山本貴光のレビュー一覧
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インターネットでいつでも検索できるにしても、それらは巨大な倉庫に格納されている素材にすぎず、人が自らの人生を生きるためには、それらのフラグメントを自己の時間的/空間的にネットワーク化された記憶(五感も組み入れられた自分自身の内なるシステムともいえる)と相関させることが必要であるはず。その際には、自分自身の記憶について、「上手くできたインデックス」を活用できるとうれしい。コンピュータ/通信の技術を役立てるとしたら、このインデックスを洗練・高機能にできるという面ではないか。
と、いうようなことを語っておられるようだ。かっちりした解説書というよりも、ふんわりとしたケーブのような印象のエッセイ。 -
Posted by ブクログ
昔からコンピュータが苦手だった。しかしこれについて知らなければ、今感じているこの気持ち悪さは一生取れないのではないか。
コンピュータとは、コンピュータが当たり前になっているこの世界とは一体何なのか。
それが知りたいと思い読んだ。
質問と、それに対する返答という対話形式で書かれていて、疑問を一つ一つ確認しながら無理のないペースで読み進めることができた。
特に面白かったのは、プログラムの実行を、物理的にはどのように行っているのかという話。
電流のオン・オフによって、二進数の1と0を作る。いくつかの基本回路を組み合わせることで複雑な命令を表現することができる。回路がどういう仕組みで作られるのか、 -
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Posted by ブクログ
良い意味で素朴な文学読解の手引き書。解読骨子は与えてくれるわけではないので文学理論の便利な道具箱としては機能してくれない。だが、道具以前の手の使い方は十分に教えてくれる。シュミレーションをキーワードとする前半部は特に興味深い。文学作品内の事象を再現するためには、どのようなオブジェクトの設定が必要なのか、それによってどのような情景を描けるのか。また、登場人物の心理状態の変化と行動がどのように結びついているか、など基礎的ではあるが、拙速な読書の際に忘れがちなことを思い出させてくれる。文章による省略や感情の動きなど、再現が難しかったり、ブラックボックス化されていたりする部分があることについても無理に
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Posted by ブクログ
文学を読んでいるとき、私たちの頭のなかではどのように作中世界が構築されていくのか。ゲームクリエイターでもある筆者が「文章から読み取れる世界をコンピュータプログラムで作るとしたらどうなるか」をシミュレーションすることで、逆説的に浮かび上がってくる〈文学のエコロジー(生態学)〉を考える。
テッド・チャンと一緒に読んでいたのもあってなぜ例文に「あなたの人生の物語」がでてこないんだろうと思ってしまうくらい、言語コミュニケーションがもつ豊かさと不完全さへのまなざしに共通するものがあると感じた。チャンがあの分量で言ったことを説明するにはこの本ちょっと長すぎるんだけど。
バルザックを扱う前半はウンベルト -
Posted by ブクログ
記憶を自然、技術、社会、精神の4領域の観点から語るエッセイ
現在を情報の濁流と表現しており、まさにそうだと思われる
その中で適切に記憶するにはビオトープ、つまり安定した池のような環境形成が大切だと語られている
まさにその通りで、流れる情報をそのまま受けていたら処理しきれない
ビオトープを作るには工夫が必要であり、情報の遮断というのも一つ
また書籍での情報というのも一つの形
書籍は開かない限り情報として入って来ないが、置いてあるだけでもタイトルや物理的な形から漏れ出る情報は拾える
暗知的な情報取得の手段となる
普段、明確に言語化できていなかったことを文章として明示してくれて有り難かった -
Posted by ブクログ
AIとは、人間には不可能な全知に近い領域から、その対象にとって最も合理的な最適解を導く事の出来るツールと言える。桁数の多い暗算は人間には難しいが、計算機は即答だ。同様に、数字による規則性ではなく、言語による記号接地、つまり現物と言葉を対にして紐付け、概念にも言葉を当てはめ、自然言語をマスターした上で、それらの動きや関係性を考慮できるなら、圧倒的に人間を凌駕する。大企業の社長が企業全体のリソースや活用策を把握する事は難しいが、AIは可能だ。
「押すなよ、絶対に押すなよ」
この文脈は最後までAIには分からないが、分かる必要はない。ここが人間とAIの境目であり、皮肉や嫌味、ギャグや曖昧な表現は、不 -