森政稔のレビュー一覧
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ネタバレ2度の政権交代を経て、自民党が政権に復帰しが、過去の自民党政治に戻ったとは必ずしもいえない。こうした政治の流れは、民主主義思想の視点からはどのように評価されるか。選挙で多数の支持を得たからといって、数に頼って自らの政策を強行するのは民主主義だと言えるのか、民主主義によっても奪えないような高次の規範は存在するのか。歴史的にみても、民主主義を選挙を通じた代表者の行動に限定するのは狭すぎる考え方である
「政治の役割とはそもそも何なのかを考えると、政治家が何か目立つ振る舞いをすることではなく、主体は個人、企業、NPO、自治体などであって、これらの主体のさまざまな活動が可能になるような条件を整えることである」(P151) -
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近年資本主義と民主主義に関する本が多数出ているのですが、著者によって視点やメッセージが随分違うので、はたしてみんなどういう意味で資本主義や民主主義という言葉を使っているのだろうといぶかっていました。たとえばヴォルフガング・シュトレークは「資本主義と民主主義の離婚」ということを言っています。またロバート・ライシュは資本主義の暴走、資本主義を救え、ということで資本主義の終焉論を述べていますが、他方シェアリングエコノミーの大家であるアラン・スンドララジャンは、シェアリングエコノミーの勃興は「大衆資本主義」の登場だということで、資本主義が滅ぶのではなく資本主義が高度な形に変質しつつあるという見方をしています。
このように資本主義については識者によってどう見ているかがある程度見えてきたのに対して、民主主義についてはこれが終焉に向かっていると見るのか、変質しようとしているのか、はたまた民主主義の行き過ぎが資本主義を圧迫しているのか、など、世の中ではどう見られているのだろう、と疑問に思っているなかで本書を見つけ購入しました。
私の疑問に答えてくれるという意味では非常に勉強になりました。本書では最初と最後に民主主義にまつわる議論の整理を俯瞰的にしてくれているので、自分の頭の整理が出来ました。また米国におけるリベラル、保守、リバタリアン、コミュニタリアンと呼ばれる人々の思想についても概要を理解することが出来ました。
他方、本書のメインの中身になりますが、日本の戦後の民主主義がどう変化してきているのか、著者の言葉を借りれば迷走してきたかについて記載されています。特に21世紀初頭の民主党政権とその大迷走およびその後の自民党一強時代に関する記述がメインとなりますが、こちらのメインコンテンツについては正直そこまで印象には残りませんでした。具体的には、目から鱗の記述があったかというとそうではなく、ある程度想定内の記載内容だったかなという感じでした。ただ民主主義に関する論点全般については頭の整理ができましたので本書全体としては大変満足しています。 -
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東大の講義ノートをもとに、戦後の社会科学を通観する。教科書的に幅広く網羅する関係上どうしても雑然とした印象が強くなってしまうが、それなりに時代を区切って思想を特徴付けることには成功している。
まずは丸山眞男からの出発となるが、丸山についてはかなり公平な評価と言えるだろう。丸山の思想は現代にも通用する部分と、「旧制一高の秀才の限界」が同居しており、多角的な評価がなされている第一部だけでも値段ぶんの価値はある。
その一方で、70年代の低成長、石油危機による不況あたりからレーガン・サッチャーを経て市場至上主義が進展する、いわゆる「新自由主義」についての解説には歯切れが悪い部分もある。もちろん、個人的な研究発表ではない本書において、「なぜ支持されるのか」という解明の進んでいない部分を歯切れ良く書けないというのはそうである。
しかし、大学という場所が基本的には進歩的な思想の場所であるゆえに、保守思想についてあまり紙幅を割いていないようにも感じた。とはいえ党派的な主張はほとんどないことからも、戦後の思想を網羅的に把握する上でかなり良い一冊であろう。 -
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ネタバレ「云われてみれば」という内容がとても多い。
