話が逸れた)
「ファンのために戦う」――その響きは美しい だがこの一言は、特に人気球団である阪神タイガースにおいては、錦の御旗になってしまう。 同じ人気球団である巨人においては、それが「勝利」であったという対比も面白い。
この錦の御旗をスター選手が掲げ、監督批判を繰り広げる。 ベンチも球団も、もちろんファンもメディアも酔いしれる。 その間に「勝利」はどこかへ去ってしまう。(うん?ウチの会社のことか?)
誰もが「ファン第一」「伝統を大切に」と口にする。 だが実際には、フロントも、監督も、選手も、OBも――誰一人として「勝利」という一点でつながっていない。 愛情は豊かだが、方向はバラバラ。Not Playing to WIN!
この歴史の原点に立つのが、「謎の老人監督」岸一郎と「ミスタータイガース」藤村富美男である。
「謎の老人監督」岸一郎
「謎」というのも妙な話だ。 なぜなら、メディア露出の多い阪神タイガースの監督が「謎」であるはずがない。 スポーツニッポン(1954年11月25日付)一面に「岸一郎氏と契約」「輝く球歴」と大きく報じられているではないか。
プロ野球発足前の早稲田の大エース。 その後、満州で活躍し、長いブランクを経て阪神の監督となる。 だが、わずか33試合で退任。その理由が「痔瘻」――いや、本当だろうか。
ところが話は不可解な方向へ進んでいく。 「ロシアの血」や「天狗党を斬首した血筋」など、まるで歴史小説のような人物設定。 しかも“べらいち”(詳しくは読んでください)
ただし、これらの謎は最後まで完全には解かれない。 資料が乏しいのは事実としても、もう少し核心に迫ってほしかった。
――誰か、小説でもいいのでスッキリさせてください!
組織論を描くなら、川藤、吉田、広岡といった“野党”のコメントだけでなく、“与党”のコメントも組み込む必要があったのではないか。 岸一郎の人物像を炙り出すには、やや謎が残りすぎているのが残念だ。
それでもこの本の魅力は明確だ。 阪神というチームは、「勝利」よりも「感情の共有」を重んじてきた。 だからこそ愛され、だからこそ勝てない――。 その構造を見事に描き出している。
「虎の血」とは、勝利の血脈ではなく、情の血脈なのだ。
この本のあとがきが暗示しているように、藤川球児監督のもとで、オーナー・球団・フロント・選手・スタッフが同じ方向を見出せれば―― そして熱狂的なファンと、それを商売にしているメディアを巻き込むことができれば―― 阪神常勝の未来があるのかもしれない。
でも、それじゃ阪神じゃなくなっちゃう(笑)
ああ、来年の球春が待ちきれない! -
購入済み
野球ファンは必読
ドラフト最下位のプロ野球選手16名の苦闘と成長を描く感動のノンフィクション。
「野球太郎」の連載コラムを基に、逆境を乗り越える姿を熱く綴る。やや展開が単調だが、野球ファンは必読。
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ノンフィクション物なのに小説の様な読み心地。面白かった。
野球は全く明るくなく、登場人物も検索しながら読み進めた為少し時間がかかりましたが、ぐいぐい読んだと思う。
岸一郎というおじいちゃん監督に焦点を当てた時、見えてきた謎と闇。
腹の探り合い、策略、ずる賢さ。さらに余計な火種をつけるマスコミ。野球が好きで野球をやりたいだけの選手にもレギュラー争いという攻防がある訳で。
最終章で明かされる諸々にそれまでの登場人物への印象がひっくり返され、これもまた面白かった。見事な起承転結。
人は多面的ではあるが、根っこを知ると案外シンプルな答えにたどり着いたりするという事か。
それにしても最後、彼で締めるとはね。
知ってたのかね。 -
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阪神-巨人戦には『伝統の一戦』という冠がつくが、対戦戦績を見れば 阪神の791勝1031敗73分、巨人へ240もの勝利を献上。歴代監督数を見ると、岡田彰布は35代目、巨人は阿部慎之助が20代目。創設年数は88年の阪神に対し、巨人は89年とほぼ同じ歩みながら、生え抜き主義の巨人に対し、阪神は監督の首のすげ替えはなはだしく、『歴史はあっても伝統はない』と言われても仕方ないほど、監督数と同等の『内紛』を引き起こしてきたのが阪神。
■本書は…
阪神のお家芸と言われる監督交代時のゴタゴタ。お家騒動が常態化するキッカケになったのでは?と言われる第8代監督『岸一郎』をめぐる不可解人事。その奇怪な真相に迫るノンフィクション。
■内容は…
