山脇直司のレビュー一覧
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本書は、社会哲学を専門とし
現在は、東京大学教授であるである著者が
近代以降の社会思想史について紹介する著作です。
著者は「近代主義の見直し」という問題意識の元に
まず、80年代以降の思想界における混乱をコンパクトに解説。
続いて、ヘーゲル、アダム・スミス、ダーウィンなど
啓蒙・近代を推し進めた思想家たちを紹介し
その「正の遺産」を振り返ると同時に、問題点も指摘します。
その上でアドルノ、ハタミなど
近代を見つめなおそうとした思想家や
「西欧」「啓蒙」に立脚しない思想家たちを紹介。
さらに、ガダマーや井筒俊彦らの成果を参照し、
対話と相互理解を -
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なぜか積読になっていた一冊。同じく積読になっている、ちくまの「名著30」シリーズを片付けるのに合わせて読み終えた。
まず、本書は2009年にリリースされた点を考えて読む必要がある。その10年近いズレが気になり、それほど期待しているわけでもなかった。
だが読み始めてしばらくして、ハンチントン、ウォルフレンをばっさりと片付けたあたりで「おや?」となる。S・J・グールドの科学と道徳性の関係についての記述のあたりからはもう読むのが止まらなくなる。
読み終えていろいろとおもうことは山ほどある。ちょっと場面転換が早い気もする。
たとえるなら、バイク仲間に「ざっと流そうか?」と誘われてついて行ったら、 -
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この本が必ずしも「公共哲学」の教科書ではなく、「山脇公共哲学」が記されていることに注意したい。
学問とは、それを構築しようというプロセス(試行)こそが学問なのだから、歴史上の様々な人物の思想・主張の各々を、「公共哲学的」であるか否かなどと批評(評価)する作業は、あまりエキサイティングには思えない。
とはいえ本書の表す「山脇公共哲学」には、随所で共感させられた。実際、ケア・福祉、コミュニケーション、地域単位の階層性と「地域性」、官民のはざまの存在(中間集団)、市場経済と公共・・・といった概念が、概念的・抽象的にも導出されていることが印象的。 -
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CSRのサイトで、著者である山脇直司氏の名前と、「公共哲学」なる言葉を見つけ、本書を選んで読んでみた。
「公共」という観点からは、社会学のフィールドのイメージが濃いが、本書で指摘される通り、社会学では、「価値」や「正義」の問題は扱わないのだろう。現実社会の分析のみならず、世の中がどうあるべきかを問うには、哲学的な考察が不可欠となる。
また、現代社会においては、国家である公(おおやけ)と、個人的な私(わたくし)の間に、どちらでもない「公共」世界が大きく開けている。経済活動の担い手である会社組織や、NPO・NGOなどである。
これら、多様な機能をになう組織社会と、個々の現実を背負う人間を包括的に対 -
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本屋さんでは色々な自己啓発本やハウツー本が並んでいますが、不透明な時代のいま、哲学や歴史が見直されていることには同感ですし、ついついこの本に手が伸びてしまったのもそんな理由からです。
本書は、私のような社会思想の初心者にも平易に書かれており、非常に読みやすい良書です。
近代啓蒙、リベラル思想にはじまって、かの有名なサミュエルハンティントン教授の文明の衝突、グローカル。こういった具体的なテーマから紐解いて、様々な社会思想がうまれた時代背景がつかめます。
とっつきにくいテーマにも関わらず、非常に分かりやすくコンパクトにまとまっており、他に読んでいた本ともクロスして、より深く読んでみたい -
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リベラルな文体ながら、決して普遍主義一辺倒にならない形で公共性の在り方を描いている。「活私開公」は本書のメインテーマであり、最終的な目標でもある。これは戦前戦中の「滅私奉公」や、現代の過度の個人主義(「滅公奉私」)を否定し、全体主義でも個人主義でもない、「個人を活かして公共性を作り出す」という新しい発想である。さらに筆者は、公共性を単なる公私二元論のレベルではなく、政府の公/民の公共/私的空間 という三つの段階から論じている。そしてこの「民の公共」を、古代ギリシャの時代から現代までに至るまで、思想史的になぞっていくのが本編の前半部分であり、公共哲学についての入門書としては大変分かりやすい。
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公共哲学の日本における第一人者である著者が、公共哲学の理念と概要をわかりやすく解説している本です。
本書の前半では、哲学や社会学、政治学といった諸学問を横断的に見渡しながら、東西の思想家たちの取り組みを公共哲学という観点からまとめています。また後半では、政治、経済、社会、科学技術、教育、宗教といった諸分野において公共哲学の理念がどのように追及されるべきなのかという問題が論じられ、さらにグローバル時代においてローカルな立場とグローバルな立場の相克を乗り越える「グローカル」な立場を確立するという目標が語られています。
公共哲学のマニフェストといった感じの内容で、一つひとつのテーマに関してちょっ -
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現代社会を捉え、未来社会を構想するための社会思想史という学問。欧米中心的な進歩史観からの脱却を目指し、多元的な社会を生きていくための社会思想を探る。
あまりにさらさらとした語り口調なので、引っかかりにくいかなあと思いつつ、扱っている主題からするとこのくらいの距離がちょうど良いのだと思います。
本書で紹介されている社会思想について、印象に残ったものを。
・集団的権利と集団に属する個人の基本権を共に保障する政策によって、文化の多様性と文化横断的価値(人権)の両立を目指す、多文化主義。これを唱えるキムリッカは、1948年の世界人権宣言を人権革命とし、その延長上に多文化主義を捉えている。
このキム -
Posted by ブクログ
[ 内容 ]
人びとの間に広まるシニシズムや無力感、モラルなき政治家や経済人、やたらと軍事力を行使したがる大国―こうした大小さまざまの事態に直面して、いま「公共性」の回復が切実に希求されている。
だがそれは、個人を犠牲にして国家に尽くした滅私奉公の時代に逆戻りすることなく、実現可能なものだろうか?
本書は、「個人を活かしつつ公共性を開花させる道筋」を根源から問う公共哲学の世界に読者をいざなう試みである。
近年とみに注目を集める「知の実践」への入門書決定版。
滅私奉公の世に逆戻りすることなく私たちの社会に公共性を取り戻すことは可能か?
個人を活かしながら公共性を開花させる道筋を根源から問う知の実