著者の先生は存じ上げないが、貨幣経済史のご専門とか。戦国時代における大名たちの領国経営については類書も多いのでさほど目新しい記述はなかったように思うが、ところどころ最新の研究成果も盛り込まれていて、興味深い部分も多かった。とくに第7章「混乱する銭の経済—織田信長上洛以前の貨幣」と第8章「銭から米へー
...続きを読む金・銀・米の「貨幣化」と税制改革」の部分。ほかにも第5章で論じられている織田信長の楽市令に関する考察なども。
結論はごくごく当たり前の話になってしまうのだが、旧来の秩序再編成に当たっての戦国大名の革新性について、過大評価はできないということ。とくに市場経済・貨幣経済のコントロールは、戦国大名といえどもそう簡単ではなく、旧来の秩序と折り合いを付けながら漸進的なものであった。