本の内容と主旨は、すでに皆さんがかなり正確にまとめているので、あまり指摘されていない点について感想を述べる(タダ乗りは失礼?)。
この本は、「女子会」という名目でおこなわれた、現代女性という広いテーマを扱ったディスカッションの内容をまとめたものだ。付録として、後日、参加者がめいめいの論考を寄稿してい
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付録の方はまだしも、ディスカッションの部分では、肉声ならではの「思いつき」「首尾の非一貫性」「不用意な言葉」が飛び交い、論題はあちこちに飛ぶうえ、各議論の結論が示されていない。
これは本紙の美点であるが、汚点ともなる。多彩な考えを知ることができる半面、その正誤を判断するのも、論者の意図を掴むのも、我々読者に任されているからだ。
「不用意な言葉」の一例として、文中に示されていた「ホモソーシャル」という言葉を挙げる。
私はこの言葉を知らなかった。こうした難解語に対して、本紙ではきちんと注釈をつけている。その点は素晴らしい。
しかし、最近、海外小説の「ミレニアム」を読んでいた私は、その説明を読んで「つまり、マチズモのことじゃないの?」と考えた。wikipediaで両者を比較すると、ほぼ同じ意味で、マチズモの社会学的用法がホモソーシャルであるようだ。
ならば、より社会で通用する言葉を使うべきだと思う。
両者はカタカナ語であることから、本来の形である英語を含めて用例を比較すべきと考えて、Googleの検索エンジンで「ホモソーシャル」「homosocial」「マチズモ」「machismo」をそれぞれ検索し、ヒット数を比較した。この結果、投稿時点では「machismo」(約196万件)>>「ホモソーシャル」(約88万7000件)>「homosocial」(約19万件)>>「マチズモ」(約1万9000件)であり、カタカナ語としては「ホモソーシャル」の方が多用されているが、英語を含めれば、「machismo」の方が桁違いに通用していることがわかった。
であれば、本紙も「machismo」のカタカナ語である「マチズモ」を正式表記とする方が正確ではないか、と指摘するのは、恐らく私だけではないと思う。
(注記:「machismo」のヒット数は、同じGoogleの検索エンジンであっても、Google日本とGoogleUKの場合でさえヒット数が違う。上記の数値はGoogleUKの場合。Google日本のヒット数は約43万5000件。「homosocial」は両者相違なし)
このように、指摘しようと考えれば多方面から指摘できる程度の内容を、ほとんど校正せずに、女子会の雰囲気を活かしてそのまま載せたのが、本書だ。
繰り返すが、これは本書の美点であり、汚点でもある。
私は、本書で示されている多彩なアイデアを買った。そして、本書が間違いのない事実を記載した学術書ではないという点は重々承知している。
これから本書を手に取る読者諸氏にも、斯様であられたしと思う。