北伝仏教で基礎学と言われる倶舎論を、初心者でも学べる数少ない書籍。入手の容易さや文庫故に安価であることも考慮に入れると、唯一の入門書と言っても過言ではないだろう。
最近では南方上座部の瞑想法の実践者も増えていることから、上座部のアビダンマの解説書はいくつか出版されている。しかし、大乗仏教の基礎となっているのは、上座部ではなく、本書で解説されている説一切有部のアビダルマ、具体的には世親の書いた倶舎論のものだ。
したがって、大乗への思想的な流れを知りたい人、大乗の基礎学に関心がある人には、本書が最良のアビダルマ入門書となるだろう。