Posted by ブクログ
2015年04月12日
法律の文体は一文がすごく長い。「それ」とか「これ」とかの指示代名詞が使われず、重複を承知でなんども同じ言葉を繰り返すからだ。なぜそんなくどいことを? 「それ」って何を指しているのかといったあいまいさをまぎれこませたくないのだ。といったことを、ていねいにやってくれる本。法律だけじゃなく、科学論文の文...続きを読む体、辞書の文体、批評の文体、などについて「なぜそうなっているのか思い巡らしている。
これは、私たちが日本語を「道具として」どう使っているのかという考察なのだ。例に出した法律の文章がいちばんおもしろかったのは、これがいちばん「道具」として使われている例だったからなのではと思う。
科学、とタイトルにあるが、検証可能であることを示すため、いちいち例を出してあるのはよい。ただ、小説の文体でレイモン・クノーもってこられたりするのはちょっとずるい気がする。
これを読んで文章がうまくなりたいとか、作家ごとの個性を解説してほしいとか、そういう用途には向かない。でも、やりようによってはもっとおもしろくなるアプローチなんではないかとは思う。