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米国とメキシコを隔てる3200キロの国境に世界中の移民が集まっている。中南米のみならず、アジア、アフリカからもやって来るのはなぜか? 麻薬組織が支配する砂漠、猛獣が棲むジャングルを越えて向かう理由の中に、私たちが知るべき世界の真実がある。2019年度ボーン・上田記念国際記者賞受賞の迫真ルポルタージュ。
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Posted by ブクログ
南米からの移民の話と思って読み始めたが、アメリカを目指して世界中から移民が押し寄せていることなど、自分がいかに無知だったかを認識させられた。 より豊かな生活を求めて、という経済的移民はわずかで、文字通り生きるために命を賭して、危険な道行きを重ねる追い詰められた移民たちの姿に、胸が痛む。
移民キャラバンの映像を見てもメキシコ人としか思ってなかったが、実態や過酷さを知ることで現実の理解に厚みが出来たように感じる。これぞノンフィクションの醍醐味。
朝日新聞をお辞めになって、そのあとのコロナ禍でどうしておられるのかと気になったら、なんとウクライナ取材をしておられた。なんとすごい! 戦時下の国で、自分の身を守りながら取材するためには、資金がかかるだろう、会社持ちでなくなってどうされているのだろうと心配になる。 地中海を小さなボートで渡るシリア難...続きを読む民の人々の記事などは読んでも、中南米からアメリカに行く移民、難民の人のことは、「トランプの壁」まではあまりにも無関心、この本を読むまではあまり考えたことがなかった。 自分の国、自分の家に安心して家族と住めない、殺される、選択肢なく、命懸けで国境を越えようとする人の姿は、そこまでの危機ではない日本の私には想像がつかない。だからこそ綿密な取材をし、記事 や本にしてくださるジャーナリストの方には感謝するしかない。取材するのも命懸けだ。 確かにどこの国に生まれたかどうかで、人生が違いすぎるのはあまりにも不条理だ。 どの国に生まれても、母国で安定して家族と住めるように世界は進んでいかなければいけない。お金の問題なのだが、いくらお金を援助しても、お金だけではどうしようもない例がこの本にも出てきた。アフリカ等でも同じことが言えるのだろう。 そのお金を使って、その国の人たちが働く場所を作る、仕事を作る、子供たちが安心して教育を受ける環境を作る等、いっときではなく、継続的に、発展的に生きるお金の使い方をしていかなければならないと思う。 お金、お金と言ってるのが自分でどうなのかと思うが、貧困、富の偏りによる問題が世界中であまりにも多い。使いきれないほどのお金を持ってマネーゲームをしている人たちのお金が、こういうところに回っていかないのかなぁ。だって使いきれないでしょうよ、自分だけでは、と思う。 この私に何ができるのかと考えるべきところを、お金持ちのせいにしてしまったぞ、私。
移民の実態はこんなにも命懸けのひどいものだったとは. そして今はコロナもあってもっと厳しい状況だと思う. 来られる国にもそれを拒む理由がある.どうすればみんなが幸せになれるのだろう.
アメリカ前大統領のトランプは以前、メキシコとの国境に壁を作ると宣言した。国境の壁といえばベルリンの壁であり、もはや冷戦時代の遺物というイメージ。 結局、様々な批判や問題があふれ、壁はできないまま、トランプは失職した。が、この壁発言によって、移民たちの侵入はアメリカ国内の大きな問題となっていることを...続きを読む世界中が知ることになる。それどころか、中南米諸国で暴力と貧困から逃れたい人々にとって、壁ができる前に行動を起こさなければと、アメリカへの移住を後押しする結果となった。なんとも皮肉だ。 著者は何度も中南米を訪れ、徒歩やヒッチハイク、列車でアメリカを目指す移民たちの行動を取材。移民たちは入国審査がずさんな国に入り、そこから陸路でアメリカやメキシコなどの豊かで平和な国を目指していた。 そして、2018年。これまで国境を越えようとする人々は少数でひっそりと移動することが当然だったのに、1000人を超える人数が集団で行進をはじめた。それは聖書に記されるエジプト脱出の民「エクソダス」に例えられる。 今後、アメリカには、より多くの移民が堂々とやってくるのだろう。おそらく壁や軍隊などのリアルな力は役に立たない。「国境のない世界」を本気で考えるときなのかもしれない。
体当たりのレポというしかない。 アメリカという巨大な経済に吸い込まれる移民たちの命がけの道のりを、著者も命がけで辿る。 本書を読むと難民と移民の区別がむなしくなる。
○1946~1948の米墨戦争で、現在テキサス州やカリフォルニア州などを含む広大な土地が米国領土になった。この結果、多くの「メキシコ人」が「メキシコ系米国人」になった。 ○国境から100マイルまでは警備隊は令状なしでバスや乗用車を捜索できる。
