本書は、2017年発売の、『おばけ美術館シリーズ』5作目となり、明らかな完結の表記こそ無いものの、実は6年以上経過した現在においても、続編は発売されておらず、「もしかしたらこれで…」といった感もあるが、また会えることを願って気長に待とうと思う。
小学五年生の女の子「まひる」館長と、美術品のおばけた
...続きを読むちが楽しく大活躍する、このシリーズは、柏葉幸子さんの作品の中では、おそらくライトな部類に入り、ちょうど、まひると同年代の子どもたちが楽しむのに最も適した内容だと思うのだが、それでも、柏葉さんならではの考えさせる内容もしっかり入っていて、大人が読んでもハッとさせられる部分があるのは、やはり凄いと思う。
それは、美術品としては三流と呼ばれることが、子どもたちに好かれることとは何の関係もないことや、そもそも「おばけ=怖いもの」といった、固定観念に捕らわれずに、物事を見ることの大切さを、シリーズ全体を通して教えてくれており、それは、私達が生きていく上でも、とても大事なことなのだと、改めて実感させられる。
そして、本書においては、中国風の子どもが必死な思いで、まひる達に、あかんぼうの「すなお」を託そうとする謎が明かされることにより思い知った、『おばけには、おばけにならねばならぬ理由がちゃんとある』ということがそれに当たり、それは決して、見た目だけでは判断することが出来ないし、そこには、この世に思いが宿っているのは、決して人だけでは無いといった、まさにファンタジーを書かせたら柏葉さんであるということを、まざまざと思い知らせた場面でもあった。
また、もう一つのテーマとして、遊園地がポイントとなっており、そこに見出されるのは、子どもだったら、純粋に乗り物たちに共感する思いだろうし、大人だったら、かつて幼い頃好きだった思い出が、ノスタルジックに心に描きだされるのかもしれず、そんな気持ちにさせられる物語の展開に、かつて離れていった弟が、兄を思う家族愛も加わることで、より味わい深いものになっており、私にとって、遊園地といえば、家族皆で楽しんだ記憶が最も印象深いので、この組み合わせには共感できるものがあり、とても嬉しかった。
最後に、このシリーズ恒例の、柏葉さんのあとがきですが、今回は『こもりうた』。
柏葉さんが中学生の頃、独身の伯母がいとこたちを寝かしつけるときに歌った歌詞は、
「ねーんねーん、ねこじまの、やぐらおとめ~」
という、インパクトのあるもので、確かに、ねこの住む島のやぐらの上にいる女の子の歌って、子守歌としてどうなのかと思ってしまったが(実際のところ、赤ちゃんに歌詞の内容は関係ないそうで、幸せそうに眠るらしい)、とても個性的で印象に残り、これが、柏葉さんが赤ん坊の頃に聞いた歌かと思ったが、お母さんが柏葉さんの娘さんに歌った、
「おーやまのおーやまの、ほそみちは、だれだれとおる、だれとおる~」
を聞いて、「えー、ねこじまじゃなかった」と、がっかりされたそうです(笑)
ちなみに私は、母から歌ってもらった、こもりうたを、全く覚えていない。
というか、覚えている人っているのだろうか?
ちょっと気になる。
今更、母に聞いてみたら、どんな反応をするのか、それはそれで楽しそうな気もしますがね。