今から70年前の1955年、阪神球団は岸一郎というアマチュア野球界では実績を残すも、プロ野球の選手経験はなく、また30年もの間ボールに触ることもなく、故郷の敦賀で百姓をやっていたという得体の知れぬ老人を監督に据えるという仰天人事を行う。
招聘の経緯は、岸一郎が自発的に球団オーナーに向け、『チーム改革案』を献上。そこには〈投手を中心にした守りの野球〉の必要性が説かれ、内容に感心した野田オーナーは独断で監督に据える。
この人事に納得のいかないのが初代 Mr.タイガース藤村富美男。選手の前で『年寄り!』『こら、オイボレ!』と悪しざまに罵るなど、主力選手たちからも総スカンを喰らい、わずか1ヶ月半で解任。
かくして、その藤村は翌年第9代監督に就任。プレイングマネージャーとしてチームを牽引するも優勝目前にして失速し2位。戦績を見れば及第点も、問題は藤村の性格。手柄は全て自分にあり、自分に代わるスター誕生を望まぬ性格は人心を遠ざけ、やがて藤村排斥事件へと発展。
その背景には球団のシブチンにあり、主力選手たちはあまりの低評価に対し不満を爆発させ、今風に言えば『労働争議』が起こり、その矛先が球団には従順な藤村へと向かい排斥事件へと雪崩打つ。
また、この一件には副産物を生んだ。『阪神のお家騒動は売れる!』とスポーツ紙の知るところになり、毎シーズン終了後に季節の便りよろしく醜聞が生まれ、阪神は球界のスキャンダルメーカーとしての地位を確実なものにし、その悪しき伝統だけは忠実に受け継がれていく。
著者は招聘〜監督辞任までの流れを辿りながら、本社・球団・選手の誰しも阪神への愛があるがゆえに疑心暗鬼となり、同床異夢の現実を知り、失望と自滅の様子を炙り出していく。
それを押さえた上で、著者の筆は岸一郎の『得体探し』へと向かう。殆ど記録も残っていない謎の老人の郷里の敦賀に赴き、丹念に洗い出していく。やがて若きの日の岸一郎が早大・満鉄でプレイヤーとして無双な存在であったことを知る。
■改めて阪神の悪しき伝統とは…
火の気のない場所でも火を起こし、火があるところは大火に至る。昨年2月のキャンプの初日、岡田監督は報道陣から『球団への愛はあるか?』と問われ、『球団には愛はない。阪神という名前には愛はあるけどな…』と発言。
虎の申し子である岡田は、仰天監督人事から70年経過し、阪神阪急グループになろうが『阪神という球団は伏魔殿である』と見ているのではないか。
僕の目下の関心はアレンパより、本社-球団-選手が三位一体になろうとしているところに、また変な病気が宿らないか…そっちの不安の方が募るばかり。
はたして『虎の血』って、拭っても拭っても付着し続ける清濁の『濁の高濃度』を肯定することなのか… -
Posted by ブクログ
本書に取り上げられている中で、以下は食べた事あり。
ぎょうざの満洲 … 読んだら無性に食べたくなり二週連続で行った。
桔梗屋 … 桔梗信玄餅がここまで全国区になるとは。
炭火焼きレストランさわやか … 子供の頃はさわやかでステーキばかり食べてた罰当たり者も、今は地元を代表するものと言えばさわやかの本社あると答えられる果報者。昔のさわやかは待合室もワクワクするほど豪華だった。
小木曽製粉所 … 残念ながら特別美味しかったという記憶がない。
ココイチ・天下一品・丸亀製麺・Joyfull・リンガーハット … 全国区。
チャンピオンカレー … 特別カレーが好物ではないからか、余り味の記憶がない。記念で食べた感じ。
ヨーロッパ軒 … 久しぶりに食べたい!
551の蓬莱 … ここはラーメンと焼売が侮れないと思う。
一鶴 … 丸亀で初めて食べた時の衝撃とビールとの余りの相性の良さ。そして梅田で食べられる事を知った時の喜びの中に生じた一抹の寂しさ。
「あとがきみたいな特別編」が良かった。野球ライターとして昔から馴染みのある著者だったが、こんなジャンルも書くのか!、と思わぬ拾い物をした感じの一冊だった。
ジュンク堂書店近鉄あべのハルカス店にて購入。 -
Posted by ブクログ
「散歩の達人」連載の人気エッセイの第2弾。ネタ切れしつつあることを作者も自覚してる感じがほのぼのとしている。さすがにローカルなチェーン店が多い。
最近のプロ野球に関する作家としては五本の指に入るだろう筆者。ほぼ同世代ということもあり、小ネタに思わず笑ってしまう。
第二弾ともなると残念ながらネタ切れの感。それでもパワーで強引に押し切っているところがほのぼの。純粋なエッセイとしては十分に楽しめる。
後書きなど単にウケ狙い的な文章でなくほんのりさせるワザこそ筆者の魅力なのだとつくづく思う。「止めたバットでツーベース」と共通のペーソス。
気楽に読める一冊でした。