森田長太郎のレビュー一覧
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タイトルからは、黒田日銀のQQEについての批判を書き連ねたものとの印象を受けるし、実際そういう部分もあるが、それは著者の視座の一部に過ぎない。
著者の関心は、この壮大な実験の来し方と行く末であり、それを可能にした「力」の分析である。
国債市場を壊された債券の現場からの単なる怨嗟の声として切って捨てるには、重く冷静な論理構成が続く。
日本における大規模な金融緩和という実験の根拠となったのは、米国の経済学者たちの「アドバイス」だが、彼らの理論をつまみ食いするのではなく、その源流から検証すべく第1章はアダム・スミスである。
そこから古典派とケインズ学派のせめぎあいを丹念に追った後、米国において両者 -
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外資系証券会社のアナリストによる国家のデフォルトについての本。極めて学術的かつ論理的に国家のデフォルトについて説明している。私には完全に理解できなかったが、結論は明確で、説得力があった。政治家をはじめ、幅広く人々が理解すべき内容だと思う。
「ハイパーインフレの例:1 1919~25年の間に、オーストリア、ハンガリー、ポーランド、ロシア、ドイツで、物価上昇率それぞれ、4000倍、2万3000倍、250万倍、400万倍、100万倍に達した。 2 1946年に日本は1079%の物価上昇を記録した。 3 1989年のアルゼンチンで年率500%、1980年~90年にかけて、ブラジルで断続 -
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双子の赤字時代の米国は、限られた資金を民間から国が奪うクラウディング・アウトの典型的なケース。
今は、お金を刷る(中央銀行が国債を購入する)ためクラウディング・アウトは発生しない。
金余り、とは民間の資金需要が小さいこと。
労働報酬の抑制→企業の金余り→銀行による国債購入の原資=労働者から国への所得移転で国の財政赤字が支えられている
デフレが国債を支えている
預金者が直接ではなく、銀行が介在して国債地方債を買う利点は、コア預金という考え方があるから。
ドーマー条件=プライマリーバランスが均衡していて長期金利が経済成長率を下回っていれば政府債務は持続可能である。
将来に渡る政府債務残高 -
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バークレイズの現役バンカーによる日本のソブリンリスクの概況の説明。日本経済はあまりに巨大であり、また現在対外債務がある訳ではなく、人口動態など先進国の将来を先取りしているフロントランナーで、過去の国家のデフォルト事例(流動性不足を契機にした韓国へのIMF介入が例示)はあまり使えないとしている。
デフォルト(支払いの遅延等狭義)およびデフォルトライクな状況(ハイパーインフレなどのネガティブインパクトなど広義)の定義。
現状の前例のない巨額の負債のファイナンス我そもそもできている理由:1400兆円の個人金融資産ではなく、企業貯蓄がこの20年の政府負債の増加分をファイナンスしており、デフレ環境が支え -
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SMBC日興で毎日JGBモーニングコメントを書いている森田氏の著作。タイトルの「経済学が世界を歪めた」や「経済ポピュリズム」とはなんのことだろう、と思ったらなんのことはない、黒田日銀体制・リフレ派への批判だった。
合理的経済人なんて実際には存在もしない仮想人物を設定して理論ありき、全然現実を予測できてこなかった伝統的経済学。そんなところに、デフレが日本経済の諸悪の根源で金融緩和すれば全てが解決するという”愚かなリフレ論”をアメリカかぶれの経済学者が持ち込んだ。バブル後の長引く不況に困窮したサイレントマジョリティは、"愚かな"のでこの単純なロジックに飛びつく。2000年代ネ -
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ネタバレ日本国危機、とか財政破綻、とかギリシャとかイタリアの
二の舞だとか叫ぶ発狂寸前の論説とは一線を画し、
市場を知っている人による冷静な日本のソブリンリスク研究。
新興国のキャッチアップ、人口動態の成熟化に先進国のなかで一番早く衝突したのが日本。
高齢化対応内需振興、社会保障再設計、一定程度の増税が対応策
10年たっても一社も倒産しないaaを三段階に分けても意味なし
Rarocを用いて投資成績評価
倒産確率や回収率や確率のボラを計算するのは不可能だから、信用リスク関連でレラティブバリューは無意味
資金需要不足がコクサイ低金利の大きな要因。これかデフレ脱却時、銀行の国債大量売却がありうる。
先進国