企画の(半分)勝利。
1970年~1980年代のミュージックライフを読んで育った田舎キッズにとって、当時のクイーンは編集長の激推しもあって鮮明な記憶があります。デビュー時本国では色モノ的見方しかされなかったバンドの実力と魅力に気付いた東郷かおる子氏の慧眼に改めて感服。
本書は彼らの代表作「ボヘミアン・ラプソディ」の歌詞の謎に迫ります。この曲は、1999年に行われた「過去100年で英国人にとって最も重要な曲」1位に選出された曲でもあります。そんなレジェンド曲の歌詞がフレディー・マーキュリー(Freddie Mercury、1946年9月5日 - 1991年11月24日)のカミングアウト曲なのではという噂を検証していくスタイルで進行します。
結論から言えば、ゲイもしくはバイセクシュアルであったフレディーが、自身の宗教上のしがらみ(ゾロアスター教)と家族(移民で厳格な親)を守るために隠さざるを得なかったセクシャリティ問題がこの曲の背景にあったことは事実のようです。っていうか、短パンやレオタード姿でステージに上がりその仕草も含め観客のほとんどは気付いていましたよね。それが謎にされたのは、当時の風潮がLGBTにまだ保守的でフレディー自身やメンバーたちも口を閉ざしていたからに過ぎません。
本書にも出てくるNHKドキュメンタリー「世紀を刻んだ歌 ボヘミアン・ラプソディ殺人事件」(2002年)には既にこの説が紹介指摘されています。
そしてラミ・マレック主演映画「ボヘミアン・ラプソディ」2018年、本書2021年という流れです。
フレディーのソウルメイトとなる3人(異性の恋人メアリー、ゲイ友のジム、ゲイ友でマネージャーのポール)の関わりについても言及し、フレディーの遺産相続でメアリーとジムが揉めていた話も。
たしかに企画自体は興味深いのですが、既に謎が謎ではなく、本書の中にも重複する部分が多々あることからも、半分程度にまとめた方が読みやすいと思いました。残りのページで、あと2~3曲の歌詞解説をしてボヘミアンラブソディの謎の補強とか出来なかったのかな。
PS
ちなみに、私にとってのクイーンベストは初ヒットとなった「キラー・クイーン」です。好きな曲は「You are my best friend」「We are the champions」「I was born to love you 」「ボヘミアン・ラプソディ」などドラマチックな曲に魅力を感じます。