川戸貴史のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
戦国時代でも下部構造としての経済が上部構造の政治に影響を与えていたんだな。応仁の乱も下降気味の経済で縮小するパイを奪い合う競争の激化によるものと捉えることもできそう。大航海時代が日本の経済に、ひいては政治史に大きな影響を与えていたこともわかった。大名の財源、貫高性が革新的だったが銭不足から石高性の米ベースに回帰したこと、南蛮貿易と銀の生産、楽市楽座と徳政の実際、実効性を持たなかった信長の貨幣政策など。
武器や日当やその他の品々の当時の価値を現代に置き換えてくれるので、もちろん当時と生活の水準が違うことは知ったうえで、実感を持って考えることができる。元来の戦国時代のイメージをひっくり返してくれた -
Posted by ブクログ
日本の歴史
教科書にまとめたものは綺麗に繕ったもの。
しかし纏まるまでには幾つもの見解と事実があった。
古すぎて調べようがないこともある。
こうだと決めつけてかかる人。こうだったら良いとばかりに美談にする人。
それで現在の歴史知識が出来上がっている。
この本には当時は調べきれなかったことや、新しく発見された事実などから、歴史的事項を再度検証している。
大化の改新辺りのところはなんとも古すぎて繋がるのは大変だったと思う。
サラッと過ぎていた歴史的な出来事の新しい発見とエピソードや裏話。
読みやすくまとまっている。
乃木将軍の二百三高地攻略は深い。
人柄だろう天皇からも愛され同期からも敬愛 -
Posted by ブクログ
ネタバレ戦国時代を俯瞰して理解をする為に、武将たちの合戦や政治史ではなく商人たちの経済活動という視点から読んで欲しい一冊
通常の戦国時代本とは違って、本書は中央権力が衰退した乱世の世の中で、旧来の特権商人(座)と新興商人たちが利権をめぐって争う様子、金融業や貿易を展開しながら自由に自己責任で生き抜いた姿を、豊富な史料に基づいて生き生きと再現している
改めて「楽市・楽座」の理解を深める事が出来た気がする
御用商人の暗躍、海外貿易への参入など、教科書では簡略化されがちなトピックを、具体的なエピソードとともに詳述されていて、商人たちが権力者(大名、寺社、朝廷)と結びつきながら、借金トラブルや縄張り争いを巧み -
Posted by ブクログ
ネタバレ13世紀の商人の誕生から16世紀織豊期までの中世商業史。
・商人は、権門の税などの徴収、物資の調達、消費、贅沢品の輸入等に携わる中から誕生した。権門に仕える見返りに、独占的買い付け・販売権、関銭・津料の免除などを得た。
・楽市は、新興宿場、町を交流させるため、多くの戦国大名が使った手段。楽座は、特定の商品に限って認める一方で座を保護するなど恣意的利用であった。中世的独占権を破棄したのは豊臣政権になってから。
・13世紀半ばには為替手形が利用され、すぐに借金手形も利用されるようになった。14世紀前半には、経営能力がある叡山の神人から土蔵が生まれ、京の商人等も金融業に参入するようになった。
・戦国 -
Posted by ブクログ
中世、特に戦国時代の商業や商人の状況を記述したもの。
中世らしく権力者との結びつきが重要であったこと、その中でも既得権益者と新興勢力が争う様を具体的に書いている。
権力は御用商人を保護し、その代わりに利益の一部を差し出す。
その構図は変わらないが、権力側のプレイヤーは貴族、寺社から将軍、そして守護や戦国大名へと移り、地域権力が自らの領域の商人を保護し、その代わりに税を納めさせるという権力の分散と自由な商取引から豊臣政権が権力の統一と商業の再編を図っていく。
この見取り絵は極めてわかりやすく、著者は中世の権力と既成商人に牛耳られた、不自由な取引から、権門の崩壊と戦国大名による権力の競争が商人 -
Posted by ブクログ
<目次>
プロローグ 戦国時代の商人とはどういう存在だったのか?
第1章 戦国金融道~京都商人の栄枯盛衰
第2章 ほんとうの「楽市・楽座」~兵庫・堺・博多・伊勢大湊
第3章 新興商人vs特権商人~利権だらけの中世
第4章 御用商人たちの暗躍~商人的活動を担った大名家臣
第5章 大名たちの経営戦略~「資源大国」日本
第6章 世界史の中の戦国時代~貿易を担った商人たち
<内容>
中世から近世初期の日本の商人たちの活動を、研究史を上手くまとめてわかりやすく説明した本。授業では通り過ぎてしまう「楽市・楽座」。鎌倉期から栄えた「座」の特権を奪う、と説明するが、ちょっと違うよう -
Posted by ブクログ
今年(2024)のGWの大掃除で発掘された本のレビューは大方終わりましたが、その前に娘夫婦が宿泊した時に大慌てでスースケースにしまい込んだ本があり、それらの本のレビュー書きを終了させたく思っています。記録によれば、まだまだ世の中がコロナ騒動の真っ最中だった、2年前(2022.5)に読み終わった本です。
現代も過去においても戦争にはお金が必要で、それが用意できない限り戦争に勝つことができないか、負けていなくても撤退することになるのが常のようです。この本は読み終わってから2年も経過しているので、レビューを書きながら戦国時代にを生き抜くためにどのような経済においてお金や、それに代わる米と関わってい -
Posted by ブクログ
著者の先生は存じ上げないが、貨幣経済史のご専門とか。戦国時代における大名たちの領国経営については類書も多いのでさほど目新しい記述はなかったように思うが、ところどころ最新の研究成果も盛り込まれていて、興味深い部分も多かった。とくに第7章「混乱する銭の経済—織田信長上洛以前の貨幣」と第8章「銭から米へー金・銀・米の「貨幣化」と税制改革」の部分。ほかにも第5章で論じられている織田信長の楽市令に関する考察なども。
結論はごくごく当たり前の話になってしまうのだが、旧来の秩序再編成に当たっての戦国大名の革新性について、過大評価はできないということ。とくに市場経済・貨幣経済のコントロールは、戦国大名といえ -
Posted by ブクログ
”腹が減っては戦はできぬ”ように、本書オビ文にある通り「銭がなくては戦はできぬ」。戦争をするためには兵士、その装備、糧食等が必要であるが、戦国時代には、兵士の装備一式70万円、鉄砲一丁50~60万円、兵糧米代1000万、捕虜の身代金10~70万円といった塩梅だったようだ。戦国大名はこれらをどのように用立てたのだろうか。
本書では、戦国大名の経済面について焦点を当て、その収支の状況や具体的な活動について具体的に分かりやすく説明をしてくれる。
特に「第七章 混乱する銭の経済ー織田信長上洛以前の貨幣」「第八章 銭から米へー金・銀・米の「貨幣化」と税制改革」を読んで、撰銭令の意義や、貫高制・石高