続けて旅客機の本。またしてもサイエンス・アイ新書からの選抜になるが、旅客機関連の書籍で初心者でも読みやすく、写真が豊富で値段も手頃なものが現状この新書のシリーズしか無いので仕方がない。本書は、旅客機が運行開始された20世紀前半から現代に至るまでの代表的な機体50機をピックアップして紹介している。スペックや型式の解説が主になっているので初心者には若干ハードルが高いが、旅客機の歴史を大局的に捉えるには最適の一冊である。
以下印象に残ったことを列挙。
・飛行機の安全性が大幅に上がったのは第一次世界大戦の影響。戦後は軍用機が旅客機に転用され始める
・世界初の全金属製旅客機は1919年初飛行のユンカースF.13
・ハンドレ・ページH.P.42の別名は「空飛ぶバナナ」
・水上機や飛行艇の利点は水面さえあれば滑走路が必要ない点だったが、陸上機の発達により姿を消す
・1930年代アメリカ旅客機市場ではボーイング、ダグラス、ロッキードの三社がシェアを争い、ダグラスDC-02/03が業界標準となる
・第二次世界大戦でジェットエンジンが登場
・イギリスで一番成功した旅客機は当時既に旧式だった木製複葉機のデ・ハビランド ドラゴン
・世界初のジェット旅客機はデ・ハビランドのコメットだが、墜落事故も多かった
・ボーイングが進撃を開始したのは1954年の707から。以後は基本的にボーイングの天下
・ダグラスはDC-09の売れすぎによる納入遅延からマクドネル社と合併を余儀なくされ、MD-80に名前変更。最終的にボーイングに吸収されて717となる
・機体の胴体を延長する事をストレッチという
・1970年代以降、旅客機の未来としてコンコルドに代表される「高速輸送」とボーイング747に代表される「大量輸送」の二つの道が示されたが、オイルショック等の影響で大量輸送路線が勝利する
・ヨーロッパ全体が協力しているエアバス社の体制はコンコルド開発時代の反省に基づいている
・旅客機生産数の最高記録はボーイング737の6687機
・現在の大規模空港でタラップの代わりに搭乗橋を使うようになったのは747などの巨人機への対応のため
また、前書きにも書いてあったのだが、現代の旅客機は経済性ばかり追求している結果、昔の物より没個性的になっていると感じた。逆に言えばこれからの旅客機は、「総二階建ての超巨大機」という特色を持つエアバスA380のように、明確で独特なアピールポイントを持つことが重要になるのではないか。