中国不動産バブル
著:柯隆
文春新書 1452
本書は、中華人民共和国の建国にさかのぼって、中国不動産バブルを論じる書である
中国の不動産バブルの形成と崩壊は、中国社会に内在する制度的な歪みによるものである
2021年中国大手不動産デベロッパである、恒大集団が、負債総額48兆円、13兆円の債務超過にて、米連邦破産法15条の適用にて破綻した
中国14億人の人口を有して、土地資源が不足しており、不動産神話が破綻することは全体ないと信じられていた。
崩壊のきっかけは2つ
①習首席の「家は住むためのものであり、投機の対象ではない」という発言
②コロナ禍
1978 改革・開放政策 計画経済の破綻により、鄧小平は、段階的に経済の自由化を進める路線を選んだ
土地とは、国が所有するものであり、不動産開発を進めるためには、定期借地権という概念を持ち込んだ
中国経済、高度成長のピークは、2008年北京オンピック、2010の上海万博のころと思われている
2001 WTO加盟を機に、外資が中国に進出
2023.09 中国国家統計局副局長の賀鏗の発言、中国不動産市場は、供給過剰の問題が深刻でいま売りに出されている住宅は14億人が入居してもなお余るという失言からであった
バブルが崩壊して、多くの個人がローンの返済が難しくなっても、家を売って損きりすることすらできない。
地方政府が定めた価格以下では販売もできず、差し押さえられて競売にだされてしまうのだ
鄧小平の白猫だろうが、黒猫だろうが、ねずみをとる猫はよい猫だというたとえで、中国は、経済成長を実現できれば、社会主義だろうが、資本主義だろうがかまわないという方向転換をおこなった。
それは、毛沢東がめざした、苦しみに耐えて質素な生活をするという路線から決別であった
不動産バブルのもとになったのは、土地の定期借地権の価格を地方政府が決めていいという所から始まった。
疲弊していた地方政府の財政を補填すべき土地の価格政策は、腐敗と土地の高騰につながっていく
地方政府、デベロッパ、シャドーバンクが、土地の価格と吊り上げ、やがてバブルとなっていく
住宅を販売するには、
①高い土地代に利益を上乗せして、さらに高い価格で販売する
②上物である建物を手抜き工事をして販売をする しかなかった
中国では、賃貸は普及しておらず、法整備も進んでいないことから、不動産を所有するという習慣が根付いている。
若者が結婚のために、住宅を買うことは難しくなっていく、親から頭金を借りることができるものはともかく、住宅を買えないものは、結婚すらできなくなっていく
コロナでは、強制的に施設に隔離したり、強制的に移住させられたりした。労働市場を提供していた中小企業の倒産が進み、さらなる失業がすすんだ。また、防護服をきた役人たちが24時間監視するなど中国社会は大きな混乱に見舞われた
この結果、中国の訪日旅行者は、他の国の旅行者数が回復したにもかわらず、回復していない
また、コロナ以後は、海外へ移住しようとする中国人が多く、知識層などが海外へ流出している状況である
選挙による選択や、政策の自助努力がはたらかない。それは、共産党一党独占の政治体制の中でだれも上層部の意見に進言することはないからだ。だから、若者は絶望し、アイデンティティが失われていく。
<中国最高指導者>
毛沢東 1945~1976
華国鋒 1976~1978
鄧小平 1978~1989
江沢民 1989~2002
胡錦濤 2002~2012
習近平 2012~
目次
はじめに 不動産バブル崩壊の幕開き
第1章 中国の不動産で何が起きているのか
第2章 土地の公有制と戸籍管理制度
第3章 地方政府と都市再開発
第4章 「失われた30年」への道
第5章 絶望する若者たち
第6章 貯蓄・消費・投資の特殊性
第7章 マネーゲームと金融危機
第8章 イデオロギーの呪縛
第9章 コロナ禍が遺したもの
第10章 習近平政権の正念場
終章 チャイナ・リスクに備えよ
あとがき
主要参考文献
ISBN:9784166614523
出版社:文藝春秋
判型:新書
ページ数:256ページ
定価:1000円(本体)
2024年04月20日第1刷発行