村山祐介(1971年~)氏は、立教大学法学部卒、三菱商事勤務、朝日新聞社でワシントン特派員、ドバイ支局長、経済産業省・外務省・首相官邸等の担当、GLOBE編集部員、東京本社経済部次長等を経て、フリージャーナリスト。2021年からオランダのハーグ在住。 2017年からアメリカ大陸を舞台にした移民を追っ...続きを読むた取材を行い、朝日新聞日曜版GLOBEの特集で、「壁がつくる世界」(2017年10月)、「『野獣』という名の列車をたどって」(2018年3月)、「エクソダス 壁を越える移民集団」(2019年5月)の移民3部作を掲載。それらに加えて、ウェブメディアで掲載した関連記事をもとに、大幅に加筆・再構成したものが本書で、2021年に講談社本田靖春ノンフィクション賞を受賞。インターネットTVやテレビ朝日でもドキュメンタリー番組・特集が放映され、2018年にATP賞テレビグランプリ・ドキュメンタリー部門奨励賞受賞。また、一連の取材で、2019年にボーン・上田記念国際記者賞を受賞。 本書は、上記の通り、メキシコ国境からアメリカを目指す移民について、誰が、なぜ、どこから、どのようにして、移民として立ち現れるのかを、アメリカから、メキシコ、中米諸国(エルサルバドル、ホンジュラス、パナマ等)、コロンビアまでを縦断して取材を行い、明らかにしたものである。ただ、この地域の国々は治安が世界最悪とも言われ(2017年の10万人当たりの殺人発生率は、エルサルバドルが61.7人で世界1位、ホンジュラスが41.0人で4位。日本は0.2人)、また、著者は、パンアメリカン・ハイウェイが唯一繋がっておらず、世界最後の秘境のひとつとも言われる、パナマとコロンビアの国境のダリエン地峡にも足を踏み入れており、文字通り体を張った取材となっている。 私は、日頃から国際情勢について関心を持っており、メキシコ国境からアメリカを目指す移民・難民についても報道レベルでは知っていたつもりだが、本書で初めて知ったこと、気付かされたことが多数あった。備忘も含めていくつか記すと以下である。 ◆アメリカにおいて、国境の壁の建設に賛成なのは、国境からは遠く離れたラストベルトなどに住む白人労働者が多い。国境近くに住む人たちは、経済的にも社会的にもメキシコ側と一体性があるため、寧ろ壁の建設に反対の人が多い。 ◆中米諸国(エルサルバドル、ホンジュラス等)からアメリカを目指す人々は、治安が最悪の国に住み、マフィアから逃れるために、密かに国を離れる人が多い。 ◆2010年代半ばから目立つようになった「移民キャラバン」は、カリブ海諸国、アフリカ、アジアからの人々が、移動の途中(中米諸国等)で合流して集団となったもので、大規模でハイプロファイルな(目立つ)点が、それまでの移民と異なる。中南米大陸以外からの人々は、パスポートやビザの制限を受けない南米の国(エクアドル等)へ空路で入り、そこから陸路でアメリカを目指す。 本書が明らかにしていることは、一口にアメリカを目指すと言っても、その行程は、合法的なものばかりでない上、いつ行き倒れるかわからない密林や乾燥地帯、いつ殺されるかわからない治安が最悪の地域を含み、また、我々の常識では想像できないほどの長さがある、ということである。しかし、それでもアメリカを目指す人の数は、増えることはあっても減る気配はない(欧州の先進国を目指す人の数も同じだ)のはなぜなのか。それは(言わずもがなで)、貧富の差、社会の分断、治安悪化、地域紛争などにより、母国で生きることに絶望し、命懸けで国境を越える決断をせざるを得ない人々が増え続けているからなのだ。好き好んで移民になる人などいるはずはない。 とすると、我々(特に先進国の人々)が本来するべきことは何なのか。。。それが壁を作って移民を拒否することであるはずはないのだが、実は、壁を取り払って移民を積極的に受け入れることですらないのかも知れず、それは、多くの人々が国境を越えなくても生きていけるような、貧富の差、社会の分断、治安悪化、地域紛争などがない世界への道筋を描くことなのだ。 ビザなしで渡航できる国と地域が191に達し(コロナ禍前)、「世界最強」と称される日本のパスポートを持つ人間として、移民について改めて考えるきっかけをくれる力作と思う。 (2024年7月了)
多くの国や地域から、様々な方法でアメリカに入国しようとする人々。彼らを阻むために、メキシコとの国境に巨大な壁を建設すると公約し当選した大統領。だが、国境にはすでに壁が存在していた──。 そんな基本的な事実も知らずに、なぜ中南米やアフリカ、はたまたアジアから大勢が国境を目指すのかを理解できるはずもない...続きを読む。本書はその“なぜ”に迫る骨太なノンフィクションだ。生ぬるい日本に暮らす我々には決して理解できない厳しい現実が描かれている。 第43回講談社本田靖春ノンフィクション賞受賞作。
日本に住んでいて不平を垂れる人を見かけますが、今でも日本がどれだけ平和で住みやすいかを確認する事になる一冊です。同じ地球上で生きながらも生まれた場所、居る場所が異なるだけでこれだけの惨状を被る事になるとは。 米前大統領が壁を作る事に意欲的に取り組んでいたのも、本気半分/選挙・在職期間中の政治的パフォ...続きを読むーマンス半分な気がしています。センシティブな問題な為に代表が長期的なアピールをする事は、火に油を注ぎ続ける事と同義であり、またこの現状を世界的に知って欲しい傍ら、知られてしまうと密航ルートが公になり余計な死体の山を築く事になりかねない、という二律背反が潜んでいる問題です。なので、この一冊でも描き切れていない部分があるという所までは想像した方が良いのでしょう。 巻末で語られる「国境を越えなくても生きていける」「誰も置き去りにしない」という言葉のなんと空疎な事よ。
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エクソダス―アメリカ国境の狂気と祈り―
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村山祐介
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