Posted by ブクログ
2020年07月04日
美大受験に失敗して焦りを感じていた山本さん。彼女は人生をリセットするために、誰も自分のことを知らない町・神戸で暮らし始めるが…。新天地で体験した“二度と戻りたくない一年”を描くコミックエッセイ。
『岡崎に捧ぐ』で触れられていた暗黒の時代。実際に語られてみると想像以上に心が苦しくなった。アイデンティ...続きを読むティに不安を抱き、希望を求めた先で待ち受けていた悪意の嵐。そんな中でもこの状況は「誰のせいでもない、全部自分のせいなのだ…」と受け止めてしまう山本さんのマジメさは自分も共感を覚える。
『岡崎に捧ぐ』などの著作とは違って、笑えるマンガではないので要注意。人の弱くて黒い部分を描いている。ただ、それでも読みやすいのは山本先生の絵柄や、出来事を素直に描き出しているところだと感じる。この生活から13年経った今だからこそ描けたんだろうね。復讐心ではなくこの体験を成仏させるためには、それだけの時間が必要だったんだなと。
ぼくも心の整理をつけるために文章にして過去を振り返っているんだけど、想像以上にしんどくて泣きそうになった。これを描こうと考え、そしてやり遂げた山本さんを尊敬します。透明人間だった神戸での自分を、未来の自分が色づけてあげることができるんだと証明してくれたことに勇気をもらえました。ありがとう。