妙木浩之のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
フロイトの人生を抜きにして精神分析は語れない、という言葉どおり、フロイト入門であり、精神分析入門である。
精神分析は文脈の科学だと著者は言うが、確かにこの本は、フロイトそのひとの生い立ち、精神分析の創造過程におけるいくつかの文脈が交錯している。
それらの文脈は、父との関係、子との関係、患者との関係に整理できるが、この整理じたい、オイディプスが孕む矛盾そのものである。
精神分析はそもそも矛盾を孕むものなのだということが良く理解できる。
エビデンスベースドを重視する認知行動療法と、この文脈の科学は対照的、というか、そもそも発想がまったく違うということがよくわかる。
また、文脈の違いという点では、ア -
Posted by ブクログ
精神分析というのはもちろん一つの学問ではあるのですが、部外者から見るとどこか秘教的なものがあるように感じられます。著者は、フロイトを中心とする精神分析特有の考え方を、生物の進化や人間の行動の社会的意味などの議論へと「開いて」いくことで、精神分析を部外者にも近づきやすいものにしようと努めています。
また、精神分析はトータルな観点から人間の心理をあつかうという理解に基づいて、抗精神病薬や抗鬱剤といったドラッグ・サイエンスにまつわる問題点も指摘しています。
フロイトの入門書などを読んでみても、「どうもしっくりこない」「どこか胡散臭い」と感じてしまい、精神分析の世界に入っていくことができないでいる -
Posted by ブクログ
新書ということで軽いタッチで書かれたものなのかと思いきや、全然そんなことはなく、むしろしっかりとした内容のものになっていた。精神分析家と言われる人たちが、分析すべき相手の心を扱う人たちなのかと思っていたが、むしろ自分の心を分析され現状を知った上で客観的な判断をくだせるということは驚きであった。言葉、表情、行動など、どれもこれも単一なようでどこかでしっかりとつながっている。本人が自覚しているものもあれば、そうでないものもあり、それを冷静かつ適切に見抜けるようになるには、本当に骨が折れることのように思えてならない。人は人であるとともに、それと同じくらい動物的でもある。まだまだ自分も相手も未知数なこ
-
Posted by ブクログ
フロイトの思想、考えや解釈の仕方についての入門書かと思っていたのだが、本当に「フロイトの入門書」だったなあ。フロイトがどう生き、どの過程で思想を導きだしたか。あの論文の背景にフロイトのどんな経験があったのか。
読む前の予想とは違ったけど、なかなかこれはこれで学べるものはあります。著者も作中で言っていることだが思想をしっかり理解し、どの考えが自分は受け入れられて何が受け入れられないのかを知るためには、フロイトの人生を知っておくことは大切だろうなあと思う。面白い本ではあった。
でも、あくまでフロイトの伝記に近いもので、精神分析のなんたるかは大して扱われていないですね。多少なりとも知識がある人向け -
Posted by ブクログ
[ 内容 ]
精神分析100年。
―1900年ウィーンの小さな出版社から刊行された『夢判断』という謹か数百部の書物が世紀を超えて大きな影響を与えつづけることを誰が予想しえただろう。
エディプス・コンプレックスの発見と夢の分析を通した無意識世界への限りない探究。
フロイトが開花させた精神分析は、複雑な家族構成や葛藤に彩られた彼の生涯と思索の軌跡を映しだす鏡でもあった。
近年暴かれつつある新たな史実やスキャンダルの意味を検証しながら、現代に甦る新しいフロイト像を描きだす、気鋭の精神分析学者による清新な入門書。
[ 目次 ]
第1章 ユダヤ人としてのフロイト
第2章 科学者としての人生
第3章 催