「多数決はなぜそれがいいのか」「自由主義と民主主義は対立しうる?」というように、当たり前になっている。
内容としては、種々の主義主張(自由主義、民主主義、国家主義、ポピュリズム、リバタリアニズムなど)を対比させながら、もろもろの関係性を洗い出している。ただ同じような内容を繰り返しているきらいもある。
個人的には、「皇室は身分制度の飛び地であり、男女同権などの日本国憲法の制度は適用されない。」という了解には、目を見張った。
古典的な民主主義論に終始せず、新しい民主主義の解釈を垣間見た思いになった。 -
Posted by ブクログ
[ 内容 ]
かつて民主主義は、新しい社会の希望であり、人間の生き方を問う理想であったが、いまや、それも色あせ、陳腐なお題目と化している。
しかしそれは、単に現実が堕落したためではない。
その背後には、民主主義を支える思想が、社会の深層で大きく変化したという事情があるのだ。
本書では、デモクラシーのありようを劇的に変容させた現代の諸問題を、「自由主義」「多数者と少数者」「ナショナリズムとポピュリズム」「主体性のゆらぎ」といった論点から大胆にとらえ返す。
複雑な共存のルールへと変貌する姿を鋭く解き明かす試みだ。
[ 目次 ]
序章 現代世界と民主主義
第1章 自由主義と民主主義
第2章 多数と差異と民主主義
第3章 ナショナリズム、ポピュリズムと民主主義
第4章 誰による、誰のための民主主義?
補論 アメリカの政治理論における民主主義論の系譜
[ POP ]
[ おすすめ度 ]
☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
☆☆☆☆☆☆☆ 文章
☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
共感度(空振り三振・一部・参った!)
読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)
[ 関連図書 ]
[ 参考となる書評 ] -
Posted by ブクログ
私が新聞やテレビの報道を通じて感じている現代の日本をとりまいている民主主義への漠然とした幻滅がどこからくるのか、強行採決や衆議院再可決を繰り返し見せられるたびに去来する議会制民主主義の限界を知りたいと思って手に取った期待にこたえてくれた、新書ながら中身の濃い構成で書かれた本です。著者が冒頭で表明しているように、この新書は「民主主義」そのものについて書かれた本ではありません。民主主義が、それ自体と関係するさまざまな概念と混ざり合う中で、日本という国の民意がどのように揺り動き、国民がその経験から民主主義をどのように理解し、与えられた権利を行使してきたかをえがいています。
著者にとって衝撃的体験だったのが、小泉政権下でおこなわれた郵政民営化に論点を絞り込んだ選挙において自民党が大勝して「しまった」ことであることは文章の中から読み取れます。森氏は、小泉による劇場型政治の弊害によって民主主義の重要性と優位性が、ポピュリズムやナショナリズムという別概念の言葉ですりかえられてしまうことで浸食されたことを鮮やかに描き出しているように思えます。
小泉政治へのさめた目線は学者だからこそなしえることだと言えます。それはまぎれもなく、バブル崩壊後の長期停滞によって染みついてしまった閉塞感が原因となって、小泉により期待を抱かされた「ぶちこわす快感」にとらわれてしまった私たちのこころをあぶりだすのに、著者の文章は十分足りえます。特に以下で紹介する印象的文章には、私たちが選挙への投票行動を通じて強く意識するくらいしかない「民主主義」概念とはどのようなものなのかを教えてくれるように思います。
そして、それらの言葉は同時に今の私たちに欠けている民主主義への正しい理解と、利益や見返りを目の前に吊るされて、踊らされてしまっている理解の浅さを鮮やかに示すことでもあるように思えます。自分の一票では何も変わらないと思う人が多く、投票にもいかないのであれば自身が持つ政治的権利や、民主主義を意識することや、過去にどのような苦闘を経て今ある権利を手にするにいたったかを実感することもない。それならば、民が主であろうはずがないわけです。
そして、今は既に読み終わっているので言えることですが、最後の印象的文章を念頭に置きながら大澤真幸氏の『不可能性の時代』をよむことで、自己と他者との関係性が、具体的にどのようなことを意味するのかを知るための突破口になりえるのだと驚いている昨今です。それは、同書の感想文で具体的に書こうと思います。