伊藤龍平のレビュー一覧
-
- カート
-
試し読み
Posted by ブクログ
ツチノコについて、広く網羅した一冊だがあくまで視点と手法は民俗学のそれとなっている。故に、実在についてはあまり言及されていない。あくまで『ツチノコ』というモノが人間にとってどういうものなのか?そして、どう扱ってきたものなのかについての本。
読んでまず思ったのが、存外と狭い界隈なのだなと思う。
知られている割に既知のものが多い。ツチノコの目撃譚も取り上げられているが、記録はあくまで目撃譚で、具体的な物証はない。『ないものは、ないことは証明できない』という言葉が浮かび、人間というものは厄介だなあと感じた。
論の展開は丁寧で、参考文献も多く説得力がある。
その中で、多くを占めている『逃げろツチノコ』 -
Posted by ブクログ
怪談というものの定義と、それから分岐する創作怪談と実話怪談についての考察はとても面白く楽しく読めた。
単純な私は怖い話は、単純に怖い話で怪談であると思っていたが、怪談というものがそもそも語りであり、物語とはまた違う文脈と性質を持つというのはとても興味深く思えた。怪談が時に美談になり、笑い話となるというのも、指摘されてみればなるほどと膝を叩く内容で、そもそもとして語り手と聞き手の関係によって成立するものという根本的な部分が、すぱっと解説されているのも面白いと思えた。
物語と怪談の違いや、神と妖怪の差異といったものの事例としてアマビエが出てくるのも面白い。参考文献に気になるものがいくつかあったので -
Posted by ブクログ
「宮部みゆきが「本よみうり堂」でおすすめした本 2015-2019」に出ていたので。
民間説話の研究では、時代に無関係な「昔話」、歴史時代が舞台の「伝説」、同時代が舞台の「世間話」に分類する。
(これに対して、始原の過去が舞台で、神々が舞台である「神話」がある)
そして、ネットで生まれた説話だけでなく、
ネットの世界で流布して広がっていく説話を「電承説話」つまり「ネットロア」と著者は呼んでいる。
インターネットの登場は、説話の世界にも革新的な変化をもたらした。
地縁・血縁を母体としない説話(従来型の都市伝説)はすでに存在していたが、
「超都市的空間」で流通する伝承説話では、
巨大化した「関 -
Posted by ブクログ
台湾の大学で教える日本人が、教え子の卒論(ある小学校で怪談をテーマに調査した)をベースに書いた本。かならずしも怪談は専門分野ではないということだが興味深く読んだ。
「学校の怪談」があるのは日台共通だし日本から伝播した話もあるようだが、台湾では鬼(幽霊)に悩まされて退学してしまう学生がいたり、まじない屋みたいなのが繁盛していたり、日本よりかはだいぶ前近代的というか、幽霊が近しい存在であるようだ。
そんな台湾の大学でもっぱら女子学生に囲まれながら、陰陽眼のあるという(霊感があるみたいな)学生から個別の聞き取りをしたり、鬼について絵を描いてもらったりするアンケートをしたりしている。半分はクールに -
Posted by ブクログ
●:引用 他:感想
●「忌まわしい前代」の象徴として旧日本軍が持ち出されるのは、あの戦争に関係した国や地域ならばどこでも想定されうるし、実際、報告例も少なくない。(略)しかひながら、戦後の歩みはそれぞれの国・地域で異なっているため、現代の噂や世間話に登場する旧日本軍の位置づけは、多種多様である。たとえば台湾の場合、日本統治時代終了後に始まった2・28事件(1947年)と、それに続く白色テロによって、二つ目の「忌まわしい前代」が作られた。すなわち国民党時代である。それは台湾が民主化が始まる1980年代半ばまで続く。その結果、旧日本軍の噂は、国民党の圧政の事実を取り込むかたちで伝承されることにな -
- カート
-
試し読み
-