日本経済の状況をコンパクトに概観できる。見開きで解説と図表の構成もいい。
90年代以降の低成長とデフレの原因は、金融機関の不良債権問題の処理が2004年あたりまで続いたこと、経済のグローバル化によって労働者の賃金が抑制されたこと、情報通信技術によって価格が低下したこと、少子高齢化に対応した社会保障制度への移行が遅れたことによる需要不足があげられる。情報通信革命に乗り遅れたのは、労働市場の硬直性がそれを阻んだ面がある。
先進諸国では、1980年から2006年の間、所得上位層の人口は増えたが、中間層の人口は減少した。その原因としては、グローバル化と技術進歩の2つが大きい。
高速道路建設、住宅建設、宅地整備、工業団地の形成、中小企業などへの融資のために用いる財政投融資は、郵便局が集めた貯金や保険金、国民年金・厚生年金の積立金を財源としていたが、2000年代からは金融市場から調達されることになった。郵政公社は民営化されて、郵便貯金や簡易保険資金は自主運用されるようになった。財投機関である政府系金融機関は統廃合が行われた。
一般会計歳出のGDPに対する割合は、10%台半ばで推移していたが、2009年度から2012年度にかけて、厳しい景気後退や東日本大震災への対応のため20%を超えた。
小泉政権の三位一体の改革、すなわち国庫補助金負担金の廃止、税財源の地方への移譲、地方交付税の縮減によって、地方分権が進められた。
中曽根内閣における三公社の民営化は、戦後経済体制に大きな変革をもたらした。細川内閣の時、経済的規制は原則として撤廃、社会的規制については必要最低限にとの平岩レポートが公表され、橋本内閣や小泉内閣の下では改革が進展した。その後は既得権の岩盤に突き当たり、医療、農業、教育、雇用、金融といった分野で停滞している。世界銀行の事業環境ランキングをみても、日本の順位は低下している。