波多野澄雄のレビュー一覧

  • 決定版 日中戦争(新潮新書)
     日本の行動を見ると、遅れた戦争をしているとつくづく思う。まるで第一次世界大戦時のドイツの劣化コピー。
     第一次世界大戦時のドイツも皇帝・軍部・政府・議会・各州各地域に権力が分散していた。第一次の時に敗戦したことが権力集中を可能にし、皮肉にもヒトラーの台頭につながったといえる。
     第一次の敗戦を経験...続きを読む
  • 国家と歴史 戦後日本の歴史問題
    筑波大学人文社会科学研究科教授(日本政治外交史)の波多野澄雄(1947-)による、戦争犠牲者への国家賠償を中心とした戦後日本国家の歴史観の検証。

    【構成】
     序章 戦争検証の挫折
    第1部 サンフランシスコ講和体制
     第1章 東京裁判と戦犯釈放
      1 東京裁判 遠ざかる日中戦争
      2 講和と戦犯...続きを読む
  • 決定版 日中戦争(新潮新書)
    有識者5人により日中戦争について書かれた本。3部10章から成り、5人で各章を担当している。特に、戸部先生と庄司氏の内容が素晴らしく、勉強になった。

    「(日中専門家による共同研究)太平洋戦争の勃発によって中国は、世界大の「反ファシズム統一戦線」の重要局面である中国戦線を一手に担い、日本軍を消耗させた...続きを読む
  • 決定版 大東亜戦争(上)(新潮新書)
    冒頭が太平洋戦争ではなく大東亜戦争というのでイデオロギー色の強いものかと思えばさにあらず。太平洋という米軍相手のものではなく、英米中ソとのそれぞれにある程度独立したものが重なった複合戦争で広域で行われたことと、戦争目的が開戦時の自存自衛から大東亜新秩序建設に変容していったことを主な理由としている。
    ...続きを読む
  • 決定版 大東亜戦争(下)(新潮新書)
    特に第7章戦争指導体制、第9章戦争終結、第11章賠償問題が勉強になる。個人的には下巻の方が面白かった。
    ・日本は統帥権を実務レベルで調整する仕組みを最後まで持たず、大本営会議は報告の場に過ぎなかった。これは、デモクラシーのイギリスが戦時独裁を許容したこととの対比で興味深い。
    ・日米間に存在した信頼関...続きを読む
  • 決定版 大東亜戦争(下)(新潮新書)
    上巻に続いて、下巻では大東亜戦争や太平洋戦争と言う名前付けや、戦後の皇族のアジア諸国に対する慰霊の旅や戦争終結に向けての動きなどが書かれています。
    大本営と言う存在が上手く機能せず、軍部が勝手に動いて、中国での戦争の場を広めていく。政治家である民が軍をコントロールしないといけないが、それが出来ない国...続きを読む
  • 「徴用工」問題とは何か 朝鮮人労務動員の実態と日韓対立
    要点がよく整理されており分かりやすい。また日本、韓国どちらかに寄りすぎることもなく理性的に解説してくれている。この問題の入門書としては最適。
  • 決定版 日中戦争(新潮新書)
    日中戦争は、本当によくわからないものだったので、一つの理解の筋を得られたように思った。はじめてしまったら、なかなか終われない。なんでとそうだが、難しい。終結の難しさ。御前会議での陸軍の頑固さは何かと思っていたが、中国での戦いを考えると、確かに理解出来る面がある。目の前の相手に、全く負けていないのに、...続きを読む
  • 決定版 日中戦争(新潮新書)
    229頁2行目で、
    カイロ会談当時、「中華民国国民政府主席」であったはずの蒋介石の肩書きは「総統」と書かれる。
    専門者にとっては、とんでもないミスではないか...
  • 国家と歴史 戦後日本の歴史問題
    太平洋戦争が終わってもうすぐ70年が経つというのに、いつまでたっても出てくる戦争の話題。何で今も中国人や韓国人が訴訟を起こしてるの?歴史教科書問題ってよく騒いでるけど何でそんなに騒ぐの?という戦後生まれの方々に是非オススメ。
    戦後史をずっと研究していた著者様(大学教授)なので、非常に言葉を選んで中立...続きを読む
  • 国家と歴史 戦後日本の歴史問題
    週刊東洋経済の「読書特集号」で、推薦されていたので読んでみた。

