角田喜久雄のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
名こそ知っていたが、初めて読む角田喜久雄のミステリー、というよりも探偵小説と言った方が相応しいか。
本書は、警視庁捜査第一課長・加賀美敬介が登場する全短篇を一冊にまとめたものである。
シムノンのメグレをモデルにしたとのこと、そう言われると、確かに雰囲気が感じられる。市井の人々に向ける視線であったり、寡黙な中にも人情が窺われるところなど。
作品の舞台となるのはだいたい敗戦後の東京。捜査に当たる加賀美の目を通して、戦争により運命が変転してしまった人々の間に起こる事件が描かれる。その推理により事件は解決をみるのだが、謎解きものとしての面白さはもとより、短い一編一編の中に、悲しいドラマが沁