    一言で言えば、戦後の日本と東アジア諸国との見解の違いがどのようにして生まれたのか、政治史の視点で丹念に追った本だと思う。新書にしては、中味は濃いと思う。

    内容は3部にわかれており、一部のサンフランシスコ講話体制では、先般の扱い、国家...続きを読む
  • 国家と歴史 戦後日本の歴史問題
    【読書その5】久しぶりに今の職場に直結の本。著者は筑波大の波多野澄雄氏。慰安婦問題に対処するアジア女性基金の資料調査、村山内閣のアジア歴史資料センターの設立準備と運営、安倍内閣の日中歴史共同研究、政権交代後の日米「密約」問題に関する有識者委員会の委員、そして今の職場の関係では九段の昭和館の有識者会議...続きを読む
  • 「徴用工」問題とは何か 朝鮮人労務動員の実態と日韓対立
    「徴用工」について、かなり客観的に交渉経緯や法的根拠などを著述する。

    ほぼほぼ世間に出ている論と変わりない。が、その同意に至る交渉を、薄い本ながらコンパクトに説明していただいている。

    そうは言っても、歴史的、国民感情的な問題があって、経済力もついてきたんだが、そこも含めて新しい解決を図らないとい...続きを読む
  • 国家と歴史 戦後日本の歴史問題
    確かに国家には歴史観は必要だと思う。定まった考えがなければ施策を上手く説明、理由づけするのは難しくまた世論の納得感も得られない。過去を誤りのない真実はとして証明するのは不可能だ。それを絶対と決めつけるのが危険な事も分かる。
    絶対はないと言う前提のもと、自分なりの考えを持ち人に強要する事なく、あらゆる...続きを読む
  • 決定版 大東亜戦争(上)(新潮新書)
    最初は「失敗の本質」のような戦略面からの日本の失敗を書いたものかと思いましたが、日本という立場だけでなく、アメリカやイギリス、そして中国から見た太平洋戦争と言うのが興味深かったです。
    先進的なアメリカでも、海軍や陸軍で利益が異なり、一枚岩てなかったと言うのも始めてしりました。ヨーロッパと太平洋の2面...続きを読む
  • 「徴用工」問題とは何か 朝鮮人労務動員の実態と日韓対立
    日韓の国交正常化への議論の流れを丁寧に追う叙述は大変勉強になった。双方のギリギリの妥協と言わばごまかしの産物だと思うと、両国の当時の交渉担当者に頭の下がる思いである。

    本書はしきりに、日本の植民地支配は韓国の近代化を助けた側面がある、徴用工の労務環境はさして劣悪だったとは言えない、強制的なものも少...続きを読む
  • 決定版 日中戦争(新潮新書)
    ・南京事件
    南京陥落前後に生起した日本軍による南京事件は、現在でも活発な議論がなされているが、外務省のウェブサイトの「歴史問題Q&A」では、「非戦闘員の殺害や略奪行為等があった事は否定できないと考えています。しかしながら、被害者の具体的な人数については諸説あり、政府としてどれが正しい数かを認定する事...続きを読む
  • 決定版 日中戦争(新潮新書)
    失敗の本質を改めて整理できるかと期待して読んだが
    これまでと同じ事実の整理に留まっている
    特に、太平洋戦争の開始は
    誰もが「合理的にはあり得ない」としたという指摘だが
    それゆえにこそ、開戦に至った謎
    何より開戦の決断のした者は誰なのか?
    77年を経て、自国の責任を明らかに出来ないこの国
  • 国家と歴史 戦後日本の歴史問題
    タイトルが内容と一致していない。副題の「戦後日本の歴史問題」が適切だろう。内容は戦後の戦争責任問題を追った労作だが、経緯に重点を置いた記述は少々退屈。